作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ジェーン・アーチボルドのオペラアリア集

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8月最初のアルバムは最近HMV ONLINEから届いたもの。

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HMV ONLINEicon / amazon

ジェーン・アーチボルド(Jane Archibald)のソプラノ、トーマス・レスナー(Thomas Rösner)指揮のビエンヌ交響楽団の演奏で、ハイドンの5曲のオペラからアリアと序曲、あわせて13曲を収めたアルバム。収録は2010年9月、スイス西部、ベルンとバーゼルの間にあるゾロトゥルンという街のコンサートホールでのセッション録音。レーベルはおそらくはじめて手に入れる、ATMA Classiqueというカナダのレーベル。

なにより驚くのがそのジャケットの凄いインパクト。彫りの深いアーチボルドのアップ写真。怖いくらいに鋭い眼差し。天に届くような素晴らしいソプラノが聴かれるでしょうか(笑)

アーチボルドはカナダの東端、ノバスコシアのトゥルーローの出身。おそらくかなり寒い地方だと思います。カナダやタングルウッドで学び、ウィーン国立歌劇場に出演するまでになりました。これまでにウィーン、ベルリン、ジュネーヴ、チューリッヒ、エクス=アン=プロヴァンス、パリ、ミラノ、バーデン・バーデン、ロンドンなど各地のオペラで花形役をこなすなど華々しい経歴。昨シーズンはカナダのオペラに凱旋出演とのこと。ベルリンフィルではアーノンクールの指揮でハイドンのオルランド・パラディーノのアンジェリカを歌うなどの経験もあります。私ははじめて聴く人。いつものように本人のサイトのリンクを張っておきましょう。本人のサイトの写真も結構インパクトあります。

Jane Archibald, Soprano(英文など)

指揮者のトーマス・レスナーもはじめて聴く人。ウィーン生まれ、ウィーンで音楽を学び、チョン・ミュンフンやハンス・グラーフのマスタークラス等に参加。ファビオ・ルイージが急遽スイスロマンド管弦楽団のツアーに呼び寄せたことがレスナーの国際的なキャリアのスタートに。ロンドンフィル、ウィーン交響楽団、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、バンベルク交響楽団、ローザンヌ室内管などに加えて東京交響楽団も振ったことがあるようです。2000年から2004年まで国立ボルドー管弦楽団の副指揮者してハンス・グラーフを支える立場に。そして2005年からはこのアルバムのオケであるスイスのビエンヌ交響楽団の首席指揮者として活躍しています。レスナーのサイトも張っておきましょう。

thomasroesner.com(独・英文)

Hob.XXVIII:13 / "L'anima del filosofo, ossia Orfeo ed Euridice" 「オルフェオとエウリディーチェ,または哲学者の魂」 (1791)
ハイドン最後のオペラから、アリア「幸運なるおまえの胸に(第3幕)」、アリア「見捨てられたフィロメーナ(第1幕)、そして序曲の3曲。冒頭のアリアの伴奏のオケの響きはおそらく古楽器奏法の現代楽器でしょう。オケの音色は分厚く迫力あるものですが、ノンヴィブラート風のすっきりした音色。マンフレート・フスの指揮するハイドン・シンフォニエッタ・ウィーンと似た感じですが、鋭さはフス、音色の分厚さはこちらといった風情。1曲目はハイドンらしい古典の均衡を感じる曲調に、輝かしいソプラノの朗々としたアリア。アーチボルドの声は良くヴィブラートのかかった高音が良く伸びる声。ちょっと硬質な癖のある歌い方ですが、高音域の振り切れ感はなかなかのもの。オケの伴奏は力感溢れるダイナミックなもの。アーチボルドの歌も振り切れまくって盛り上がります。夜の女王のアリアばりの場面もあって挨拶代わりに素晴らしいテクニックを聴かせます。2曲目のアリアは穏やかな曲調から始まり、徐々に盛り上がるなかなかの曲。そして聴き慣れた序曲。短調の序奏からはじまり、推進力溢れるオーケストレイションにビックリ。それぞれ楽器のキレを感じる訳ではないんですが、アンサンブルとして聴くと生気溢れるノリノリの演奏。オペラの幕が開く前の興奮を伝えるような雰囲気がよく表現できています。痛快な序曲。

Hob.XXVIII:7 / "Il mondo della luna" 「月の世界」 (1777)
つづいて「月の世界」から、アリア「人には分別があります(第1幕)」、アリア「貴方は私の星だ(第2幕)」の2曲。良く聴くとアーチボルドの声の量感はほどほどで、中音域の響きはちょっと薄めの声。逆に高音域に入る時のキレと伸びはなかなかのもの。相変わらず伴奏のオケはノリがよく聴き応え十分。2曲目のアリアは奥から聴こえるホルンの響きが雰囲気たっぷり。

Hob.XXVIII:9 / "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779)
つづいて中期のオペラ「無人島」から序曲、レチタティーヴォ「私が見たものは(第1部)」、アリア「甘い錯乱のなかで(第1部)」の3曲。序曲はこちらも聴き慣れた曲。タイトな短調の序奏で雰囲気を引き締めたあと、静寂を聴かせ、劇的な主題に移りめまぐるしい音階をへて、非常に平穏なメロディーに移る展開。そして変奏で変化。この序曲のみでもハイドンの創意の素晴らしさに圧倒されます。決して垢抜けた感じではないんですが、そこには活き活きとした音楽が存在します。レスナーの地味ながら堅実なコントロール。続いてレチタティーヴォ。アリア集でレチタティーヴォは珍しいでしょう。次のアリアはハイドンならではの晴朗な魅力に溢れた曲。甘い錯乱になってみたいものです(笑)。アーチボルドはすこし抑えて入り、要所は振り切れる余裕を魅せます。

Hob.XXVIII:6 / "L'incontio improvviso" 「突然の出会い」 (before 1775)
ここまで聴いてくると、序曲もこのアルバムの聴き所。生気と迫力の結晶。当時流行ったとされるトルコ趣味の曲。この曲もめくるめくメロディーが変化。パーカッションも大活躍。力みなくほどよい小爆発の連鎖。不思議な音階、小技の連続。打楽器のキレでオペラ前の聴衆の脳髄を覚醒させるような展開。中間にアンダンテをはさんだような構成感のある序曲。最後に再びトルコ趣味爆発!

Hob.XXVIII:11 / "Orlando Paladino" 「騎士オルランド」 (before1782)
最後は「騎士オルランド」からカヴァティーな「絶えず震えているの,哀れな私の心は(第1幕)」、アリア「行かないで,私の美しきともし火(第1幕)」、レチタティーヴォ「執念深い神々よ!(第3幕)」、アリア「末期の彼の嘆きの言葉(第3幕)」の4曲。最初は切々と歌う劇的なメロディーの曲。アーチボルドの声に合った曲に聴こえます。つづいてアーチボルドの美声を堪能できる正統派のアリア。レチタティーヴォをはさんで、最後は最もハイドンらしいシンプルな伴奏と晴朗な歌のコントラストで聴かせる素晴らしい曲。この曲の伴奏はテンポを落とす場面の演出が巧みなかなの迫力。やはり最後は締まります。

ジェーン・アーチボルドというインパクト抜群のソプラノ歌手のハイドンのアリア集。歌の方はまだ上がいることから[++++]としました。逆にこのアルバムに収められた3曲の序曲は素晴らしい出来。こちらは[+++++]とします。アーチボルドはともかく指揮者とオケはヨーロッパではマイナーな方でしょう。ただこのアルバムで聴かれる伴奏のレベルは悪くありません。ジャケットでみるとアーチボルドのインパクト120%の造りですが、もうすこし指揮者とオケの存在を上げてあげてもいいのではと思ってしまうほど、オケの響きは楽しめるものでした。
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