ピエール・フルニエ/カール・ミュンヒンガーのチェロ協奏曲2番
8月もそろそろ終わり。今日の1枚はだいぶ昔に書きかけになっていた記事を修復(笑)

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ピエール・フルニエ(Pierre Fournier)のチェロ、カール・ミュンヒンガー(Karl Münchinger)指揮のシュツットガルト室内管弦楽団(Stuttgart Chamber Orchestra)の演奏でハイドンのチェロ協奏曲2番。他にラファエル・クーベリック指揮のウィーンフィルの演奏でドヴォルザークのチェロ協奏曲も収められています。ハイドンの収録は1963年9月、スイス、ジュネーヴのヴィクトリア・ホールでのセッション録音。レーベルはLONDONの国内盤で1995年に発売された「世紀の巨匠シリーズ」の1枚。
フルニエのチェロ協奏曲はこれまで3回取りあげています。
2010/10/11 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/クーベリックのチェロ協奏曲2番
2010/09/16 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/バウムガルトナーのチェロ協奏曲1番
2010/09/02 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/ヨッフムのチェロ協奏曲
フルニエ、3度記事にしているのにちゃんと略歴を紹介していませんでした。
1906年パリに生まれたフランスのチェリスト。気品ある容貌と優雅な演奏から「チェロの貴公子」と呼ばれる存在でした。パリ音楽院で学び1923年に首席で卒業しました。翌年にはパリでコンサートデビューし、ピアノのペルルミュテールとヴァイオリンのブイヨンとともにピアノ・トリオを組んで活躍しました。1937年、31歳という若さでエコール・ノルマル音楽院の教授に就任後、しばらくでパリ音楽院教授となり、戦後までその職位にありました。シゲティ、シュナーベルとのピアノ・トリオ、カザルス・トリオからカザルスが抜けた後ティヴォー、コルトーとのピアノ・トリオなどで室内楽で活躍しました。1956年からジュネーブに移住。彼の二人目の奥さんは日本人で、親日家でもあったとのこと。亡くなったのは1986年とのことです。
フルニエのチェロは独特の軽さと紳士的なマナーの良さがあり、鳴きを多用する浪花節調が多いチェロ奏者にあって独特の存在でしょう。このあっさりとしたタッチは、演奏のタイプは違うものの、実際は練った演奏ながらあっさりとした感触のヨー・ヨー・マの演奏と似たものを感じます。何となく気になる存在というところでしょう。
Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
それなりに古さを感じるオケの序奏の響き。ステレオ録音が普及している1963年の録音ながら、このアルバムの録音はモノラル。ミュンヒンガーのコントロールは几帳面というか律儀さを感じさせる演奏。なんとなくゴトゴトとした足音のような低域の雑音が少し混ざった録音。フルニエのチェロはフルニエらしいあっさりとしたタッチの自然体の演奏。中庸なバランスが聴き所と言わんばかりの演奏。音階の音程がすこしズレながら弾くあたりもフルニエの味わいの一つでしょう。酔拳を使う老人の癖のある動きにも独特の勝負勘があるような感じ。ちょっとリズムが重いのが気になりますが、律儀なオケに乗って自在に弾く姿はなかなか。ミュンヒンガーの几帳面さと対極にある酔拳とのえも言われぬアンサンブル。フルニエのチェロはこの自在さを聴くべきなんでしょう。確かに誰にも真似の出来ない境地と言えるでしょう。2番の長大な1楽章をじっくり弾いていきます。カデンツァは酔拳の魅力炸裂! 妙に詩的な演奏。音楽の魅力は多様ですね。忘れた頃にミュンヒンガーが迎えにきます。
2楽章のアダージョはすこし正常化しておだやかなフルニエの入り。オケが入って穏やかさがさらに増しますが、フルニエのチェロがすすむにつれフルニエ節が炸裂し独特のフレージングが存在感満点。やはり個性という意味では突き抜けたものがあります。これは誰も真似ができないフルニエ独特の節回し。2楽章のカデンツァは力が抜けきった幽体離脱後の演奏のような不思議なもの。これもフルニエの器の大きさからでしょうか。
フィナーレは録音の古さが多少気になるものの、郷愁を感じるハイドンの美しいメロディーをフルニエ独特のフレージングで再構成したような非常に個性的な演奏です。なぜか幸福感が満ちてくる不思議な感覚。音程の不安定さも味わいとして聴かせてしまういい雰囲気。ギターと違ってフレットがないぶん音程は自由なものとの主張さえかんじさせる独特さ。なんとなくフルニエにやられた余韻が残りました。
ピエール・フルニエのチェロによるハイドンのチェロ協奏曲2番。同時代で聴いてきた訳ではありませんので、「チェロの貴公子」という印象はあまり感じず、今回のように酔拳使いのような印象のほうが強いのが正直なところ。このアルバムを含めてフルニエの独特の節回しは個性的なことは間違いなく、音楽の聴かせどころが如何に多様かを思い知る演奏ということになるでしょう。この感覚ははじめてクナの演奏の面白さに気づいたときの感覚に近いかもしれません。評価は[++++]とします。スタイリッシュな演奏をよしとする方からは甘すぎる評価と言われるかもしれませんが、テクニックやスタイリッシュさ、情感ばかりが音楽ではありません。酔拳の達人もありだと思います(笑)

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ピエール・フルニエ(Pierre Fournier)のチェロ、カール・ミュンヒンガー(Karl Münchinger)指揮のシュツットガルト室内管弦楽団(Stuttgart Chamber Orchestra)の演奏でハイドンのチェロ協奏曲2番。他にラファエル・クーベリック指揮のウィーンフィルの演奏でドヴォルザークのチェロ協奏曲も収められています。ハイドンの収録は1963年9月、スイス、ジュネーヴのヴィクトリア・ホールでのセッション録音。レーベルはLONDONの国内盤で1995年に発売された「世紀の巨匠シリーズ」の1枚。
フルニエのチェロ協奏曲はこれまで3回取りあげています。
2010/10/11 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/クーベリックのチェロ協奏曲2番
2010/09/16 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/バウムガルトナーのチェロ協奏曲1番
2010/09/02 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/ヨッフムのチェロ協奏曲
フルニエ、3度記事にしているのにちゃんと略歴を紹介していませんでした。
1906年パリに生まれたフランスのチェリスト。気品ある容貌と優雅な演奏から「チェロの貴公子」と呼ばれる存在でした。パリ音楽院で学び1923年に首席で卒業しました。翌年にはパリでコンサートデビューし、ピアノのペルルミュテールとヴァイオリンのブイヨンとともにピアノ・トリオを組んで活躍しました。1937年、31歳という若さでエコール・ノルマル音楽院の教授に就任後、しばらくでパリ音楽院教授となり、戦後までその職位にありました。シゲティ、シュナーベルとのピアノ・トリオ、カザルス・トリオからカザルスが抜けた後ティヴォー、コルトーとのピアノ・トリオなどで室内楽で活躍しました。1956年からジュネーブに移住。彼の二人目の奥さんは日本人で、親日家でもあったとのこと。亡くなったのは1986年とのことです。
フルニエのチェロは独特の軽さと紳士的なマナーの良さがあり、鳴きを多用する浪花節調が多いチェロ奏者にあって独特の存在でしょう。このあっさりとしたタッチは、演奏のタイプは違うものの、実際は練った演奏ながらあっさりとした感触のヨー・ヨー・マの演奏と似たものを感じます。何となく気になる存在というところでしょう。
Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
それなりに古さを感じるオケの序奏の響き。ステレオ録音が普及している1963年の録音ながら、このアルバムの録音はモノラル。ミュンヒンガーのコントロールは几帳面というか律儀さを感じさせる演奏。なんとなくゴトゴトとした足音のような低域の雑音が少し混ざった録音。フルニエのチェロはフルニエらしいあっさりとしたタッチの自然体の演奏。中庸なバランスが聴き所と言わんばかりの演奏。音階の音程がすこしズレながら弾くあたりもフルニエの味わいの一つでしょう。酔拳を使う老人の癖のある動きにも独特の勝負勘があるような感じ。ちょっとリズムが重いのが気になりますが、律儀なオケに乗って自在に弾く姿はなかなか。ミュンヒンガーの几帳面さと対極にある酔拳とのえも言われぬアンサンブル。フルニエのチェロはこの自在さを聴くべきなんでしょう。確かに誰にも真似の出来ない境地と言えるでしょう。2番の長大な1楽章をじっくり弾いていきます。カデンツァは酔拳の魅力炸裂! 妙に詩的な演奏。音楽の魅力は多様ですね。忘れた頃にミュンヒンガーが迎えにきます。
2楽章のアダージョはすこし正常化しておだやかなフルニエの入り。オケが入って穏やかさがさらに増しますが、フルニエのチェロがすすむにつれフルニエ節が炸裂し独特のフレージングが存在感満点。やはり個性という意味では突き抜けたものがあります。これは誰も真似ができないフルニエ独特の節回し。2楽章のカデンツァは力が抜けきった幽体離脱後の演奏のような不思議なもの。これもフルニエの器の大きさからでしょうか。
フィナーレは録音の古さが多少気になるものの、郷愁を感じるハイドンの美しいメロディーをフルニエ独特のフレージングで再構成したような非常に個性的な演奏です。なぜか幸福感が満ちてくる不思議な感覚。音程の不安定さも味わいとして聴かせてしまういい雰囲気。ギターと違ってフレットがないぶん音程は自由なものとの主張さえかんじさせる独特さ。なんとなくフルニエにやられた余韻が残りました。
ピエール・フルニエのチェロによるハイドンのチェロ協奏曲2番。同時代で聴いてきた訳ではありませんので、「チェロの貴公子」という印象はあまり感じず、今回のように酔拳使いのような印象のほうが強いのが正直なところ。このアルバムを含めてフルニエの独特の節回しは個性的なことは間違いなく、音楽の聴かせどころが如何に多様かを思い知る演奏ということになるでしょう。この感覚ははじめてクナの演奏の面白さに気づいたときの感覚に近いかもしれません。評価は[++++]とします。スタイリッシュな演奏をよしとする方からは甘すぎる評価と言われるかもしれませんが、テクニックやスタイリッシュさ、情感ばかりが音楽ではありません。酔拳の達人もありだと思います(笑)
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