作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アルベルト・ボローニ/ジュゼッペ・モドゥーニョのヴァイオリンソナタ

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2日ほど仕事が多忙で更新をお休みしてしまいました。今日は珍しい曲を。

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アルベルト・ボロー二(Alberto Bologni)のヴァイオリン、ジュゼッペ・ファウスト・モドゥーニョ(Giuseppe Fausto Modugno)のフォルテピアノの演奏で、ハイドンのヴァイオリンソナタ5曲を集めたもの。ハイドンにはヴァイオリンソナタとして作曲されたものはほとんどないのですが、ピアノ三重奏曲の中にはヴァイオリンとフォルテピアノのために当初書かれたものを編曲したものが残っているということが知られています。それ以外にもハイドンの作曲によるヴァイオリンソナタがあるのではということでまとめられたアルバム。収録は2009年1月12日、13日にイタリアのボローニャ南部のF1サーキットが有名なイモラのモンシニャーニ・ササテッリ宮殿でのセッション録音。レーベルはマーキュリーが輸入するCONCERTOというイタリアのレーベル。いつも通り気が利いたキャッチコピーの帯と丁寧な日本語解説がついたもの。今回も帯の名コピーを紹介しておきましょう。

『誰も知らなかったハイドンの新境地?! その「極上の実体」は、本盤を聴いてのお楽しみ』

このアルバム、古楽器による演奏なんですが、独特の味わい深い音色。特にモドゥーニョの弾くフォルテピアノの音はかなり変わってます。楽器はJohann Schantzという人の作で1815年のものとの記載。ついでにヴァイオリンはSanto Serafinoという1734年のもの。こちらも高音の伸びが素晴らしい音色です。

ヴァイオリンのボローニはフィレンツェ、ロッテルダムで学び、ヨーロッパの様々なコンクールで入賞し、その後は室内楽アンサンブルなどで活躍。日本の蓼科音楽際にも来ているそうなのでご存知の方もいるでしょうか。現在はアメリカの大学や、イタリア、ピサ近郊のルッカのボッケリーニ高等音楽院で教鞭をとっている人。

フォルテピアノのモドゥーニョはボローニャのマルティーニ音楽院を卒業後、ボローニャ大学で文学を学び、作曲や指揮もするそう。イェルク・デムスやニキタ・マガロフなどに師事したとのこと。欧米や日本でもコンサートを重ねているほか。カリフォルニア大学や、昭和音楽大学でも講義を持っているそう。昭和音楽大学は調べたら新百合ケ丘の駅前なのですぐ近くです。2004年から2007年まではアバドが振っていたモーツァルト・オーケストラの実務秘書を務めるなど、いろんなことをしていますね。

二人とも教鞭をとる身故か演奏はキリッと引き締まったいい演奏。

Hob.XVa:1 / Sonata [B flat] (????)
最初の3曲はハイドン作か疑わしいと指摘するサイトもあります。まずはモドゥーニョの味わい深いフォルテピアノの音色と古楽器の雅な音色でキリッと伸び伸び弾くボロー二のヴァイオリンの音色の美しさに耳がいきます。1楽章の曲想はハイドンの作にしては少々単調に感じるのが正直なところ。研究者ではありませんので真偽のほどを判定する能力は持ち合わせていませんが、伴奏とメロディーがハッキリわかれ、それぞれの変化と絡み合いの妙のようなものが感じられないのが正直なところ。2楽章のアダージョ・カンタービレもメロディーラインはシンプルなものの、中間部の盛り上がりはなかなかの迫力。フィナーレは明るいあっけらかんとしたなかにほのかな影がある曲想。なかなか味わいのある曲ですが、ハイドンの曲想とは少し異なるような気もします。

Hob.XVa:2 / Sonata [D (????)
この曲は前曲とは異なり、かなり充実した曲想。単にメロディーと伴奏という枠を越えて、楽器間の掛け合いと感興が感じられる名曲。ヴァイオリンが空間に響き渡る快感とフォルテピアノが刻むリズムの妙。1楽章は充実感が残ります。2楽章のポコ・アダージョは落ち着いたフォルテピアノのリズムにのってヴァイオリンが遊ぶような曲想が時間に溶け込むような自然さ。フィナーレはフォルテピアノがリードして曲を盛り上げます。この曲はハイドン作のような気がします。

Hob.XVa:3 / Sonata [C] (????)
曲の真贋判定のような雰囲気になってきましたが、3曲目はまた少し形式的な感じを強く感じる曲想。ヴァイオリンとフォルテピアノの掛け合いのスリリングさを強く感じる曲ですが、かなりわかりやすいメロディーラインをテーマにした曲。行進曲というか独特のメロディーが耳に残る曲。きっとライヴ受けする曲だと思います。2楽章のポコ・アダージョも決まった旋律をキーにした曲で、フィナーレも演奏は規律を保ったものの華美な印象の曲。ここまで聴いた感じだと2曲目が最も充実した曲想。

Hob.XV:31 / Piano Trio (Nr.41/op.101) [E flat] (1795)
ここからはハイドンのピアノ3重奏曲として知られた曲ですが、オリジナルがヴァイオリンとピアノのために書かれた曲ということです。短調の陰鬱なメロディーからはじまり徐々に明るさを帯びてくるところは流石の展開。この曲は2楽章構成。知っている曲だからかどうか、ハイドンの深みに溢れた曲に聴こえるところが不思議なところ。明らかに沈みこみが深く、表現の幅はだいぶ起伏が激しくなっています。曲もそうですが演奏も古楽器の演奏としては素晴らしいものです。ケチをつけるような部分は皆無。この曲の理想的な演奏と聴きました。

Hob.XV:32 / Piano Trio (Nr.31) [G] (before 1794)
やはり後半2曲の充実度は桁違い。ただ弾くだけでハイドンの音楽が溢れ出て来る感じが素晴らしい演奏。もはや言葉で説明する必要がないほどの充実感ですね。聴き慣れた曲の充実の演奏。フォルテピアノの几帳面な伴奏にのってヴァイオリンが自由に駆け回る様子は安心して聴ける素晴らしいもの。
2楽章のアレグロも落ち着いた演奏の中に古楽器の音色の閃きと、天才的なフレージングが同居。やはり前3曲とは深さが異なるのが正直なところ。特に後半2曲の充実ぶりは明らか。結果的にハイドンの作品の閃きを浮かび上がらせることになってしまいました。

丁寧な造りとコンセプチュアルなアプローチはマーキュリーが輸入するアルバムに共通したもの。このアルバム自体は珍しい曲も収めているのですが、やはり前半3曲の完成度を考慮すると、前半の曲は[++++]、そして後半の2曲は[+++++]としました。

ハイドンのヴァイオリンソナタに焦点を当てた好企画のアルバムですが、結果的にハイドン作と確定した曲の素晴らしさにスポットライトを当てることになった形。ハイドンは天才ということでしょう(笑)
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