作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ドミニク・ドゥ・ヴィリアンクールのチェロ協奏曲集

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しばらくCD-Rが続いたので今日はチェロ協奏曲。

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ただし、かなり珍しいアルバム。ドミニク・ドゥ・ヴィリアンクール(Dominique de Williencourt)のチェロ、ドナタス・カトクス(Donatas Katkus)指揮のヴィリニュス・サン=クリストフ室内管弦楽団(Christopher Chamber Orchestra of Vilnius)の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、2番の2曲を収めたアルバム。収録は2004年8月25日~27日、ポーランドの北西のバルト海沿いの国、リトアニアの首都ヴィリニュスにあるヴィリニュスフィルハーモニーで。チェリスト、指揮者、オケの名前が絶対に覚えられないような名前なのでどこの国の人か気になってましたが、調べてようやくリトアニアと判明。レーベルはEA RECORDSというレーベル。サイトはフランス語のようですが、なんだかよくわかりません。ビックリするのは明らかに輸入盤なんですが日本語の解説が印刷されていること。取りあえずサイトへのリンクを張っておきましょう。

Europ&Art : Le Site

このアルバムを取りあげたのは、リトアニアという単に珍しい国の演奏というだけでなく、非常に興味深い演奏だったからです。最近CD-Rとはいえウィーンフィルと名指揮者の演奏を続けて取りあげたので、マイナー盤マニアの方の支持も取り付けておかないと(笑)

チェロのドミニク・ドゥ・ヴィリアンクールは1959年、フランス北部のリールの生まれのフランス人チェリストで、作曲家でもあるそう。ジノ・フランチェスカッティ、アンドレ・ナヴァラ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチなどに師事し、国際舞台で活躍するように。一方サハラや中央アジア、インドなどを旅して、トゥアレグ、アルメニア、チベットなどをテーマにした作曲を行うなど、ただの演奏家とはひと味違う経歴の持ち主。フランス人ですが、リトアニアのオケと録音を行うのもこうした趣向の延長でしょうか。ヴィリアンクールのサイトもありましたのでリンクを張っておきましょう。

williencourt.com(仏文・英文・日本語など)

ヴィリニュス・サン=クリストフ室内管弦楽団は指揮者のカトクスが1994年に設立したオーケストラ。リトアニアやロシアで学んだ若者が中心のオーケストラとのこと。カトクスは地元ヴィリニュスでヴィオラと指揮を学び、モスクワのチャイコフスキー高等音楽院で室内楽を学んだ人。ヴィリニュス弦楽四重奏団を設立しメロディアから多くのアルバムがリリースされているとのこと。最近ではドイツやフィンランド、スペインで教鞭をとっているとのこと。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
非常に変わった入り。フレーズがかなり弾み、躍動感に満ちた序奏。ただオケの音色、技術は確かなもので安心感があります。ヴィリアンクールのチェロはフランス人らしく華麗な演奏。豊かな音色、軽々とした弓運び、華麗なフレージングとなかなか聴き応えがあります。特に高音域を伸び伸びと弾いていく音色は痛快。オケもチェロもキレがよく、非常に軽やか。オーストリアの片田舎の作曲家の作というよりは印象ととしてはフランスの貴族風に聴こえます。ハ長調の晴朗な曲想に合った演奏ですね。曲が進んでくると若干軽めのリズムが単調に感じるようになるのが少々難点でしょうか。カデンツァはヴィリアンクールのオリジナルで今まで聴いたことのないようなチェロの胴鳴りをフルに使った意欲的なもの。チェロの演奏技術は非常に高いものがありますが、そう聴こえない軽い感じが特徴でしょう。
アダージョは一転、しっとりとした落ち着いた演奏になります。1楽章から一貫して豊かな音楽。チェロの華麗で雄弁な演奏によるものでしょう。このアダージョは高音の鳴きの美しさが絶品。音量を抑えて素晴らしい緊張感を演出。方向としてはかなりロマンティックな演奏ですが、このチェロの感情に溺れない美しい鳴きは魅力的ですね。
フィナーレは再び軽さを生かした演奏。かなりのスピードで飛ばしますが、完璧にこなし遅れもなく素晴らしい恍惚感。テクニックが嫌みでなく時折入る美しい高音のアクセントが印象的。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
前曲の素晴らしい興奮の余韻が残るなか、典雅な旋律の序奏から入ります。2番もオケはすこし弾んだようなコントロール。逆にチェロはすこし刻んだような表現になり、1番とは演奏スタンスが少し異なります。曲想が成熟したことに伴うものでしょうか、華麗な響きで押すことにともなう単調さは感じられず、うまく収まってます。曲がすすむにつれて鳴きも現れ、こちらは軽快な流れのなかにも落ち着きと音色による華麗さがほんのり感じられる非常にいいバランスの演奏。1番で感じたちょっとした座りの悪さもなく、こちらは文句なしのいい演奏。カデンツァは今度は定番ジァンドロンのものですが、じっくり語りかけるような深い呼吸の演奏。これは見事。
アダージョは1番よりも変化を抑え淡々とした印象。淡々とした語り口、チェロの美音、オケのキレともに素晴らしい出来。そしてフィナーレの郷愁に満ちたメロディーにつながり、落ち着いた曲想を進めて曲を閉じます。フィナーレは特にチェロの美しい音色が図抜けた素晴らしさ。いや、これは名演と言っていいでしょう。

フランス人チェリストとリトアニアの指揮者、オケによる非常に珍しいアルバムでしたが、ローカルな演奏とはいえないなかなか充実した演奏。色彩感豊かないい演奏でした。評価は1番が[++++]、2番が[+++++]としました。1番の方は1楽章がちょっと単調に感じた部分がマイナス要因でしょうか。マイナー盤とはいえこれだけ充実した演奏を聴かされると、やはり無視はできません。今後もマイナー盤開拓は必須ですね。
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2 Comments

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wak_vin

おはようございます。

サイトのレーベル説明を読んでみましたが、チェリストのヴィリアンクールさんがdirectionしている若いレーベルで、バッハから現代曲まで色々やってます的な内容のようです。確かにあまり詳しい情報はないですね。

トップに「砂漠のバッハ」なるCDかDVDの紹介がありましたが、楽器は大丈夫だったのかと、余計な心配をしてしまいました。

  • 2011/07/14 (Thu) 09:19
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Daisy

Re: タイトルなし

wak_vinさん、コメントありがとうございます。
フランス語を読まれたのでしょうか、貴重な情報ありがとうございます。EA RECORDSのサイトですが、この手のサイトは通例英語の解説がちょっとあってだいたい解るようになっているんですが、ほぼフランス語なので読むのあきらめてました。このような小さなレーベルなのにライナーノーツに日本語を入れるとは、、、やる気満点ですね。今日は仕事が遅かったのでブログの方は更新できません。
今後ともよろしくお願いします。(twitterの方でも)

  • 2011/07/14 (Thu) 23:58
  • REPLY