作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番

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先日HMV ONLINEから届いたアルバムの一枚。

Fey53.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

トーマス・ファイ指揮のハイデルベルク交響楽団のハイドンの交響曲全集の第15巻。まだまだ膨大な交響曲の前半ですが、15巻まできたということで、取りあげました。交響曲53番「帝国」と交響曲54番の2曲を収めたアルバム。末尾に「帝国」の終楽章の別バージョンの演奏も収録しています。収録は2010年1月18日から21日まで、ハイデルベルク・ドッセンハイムのマルティン・ルター・ハウスでの収録。

ファイの交響曲集はこれまでに2度取りあげています。

2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

ファイのハイドンはまさに最新型の演奏。何かしてやろうという息吹に溢れているものの、ハイドンの交響曲の本質的な魅力を発揮したと言える演奏にまでなっているものは多くはないのが正直なところ。このあたりがファイの演奏の評価を分けるポイントになっているのではないでしょうか。かくゆう私も面白そうなので毎回買ってしまうんですが、ブログに取りあげようかどうしようかと逡巡する演奏が多いんですね。

ハイドンの交響曲全集はご存知のとおりドラティ、アダム・フィッシャー、突然現れたデニス・ラッセル・デイヴィスの3種に何人かの指揮者で構成したNAXOSのものが知られていますが、ホグウッドをはじめとして途中で頓挫してしまったものも多いので、このファイの全集はぜひとも完成してほしいと願っています。というわけで、やはり最新のこのアルバムは取りあげないわけには参りません。

Hob.I:53 / Symphony No.53 "L'Imperiale" 「帝国」 [D] (1778/9?)
モダン楽器のピリオドアプローチの演奏。キレの良い響きのオケ。旋律を分解して再構成するような手法で脳内のハイドンのメロディーを完全にリセット。千変万化するフレージング。いつものファイ節炸裂の1楽章の入り。まさに前衛を地でいくアプローチ。シュトルム・ウント・ドラング期の憂いあるメロディは影を潜め、少し後の時期の交響曲に特徴的な構成感を強調するような演奏。曲の構造に演奏スタイルがマッチして快感すら感じるハマり具合。ようやく聴き手がファイのスタイルを許容できる器になってきたということでしょう(笑) ただ、録音がデッド気味なので刺激成分が脳髄直撃。もうすこしゆったりした残響の録音であればより素直に楽しめる演奏だと想像しています。
つづく2楽章のアンダンテは、表情をかなり抑えて入ります。途中さらに抑えて、抑制をテーマにしたような弾きぶり。変奏の変化の面白さを強弱ではなく抑えたメロディーラインのみで聴かせるというアプローチ。アイデアとしては非常に面白いものです。一貫してさりげない表情で終了。
メヌエットは一転して、抑えながらもリズムのキレを強調。この表情の変化は見事。音符からリズムのみくっきり浮かび上がらせるような手法。抑えをきかせているのが非常に効果的。最後はティンパニが活躍して祝祭的なフレーズ。
フィナーレのヴァージョンAはカプリッチョ・モデラート。爆発ではなく聴かせるフィナーレ。抑えた表情が不気味な迫力すら感じさせて、いつ牙を剥くかハラハラさせるような手に汗握る演奏。最後は程よく爆発して終了。これはなかなかの名演。
末尾置かれたのフィナーレのヴァージョンBはプレスト。独立した序曲としても演奏される曲(Hob.Ia:7)。颯爽とした吹き上がり感満点の曲。曲単独の迫力と面白さはこちらの方があるようですが、交響曲全体の演奏の変化の面白さはヴァージョンAのほうですね。期待通りの盛り上がりが痛快。

Hob.I:54 / Symphony No.54 [G] (1st version) (1774)
この曲も抑えをきかせて、メリハリを際立たせます。かなり自在なフレージングで変化に富んだ演奏。メロディーに重なるホルンのオーセンティックな音色に痺れます。この曲もファイのマジックにやられてます。曲の変化の面白いことといったらありません。ファイの方もこれまでの創意が空回りするようなところがなく、曲を完全に掌握しての演出となっているのが、演奏の説得力を増しているんでしょう。1楽章のファイ独特のデフォルメされた立体感は非常に面白い。
つづくアダージョ・アッサイは前曲同様抑えを効かせた表現。時折響きを強調してファイ流なテイストに。そしてメヌエットはフィナーレ前のオケのアタックの練習のように自由な演奏。途中に癒しのようなゆったりしたアレグレットをはさんで構成感を強調。
フィナーレはレガートを多用したこれも個性的な演奏。演奏スタイルがめくるめく変わるのがファイの演奏の面白さ。これもハイドンの機知の表現の一つの方法でしょう。意外と堂々とした構築感があり曲の締めにふさわしい演奏。

このブログで取りあげる3枚目のファイのアルバムですが、はじめて両曲とも[+++++]。純粋に面白いと感じられた演奏。こうゆう演奏もハイドンの交響曲の面白さを伝えるいい演奏だということで、「ハイドン入門者向け」タグも進呈。まだまだリリースは続きますので、追っかけたいと思います。
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