クイケン/ラ・プティット・バンド1982年の天地創造ライヴ

今日は先週末、ブランデンブルク協奏曲を聴きにいってとてもいい印象を得たクイケンのアルバム。

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シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)指揮のラ・プティット・バンド(La Petitte Bande)、コレギウム・ヴォカーレ(Collegium Vocale)の合唱によるハイドンのオラトリオ「天地創造」。収録は1982年10月7日、ベルギー東部の街、リエージュにあるリエージュ王立音楽院でのライヴ。今から29年前の演奏。ソロはソプラノがクリスティーナ・ラキ(Krisztina Laki)、テノールがネイル・マッキー(Neil Mackie)、バスがフィリップ・ハッテンロッハー(Philippe Huttenlocher)、そして合唱指揮にはフィリップ・ヘレヴェッへ(Philippe Herreweghe)の名が。レーベルはベルギーのACCENT(アクサン)。私がACCENTのアルバムを知ったのは、以前触れた代々木にあったジュピターレコードのご主人から教わって。思い入れのあるレーベルです。幸い古い演奏にもかかわらず現役盤のようです。

今はバッハの曲などでパートあたり一人などと極限まで絞った編成での演奏や、チェロの代わりにスパッラを用いるなど響きの軽さと透明感に対するこだわりのある演奏をしているクイケン。この約30年も前のアルバムでは、古楽器として標準的な編成でしょう。ライナーノーツのメンバー表を見ると、ヴァイオリンが15人、ヴィオラが5人
、チェロが4人、ベースが2人、トロンボーンが3人、コントラバスーンが1人の他は木管、金管は2人づつという構成です。

クイケンの指揮の特徴はさりげない、さらっとした演奏の中から滲み出る深い音楽性。淡々とすすめながらも徐々に音楽に巻き込まれていく感じが素晴らしいところです。先週のコンサートでも、クイケンのさりげないコントロールのマジックに引っかかりました。なんとなくクイケンを生で聴いて、芸術性の背景がつかめたような気がしたので、家に帰ってまず取り出したのがこのアルバム。手に入れたのは少し前。聴いたときは何となく迫力不足に聴こえたんですが、クイケンの真髄を聴けていなかったかもしれません(笑)

久しぶりに、このアルバムをCDプレイヤーにかけ、耳を峙てます。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭から、ちょっと聴くと大編成のオケと比べれば迫力不足には違いないのですが、良く聴くと非常に俊敏な各パート。現在のクイケンの演奏からすると、コントロールに若さがあり、十分ダイナミックで鋭さもあります。録音は若干音が固いと感じるところがなくはないんですが、十分にいい音。自然さを保ちながらもデュナーミクの幅が広く、また呼吸も深くフレーズをじっくり弾いていきます。驚くのはコーラスの透明感。さすがヘレヴェッへのコントロールと言うべきでしょう。
第2曲のウリエルのアリアは透明なマッキーの声が古楽器の演奏にドンピシャ。テンポ感も良くオケの推進力も手伝って快活な音楽に。
第4曲で登場するガブリエルのラキも古楽器に非常にマッチする透明かつ可憐な響きの声。ここでもコーラスが非常にキレのいいサポートで、オケ以上の存在感。
第6曲はラファエルのアリア。バスのハッテンロッハーは非常に柔らかい声。ちょっと声量不足にも聴こえますが、声の柔らかい響きは悪くありません。この辺にくるとオケが十分に暖まって、音楽がしっとりと落ち着いてきます。
第1部の聴き所、第8曲のガブリエルのアリア。ゆったりと進む伴奏に乗って非常に美しい声の余韻。十分にリラックスして伴奏に身を任せて歌うラキ。高音の自然な伸びは素晴らしい美しさ。
第10曲から13曲にかけての第一部締めくくりは、ことさら音響的な迫力ではなく、ゆったりと進める音楽的は迫力できかせる素晴らしい音楽性。余裕に溢れたコントロールでじんわり盛り上がる展開。流石クイケンというところでしょう。第12曲の輝かしい音楽では金管を朗々とならし、間をじっくりとって音楽を進めます。そして第13曲はクイケンにしては十分な起伏とメリハリ。メロディーに宿る光と影。単調におちいることなく、じっくりと歩みをすすめ、音響の迫力にたよらない素晴らしい精神的盛り上がり。最後に至って突然のギアチェンジでスピードアップ。ビックリしましたが、素晴らしい興奮。勢い余ってお客さんも拍手。

第二部は、じっくり、くっきりした入り。非常にテンポを落として、直前の興奮をなだめるような入り。通例CDの一枚目の後半に収録される第二部の前半部分。素晴らしい音楽を聴きながら徐々に盛り上がり、クライマックスで終わる天地創造の聴き所の一つ。ガブリエルのアリア、美しい3重唱、そして3重唱とコーラスと続きます。クイケンらしさが一番出た部分。さりげない演奏なんですが、じわりと味わい深く、音楽が湧き出てくるような一連の曲。最後のコーラスの迫力はなかなかのもの。
CDを変えてラファエルのレチタティーヴォから。抑えに抑えたテンポで静寂に消え入るような終わり。続く誉れ高いメロディーが噴出するラファエルのアリアのはじまりとの対比の効果を十分に狙った演出。ここでも音量ではなく曲想のメリハリでここまで聴かせる音楽性の深さに圧倒されます。レチタティーヴォをはさんで、またも誉れ高いウリエルのアリア。名曲の渦に次から次へと巻き込まれるような快感。レチタティーヴォをはさんで、コーラスと3重唱、コーラスとつづく第二部のクライマックス。曲ごとに非常に冷静にフレーズをゆったり刻み、まさに、クイケンのコントロールに完全に支配されている時間。素晴らしい濃密な時間。3重唱は圧巻の集中力。最後はハレルヤの寄せては返す波のようなコーラス。これほどまでに曲想をくっきりと落ち着きながら、しかも素晴らしい盛り上がりまで持っていくコントロール力は流石です。ここでも拍手喝采。

そして第三部。ウリエルのレチタティーヴォの入りから張りつめた緊張感。意外に大きなつくりの演出。カッチリメリハリをつけた入り。微風のようなウリエルの優しい語りかけるような入り。途中のホルンのメロディーの美しいこと。第三部は入魂の出来ですね。
有名なアダムとエヴァのデュエットは他の演奏では単調な入りが多いものですが、かなり表情を丹念につけた伴奏が非常に効果的。伴奏と歌の絡み方は最高。コーラスが絡み音楽的興奮は最高潮に。この曲の盛り上がりは凄まじい迫力。このアルバムの印象を決定的に心に刻み込む素晴らしい演奏。
レチタティーヴォをはさんで、ふたたびアダムとエヴァのデュエット。こんどは憂いを含んだ美しい歌の響宴。このデュエットもさりげなく表情豊かな伴奏に支えられてこの世のものとは思えない美しさ。伴奏によっていかに歌が生きるかを思い知らされる瞬間。そして最後のレチタティーヴォをはさんで、終曲。渾身の力でティンパニと金管が空間を震わします。神々しい光のなか音が天上に昇っていく姿をながめるような終曲。最後は再び渾身のアタックで終了。最後も盛大な拍手に包まれます。

いやいや、だれがどう聴いたら迫力不足なんでしょう。クイケンのコントロールには徐々に灯がともり、後半にいくに従って表現の幅と音楽が深くなります。第三部の最初のデュエットの出来は感動的。ハイドンの音楽が満ちあふれてくる至福の瞬間。音は時代なりにちょっと古いんですが、このライヴは後世に残すべき素晴らしい演奏であることは間違いありませんね。そしてヘレヴェッへが担当するコーラスの美しさも聴き所。評価は以前より上げて[+++++]としました。生のクイケンを聴いて、久しぶりに取り出してみたこのアルバム。聴き手の器をためすような、奥行きの深い名演でした。ちなみに、この演奏、「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。すべての人に聴いていただきたい素晴らしい演奏です。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 天地創造 ライヴ録音 古楽器 ハイドン入門者向け ジュピターレコード

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No title

Daisyさん、こんばんは。クイケンの天地創造はかつて購入して聴いていたもので、ベスト4くらいにカウントできる程好印象なので、再度聴きたいと思っていました。でもライブだったのは忘れていました。四季も魅力的でした。発売当時結構高かったので天地創造だけ買っていました。

Re: No title

ライムンドさん、いつもコメントありがとうございます。
生を聴くと、印象が変わるものですね。クイケンの交響曲はちょっとさりげなさ過ぎると感じるほどの演奏ですが、この天地創造は録音年代の関係からか、クイケンにしては踏み込んだ演奏でした。ライムンドさんのブログを読んで最近のバッハの演奏が聴きたくなりロ短調ミサを昨夜注文しました。マタイはまだちょっと苦手です。音楽が苦手なのではなく、あと10年くらいしたらしっくり来るのではと思ってます。そう、聴き手の器の問題です(笑)
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Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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