作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ベルナルダ・フィンクの「ナクソスのアリアンナ」など

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先週末、銀座山野楽器で見つけたアルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon

ソプラノがリサ・ミルン(Lisa Milne)、メゾソプラノがベルナルダ・フィンク(Bernarda FInk)、テノールがジョン・マーク・エインズリー(John Mark Ainsley)、ピアノ伴奏がロジャー・ヴィニョールズ(Roger Vignoles)によるハイドンの歌曲を集めたアルバム。録音は1999年11月2日、2001年5月7日の2回にわたるもの。ライヴではありません。レーベルはHyperionの廉価盤シリーズhelios。

収録されているのは「ナクソスのアリアンナ」とドイツ語歌曲2曲、英語の歌曲14曲。3人が交互に歌ってます。

ナクソスのアリアンナをはじめとして、最も美しい歌唱を聴かせるのがメゾソプラノのベルナルダ・フィンク。スロヴェニア人の夫婦の子としてアルゼンチンのブエノス・アイレスに生まれた人。地元のコンクールで優勝したのちヨーロッパに移り、各地のオケや歌劇場で活躍している人。
伴奏で見事なピアノを聴かせているロジャー・ヴィニョールズはイギリスのピアニスト。フィッシャー・ディースカウの伴奏で知られるジェラルド・ムーアに触発されて、大学を辞め、伴奏者の道に入った人。

収録曲の詳細はレビューとともに。

Hob.XXVIb:2 / Cantata "Arianna a Naxos" 「ナクソスのアリアンナ」 [E flat] (c.1789)(メゾソプラノ)
ゾクゾクするような間を生かしたピアノの伴奏。流石に伴奏を志した人。伴奏だけで昇天しそうな素晴らしい入り。メゾソプラノのフィンクは伸びのある美しい声。ピアノの美しい伴奏に乗って伸び伸びと歌います。歌だけみると美しい声ながら、この大曲の劇性を十分に表現するには、すこし几帳面な印象はありますが、ピアノの伴奏のの立体感に助けられて、構えの大きな曲を絶唱。この曲は本当にピアノが巧い。伴奏によって曲の真髄が詳らかにされた感じ。もちろんフィンクの歌も悪くありませんが、歌曲の伴奏一筋の人の生き様を聴くよう。こんな感じを抱いたのはイタリア人のブルーノ・カニーノ以来。

Hob.XXVIa:21 / 12 Lieder No.9 "Das Leben ist ein Traum" 「人生は夢だ」 [E flat] (1781)(メゾソプラノ)
Hob.XXVIa:18 / 12 Lieder No.6 "Auch die Sprödeste der Schönen" 「どんな取り澄ました美人でも」 [F] (1781)(メゾソプラノ)
2曲フィンクのメゾが続きます。ハイドン独特の晴朗な曲調の歌曲を落ち着き払ったヴィニョールズのピアノに乗って、フィンクが絶唱。

Hob.XXVIa:31 / 6 Original Canzonettas 2 No.1 "Sailor's Song" 「船乗りの歌」 [A] (1795)(テノール)
この曲以降、テノールとソプラノが交互に担当。録音の残響が豊かに変化。特にピアノの中音の残響が非常に豊かに変わります。テノールの録音のみ他の録音とは異なる響きですので、この録音だけが上記のどちらかの日に収録されたのだと想像してます。ジョン・マーク・エインズリーはキリッとしたキレのいい声。テンポよく、良く通る声でハイドンのメロディーをクッキリ浮かび上がらせます。

Hob.XXVIa:26 / 6 Original Canzonettas 1 No.2 "Recollection" 「回想」 [F] (1794)(ソプラノ)
ソプラノのリサ・ミルンは若干硬質感のある、こちらもキリッとした声が美しいソプラノ。コケティッシュな感じもあり、聴き映えのする声ですね。ここでもピアノのヴィニョールズの名伴奏が聴き所。十分にリラックスした曲調が素晴らしい感興を呼び寄せます。

Hob.XXVIa:32 / 6 Original Canzonettas 2 No.2 "The Wanderer" 「さすらい人」 [g] (1795)(テノール)
Hob.XXVIa:27 / 6 Original Canzonettas 1 No.3 "A Pastoral Song" 「牧歌」 [A] (1794)(ソプラノ)
Hob.XXVIa:35 / 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795) (テノール)
Hob.XXVIa:28 / 6 Original Canzonettas 1 No.4 "Despair" 「絶望」 [E] (1794)(ソプラノ)
Hob.XXVIa:33 / 6 Original Canzonettas 2 No.3 "Sympathy" 「共感」 [E] (1795)(テノール)
Hob.XXVIa:29 / 6 Original Canzonettas 1 No.5 "Pleasing Pain" 「愛の苦しみ」 [G] (1794)(ソプラノ)
Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)(テノール)
Hob.XXVIa:25 / 6 Original Canzonettas 1 No.1 "The Mermaid's Song" 「人魚の歌」 [C] (1794)(ソプラノ)
Hob.XXVIa:36 / 6 Original Canzonettas 2 No.6 "Content"(Transport of Pleasure) 「満ち足りた心」 [A] (1795)(テノール)
Hob.XXVIa:30 / 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)(ソプラノ)
ここまでの曲はテノールとソプラノが交互に熱唱。特に印象に残ったのはソプラノの「牧歌」、テノールの「彼女は消して愛を語らなかった」の2曲。いつもながら素晴らしい曲調。ハイドンの歌曲の代表作でしょう。

Hob.XXVIa:41 / "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795) (メゾソプラノ)
再び、ベルナルタ・フィンクのメゾに戻ります。この曲は絶唱が多い名曲。いろいろな演奏を聴くたびにこの曲のもつ魂にふれるような曲想に打ちのめされます。ハイドン作曲当時の時代から魂がワープしてきそうなリアリティ。沈み込むピアノの伴奏と歌。ピークのコントロールは流石です。フィンクの絶唱が深く心に残ります。

Hob.XXVIa:42 / "O tuneful Voice" 「おお美しい声よ」 [E flat] (c.1795)(ソプラノ)
最後はソプラノの名曲。ピアノ入りだけで昇天寸前。冷静に歩みを進めます。伴奏の間に誘われてソプラノのリサ・ミルンがやはり絶唱。ピアノの高音の特徴的な和音がキーとなって曲調を印象づけます。歌曲を聴く悦びに満ちあふれた曲といっていいでしょう。

はっきり言って、このアルバムの聴き所はヴィニョールズのしっとりしたピアノ。歌も十分巧いんですが、歌だけだと最高評価とはできません。評価は思い切って全曲[+++++]としました。歌曲のよいアルバムということ以上にヴィニョールズの至芸を聴くべきアルバム。

このアルバムは私が立ち寄るタワーやHMVで見たことがありませんでしたが、本当は音楽を愛好するすべての人に聞いていただきたいアルバムです。歌曲の入門盤としてもおすすめな一枚ですので、皆さん、是非聞いてみてください。
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