【新着】バレストラッチのバリトン三重奏曲集

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グイード・バレストラッチ(Guido Balestracci)のバリトン、アレッサンドロ・タンピエーリ(Alessandro Tampieri)のヴィオラ、ブリュノ・コクセ(Bruno Cocset)のチェロによるハイドンのバリトン三重奏曲7曲(Hob.XI:66、XI:13、XI:96、XI:70、XI:59、XI:42、XI:101)を収めたアルバム。収録は2010年10月、南フランスのシランのサンテーユ聖母教会でのセッション録音。最新の録音です。レーベルはマーキュリーが輸入するRICERCAR。
ハイドンが仕えたエステルハージ家のニコラウス候が愛好したバリトンと不思議な楽器のために書かれた100曲以上の三重奏曲。この世では不可能かと思われた全曲録音も、廉価盤の雄、Brilliant Classicsで成し遂げられてしまいました。バリトンという楽器の不思議な響きは今になっても魅力は尽きません。
演奏者を紹介しておきましょう。
バリトンを弾くグイード・バレストラッチは1971年イタリアのトリノ出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者。ヴィオラのアレッサンドロ・タンピエーリもイタリア出身。そしてチェロはフランスのブリュノ・コクセ。3人あわせてバリトントリオの演奏の練習を相当したと思わせるアルバム構成。充実の響きですね。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントイ長調(Hob.XI:66)1767-68年作曲
最初の曲から何という繊細かつ豊かな響き。鮮明に録られたバリトンの共鳴弦の不思議な音色。木質系の非常に美しい響き。残響は大目ではないんですが、わりと近くに定位するバリトンとヴィオラ、チェロ。中低音域楽器の厚めの音色の中にバリトンの弦の固い音がクッキリと浮かび上がり、暖かいメロディーと不思議な響きのアクセントの織りなすトランス状態のような不思議な音響。1楽章がアダージョ、2楽章がアレグロ・ディ・モルト、3楽章がメヌエット。これは素晴らしい演奏。いままで聴いた中で一番の充実感。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントニ長調(Hob.XI:13)1765-66年作曲
途中にギターのアルペジオのような部分が入る、バリトントリオの典型的な曲。しっかりとった休符がとても効果的。バリトンを愛好し、ハイドンの最高の理解者だったエステルハージ家のニコラウス候との演奏風景を想像してしまいますね。2楽章のアレグロ・ディ・モルトは凄いエネルギーで疾風のよう。そして3楽章のメヌエットは曲想はシンプルながらバリトン大活躍。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントロ短調(Hob.XI:96)1769-71年作曲
バリトンとヴィオラ、チェロによって奏でられる短調の影のある響き。年代をみるとシュトルム・ウント・ドラング期の絶頂期の作品。納得の充実感。1楽章のラルゴにつづいて2楽章はアレグロ。ヴィオラとバリトンがそろってメロディーラインを奏でていきますが、バリトンの音色が変化を持ち込み、非常に興味深い音響に。チェロの図太い低音が随所でアクセントになる工夫が。最後のメヌエットは回想シーンのような曲想。繰り返し現れる曲想が静かに終了。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントト長調(Hob.XI:70)1767-68年作曲
前曲とは打って変わって明るい入り。非常に快活なメロディーライン。この曲では各楽器が交互に畳み掛けるようなスリリングな演奏。2楽章のアンダンテは音量の変化を少しずつつけながらフレーズを重ねていくところが聴き所。バリトンのフレットつきの明確な音色の音階が華を添えます。最後のメヌエットはヴィオラとバリトンが寄り添うような演奏。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントト長調(Hob.XI:59)1767-68年作曲
1楽章がアダージョはほぼ定番。このアルバムに共通する非常に呼吸の深い休符。音楽の息吹をうまく表しています。バリトンの弦を弾く音色と他の楽器のピチカートの対比の妙。ちょっとバリトンのカデンツァのようなところがあって興味深いですね。2楽章のアレグロはタイトなメロディーラインが魅力。バリトンが不思議トーン炸裂の伴奏にまわり、素晴らしい楽興。3楽章はまたバリトンのアルペジオの響きに打たれます。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントニ長調(Hob.XI:42)1767-68年作曲
穏やかな入り。歌うような入りで、巧みなデュナーミクのコントロール。チェロの低域の音階のコントロールは流石のものと聴きました。今までの曲の中で最も充実している響き。それぞれ曲想の面白さと、楽器に合わせて音符を書いているあたりはやはりハイドンならでは。
バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントハ長調(Hob.XI:101)1778年以前作曲
最後はこのアルバムの中で一番色彩感豊かな演奏。ハ長調の晴朗な響きを楽しむかののような演奏。この曲のみ2楽章がメヌエット。ある意味普通の構成ですが、やはり中間楽章にメヌエットが入り両端楽章が速いのは落ち着きますね。バリトントリオのみかわかりませんが、終楽章がメヌエットであるのは落ち着きませんね。
バリトン三重奏曲を7曲収めたこのアルバム。音色の特殊さは慣れてしまえば気になりません。それぞれの曲に小さなドラマがあり、それぞれの曲に特色あるメロディーが配されていて、全く飽きさせません。このアルバムのバリトンと弦楽器のアンサンブルは見事そのもの。評価は全曲[+++++]としました。バリトントリオもずいぶんアルバムが出ていますので皆さんそれぞれお好みの演奏があろうかと思いますが、今回はほんとうにいいアルバム。精妙なバリトンとヴィオラ、チェロの織りなすハーモニーに酔いしれるべき一枚だと断定します。
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