作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】バレストラッチのバリトン三重奏曲集

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今日はハイドンの真髄、バリトン三重奏曲の最近手に入れたアルバム。

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グイード・バレストラッチ(Guido Balestracci)のバリトン、アレッサンドロ・タンピエーリ(Alessandro Tampieri)のヴィオラ、ブリュノ・コクセ(Bruno Cocset)のチェロによるハイドンのバリトン三重奏曲7曲(Hob.XI:66、XI:13、XI:96、XI:70、XI:59、XI:42、XI:101)を収めたアルバム。収録は2010年10月、南フランスのシランのサンテーユ聖母教会でのセッション録音。最新の録音です。レーベルはマーキュリーが輸入するRICERCAR。

ハイドンが仕えたエステルハージ家のニコラウス候が愛好したバリトンと不思議な楽器のために書かれた100曲以上の三重奏曲。この世では不可能かと思われた全曲録音も、廉価盤の雄、Brilliant Classicsで成し遂げられてしまいました。バリトンという楽器の不思議な響きは今になっても魅力は尽きません。

演奏者を紹介しておきましょう。

バリトンを弾くグイード・バレストラッチは1971年イタリアのトリノ出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者。ヴィオラのアレッサンドロ・タンピエーリもイタリア出身。そしてチェロはフランスのブリュノ・コクセ。3人あわせてバリトントリオの演奏の練習を相当したと思わせるアルバム構成。充実の響きですね。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントイ長調(Hob.XI:66)1767-68年作曲
最初の曲から何という繊細かつ豊かな響き。鮮明に録られたバリトンの共鳴弦の不思議な音色。木質系の非常に美しい響き。残響は大目ではないんですが、わりと近くに定位するバリトンとヴィオラ、チェロ。中低音域楽器の厚めの音色の中にバリトンの弦の固い音がクッキリと浮かび上がり、暖かいメロディーと不思議な響きのアクセントの織りなすトランス状態のような不思議な音響。1楽章がアダージョ、2楽章がアレグロ・ディ・モルト、3楽章がメヌエット。これは素晴らしい演奏。いままで聴いた中で一番の充実感。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントニ長調(Hob.XI:13)1765-66年作曲
途中にギターのアルペジオのような部分が入る、バリトントリオの典型的な曲。しっかりとった休符がとても効果的。バリトンを愛好し、ハイドンの最高の理解者だったエステルハージ家のニコラウス候との演奏風景を想像してしまいますね。2楽章のアレグロ・ディ・モルトは凄いエネルギーで疾風のよう。そして3楽章のメヌエットは曲想はシンプルながらバリトン大活躍。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントロ短調(Hob.XI:96)1769-71年作曲
バリトンとヴィオラ、チェロによって奏でられる短調の影のある響き。年代をみるとシュトルム・ウント・ドラング期の絶頂期の作品。納得の充実感。1楽章のラルゴにつづいて2楽章はアレグロ。ヴィオラとバリトンがそろってメロディーラインを奏でていきますが、バリトンの音色が変化を持ち込み、非常に興味深い音響に。チェロの図太い低音が随所でアクセントになる工夫が。最後のメヌエットは回想シーンのような曲想。繰り返し現れる曲想が静かに終了。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントト長調(Hob.XI:70)1767-68年作曲
前曲とは打って変わって明るい入り。非常に快活なメロディーライン。この曲では各楽器が交互に畳み掛けるようなスリリングな演奏。2楽章のアンダンテは音量の変化を少しずつつけながらフレーズを重ねていくところが聴き所。バリトンのフレットつきの明確な音色の音階が華を添えます。最後のメヌエットはヴィオラとバリトンが寄り添うような演奏。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントト長調(Hob.XI:59)1767-68年作曲
1楽章がアダージョはほぼ定番。このアルバムに共通する非常に呼吸の深い休符。音楽の息吹をうまく表しています。バリトンの弦を弾く音色と他の楽器のピチカートの対比の妙。ちょっとバリトンのカデンツァのようなところがあって興味深いですね。2楽章のアレグロはタイトなメロディーラインが魅力。バリトンが不思議トーン炸裂の伴奏にまわり、素晴らしい楽興。3楽章はまたバリトンのアルペジオの響きに打たれます。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントニ長調(Hob.XI:42)1767-68年作曲
穏やかな入り。歌うような入りで、巧みなデュナーミクのコントロール。チェロの低域の音階のコントロールは流石のものと聴きました。今までの曲の中で最も充実している響き。それぞれ曲想の面白さと、楽器に合わせて音符を書いているあたりはやはりハイドンならでは。

バリトン三重奏曲 ディヴェルティメントハ長調(Hob.XI:101)1778年以前作曲
最後はこのアルバムの中で一番色彩感豊かな演奏。ハ長調の晴朗な響きを楽しむかののような演奏。この曲のみ2楽章がメヌエット。ある意味普通の構成ですが、やはり中間楽章にメヌエットが入り両端楽章が速いのは落ち着きますね。バリトントリオのみかわかりませんが、終楽章がメヌエットであるのは落ち着きませんね。

バリトン三重奏曲を7曲収めたこのアルバム。音色の特殊さは慣れてしまえば気になりません。それぞれの曲に小さなドラマがあり、それぞれの曲に特色あるメロディーが配されていて、全く飽きさせません。このアルバムのバリトンと弦楽器のアンサンブルは見事そのもの。評価は全曲[+++++]としました。バリトントリオもずいぶんアルバムが出ていますので皆さんそれぞれお好みの演奏があろうかと思いますが、今回はほんとうにいいアルバム。精妙なバリトンとヴィオラ、チェロの織りなすハーモニーに酔いしれるべき一枚だと断定します。
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2 Comments

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SkunJP

ついに奥の院にはまる

Daisyさん、こんにちは。ずいぶん前のレビューですが、バレストラッチ盤がもうすぐ到着しますので、それを楽しみにこちらにコメントさせていただきます。

いやあ、私もとうとうハイドンの奥の院である「バリトンの世界」にはまってしまったようです。

まあ以前から惹かれておりましたが、時々、山の上にある奥の院にちょっとお邪魔しては、「とても良いけど、ちょっと空気が薄いかなー」と感じ下山していた次第です。…まあ未熟でしたね(笑)。

ところが、この度、インフルエンザから快復した直後にバリトンによるカッサシオンを聴き(Hob.XII:19でしたね…ハハハ)、いきなりバリトンの虜になってしまいました。

何とまあ不思議な癒しの世界でしょう!ふんわりと渋い響きに心も身体もすっぽりと包まれ、気がつけばとてもリラックスしています。そしてハイドンの千変万化する作曲技法の万華鏡がここにもありました。やはり我らがハイドン、ただ者ではありません。

バリトントリオは例によってエステルハージー・アンサンブルの全集を持っているのですが、最近、オランダ・バリトン三重奏団のCDを手に入れ非常に感動しました。エステルハージー・アンサンブルも非常に優れていますが、彼らがどちらかといえばヴィオラ・ダ・ガンバの音をイメージさせるバロック的な解釈をとるのに比して、オランダ・バリトン三重奏の解釈はよりクラシカルで、ハイドンの音楽の構成感とダイナミズムを、さらにしっかりと機能的に描き出している気がします。

バレストラッチ盤は、もっと優れた演奏のようなので、大いに期待しています。

※ところで最近、デリアン四重奏団のop76/4とピアノ協奏曲ほかのCDを手に入れ、あまりの素晴らしさにDaisyさんにご報告しようと思ったのですが、すでにレビューにありました。さすがです(笑)。この盤は弦楽四重奏も良いですがピアノ協奏曲ト長調がとても良いですね。この曲、当CDで見直しました。

…あ、それからノモス四重奏団のOp50にも超感動したのですが、こちらはレビューがないような…フフフ(笑)

  • 2017/02/23 (Thu) 16:11
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Daisy

Re: ついに奥の院にはまる

SkunJPさん、ようこそ奥の院へ(笑)

交響曲や弦楽四重奏曲など、ハイドンの好きな方がはじめに楽しむ分野が下界ならば、バリトントリオや音楽時計曲などの超マイナーな分野はまさに奥の院。長い階段をのぼってきた人だけが拝める最深部になります。いつもながら例えが冴えてらっしゃる。奥の院には苦労して登ってきた人でなくては吸えない澄み渡った空気と、別世界の眺望がまっています。

バリトントリオはエステルハージ・アンサンブルによる全曲録音によって全容が姿を現しましたが、最近手に入れたLPなんぞを聞くとかなり前の時代からこのバリトンという不可思議な楽器による演奏を試みる先達がおり、アンサンブルによっては様々な響きが楽しめるわけです。そう、奥の院はいくつもあるんですね〜(笑) どうか下山する体力も考えながらお楽しみください。

こちらもバリトントリノの未聴盤が何枚かありますので内容によっては記事にしたいと思います。

ちなみにデリアンはいいですね。レビューしてからけっこうたちましたので、コメントを見てまた聴いてみたくなりました。

ノモスの件、なにやら道場破りの口上のようなニュアンスも感じ、すこし緊張感が高まりました(笑) ちと、聴き直してみます。

  • 2017/02/24 (Fri) 00:16
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