作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!

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こんなニッチなブログにも愛読していただいている方がおり、最近メールの交換やアルバムの貸し借りをさせていただいております。世の中でハイドンを偏愛する方は数えるほどでしょうが、それも私とかなり趣味が合い、当ブログで評価しているアルバムのなかでも、このアルバムこそはというアルバムを聴いてみたいとおっしゃられます。ハイドンの一般的には無名な演奏のなかにも、心にふれる素晴らしい演奏があり、そのような良さを分ち合える方がいるというのは、まことにうれしいものです。こんなブログでも続けているといいことがあるものですね。

今日はそんな関西在住の湖国JHさんからお借りした貴重なアルバムです。

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ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のドレスデン・シュターツカペレの演奏によるハイドンの交響曲86番とモーツァルトの交響曲41番「ジュピター」の2曲を収めたアルバム。収録はハイドンが2004年8月25日、モーツァルトがその前日8月24日のライヴ。En LarmesというアメリカのCD-Rレーベルのアルバム。

ハイティンクについては当ブログでも先月に一枚取りあげています。その時の記事へのリンクを張っておきましょう。

2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

PHILIPSレーベルにはマリナーやコリン・デイヴィスなどハイドンの交響曲を振る人がいたため、ハイティンクのハイドンの録音はほとんどないのではないでしょうか。質実剛健で生真面目、筋肉質の演奏が多いハイティンクですが、そのハイティンクが、ハイドンの交響曲の中でも最も純音楽的な魅力がある86番を、それもドレスデン・シュターツカペレという燻し銀の音色で知られる名オーケストラのライヴで聴けるということで、このアルバムに対する期待は非常に大きなものがあります。しかも2004年とごく最近のもの。ハイティンクの円熟の至芸がついに火を吹くのでようか。

交響曲86番ニ長調(Hob.I:86)1786年作曲
冒頭から非常に瑞々しい音色。ハイティンクらしいあっさりしながら筋骨隆々な序奏。録音は最新のものらしく鮮明で実体感も十分。音響処理をしているようで演奏中はほとんど会場ノイズは聴こえません。若干ながら音響処理の影響で響きが薄い音域があるように聴こえますが、中低域の図太さはかなりの迫力。序奏から主題に入ると快速テンポにギアチェンジ。歳のわりに若々しいハイティンクの指揮姿が目に浮かぶような、これぞハイティンクというまさに質実剛健な演奏。端正な大理石のギリシャ彫像を見るような趣。冷静ながらたくみに力感を表現してハイドンの名曲を起伏豊かに表現。86番の1楽章はオーケストラの強弱とメリハリの表現の課題曲のような雰囲気があり、その見本の演奏のような演奏。ハイティンクがオーケストラの団員から評価が高い理由がよくわかります。自己主張が強い訳でもなく、特別なことをせず、しかし楽譜から音楽が溢れ出すような自然さ。背筋ピーンです。

2楽章のラルゴは、ラルゴにしては速めで、曲全体の構造を浮き立たせようと言う意図でしょう。途中呼吸は深くはならないんですが陰影はしっかりついてハイドンの音楽の器楽曲としての面白さをうまく表現しています。あっさりと速めのテンポがうまくハマったようです。後半の盛り上がりはほどほどながら、軽さをうまく表現してます。

メヌエットは引き締まったオケの音色が心地よいですね。良く聴くとやはり弦楽器のボウイングが弓をフルにつかうというより、こする強さで力強さを表現するような独特のフレージングが特徴。ドイツ的でもラテン的でもなく、非常に主観的にいえばオランダ的な中庸さを感じます。シューリヒトの86番では枯淡の境地を聴かせるのに対してハイティンクのメヌエットは力感の表現の課題曲の演奏のような正統的な演奏。文字通り力漲る演奏。

そしてフィナーレ。期待どおりハイティンクはこの楽章に焦点を合わせていました。弾むような音色でしっかりアクセントをつけ、徐々にオーケストラが全開に。あくまできっちりコントロールされた状態での盛り上がり。徐々にテンションがあがり、オケもフルスロットルに。音の塊に打ちのめされる快感、楽興のひと時。昨夜とりあげたショルティが観客を打ちのめさんばかりの迫力だったのに対し、ハイティンクのクライマックスは等身大で、何度もふれるように質実剛健なもの。素晴らしい充実感が残ります。最後は鮮明に録音された拍手に包まれ終了。

ついでにジュピターにも聴き入ってしまいました。こちらはもう少しクッキリ派手な演奏を聴きたくなるかと思いきや、意外とハイティンクのコントロールがクッキリメロディーを描いて、ハイドンよりも良い意味で派手な演奏でした。質実剛健なテイストに変わりはないんですが、フィナーレのフーガはちょっと色っぽいところまで感じさせる名演。こちらもいい演奏でした。

ハイティンクの円熟のライヴ。86番は86番の真髄に触れるハイティンクらしいハイドンの名演奏。もちろん[+++++]です。演奏、録音ともに文句なし。ハイティンクの数少ないハイドンの交響曲の演奏として貴重なものといえるでしょう。

湖国JHさん、貴重なアルバムを貸していただきありがとうございました!

追伸:毎度お土産すみません。
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