作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

フィリップ・アントルモン/ウィーン室内管のオックスフォード、悲しみ

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今日は交響曲です。

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フィリップ・アントルモン(Philippe Entremont)指揮のウィーン室内管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲92番「オックスフォード」と交響曲44番「悲しみ」の2曲を収めたアルバム。収録は1990年の12月、収録場所は不明です。レーベルはharmonia mundi。このアルバム自体は残念ながら廃盤の模様。

アントルモンにはハイドンの録音がいろいろあるのですが、これまでちゃんと取りあげていませんでした。

フィリップ・アントルモンはWikipediaの情報によると1934年、フランスのランス生まれのピアニストで指揮者。父は指揮者、ヴァイオリニスト、母はピアニストと音楽家一家に生まれました。パリ音楽院に学び、若い時からエリザベート王妃国際音楽コンクールやロン=ティボー国際コンクールなどで入賞や最高位を得るなど輝かしい業績。このアルバムのオケであるウィーン室内管弦楽団では指揮・音楽監督を30年間にわたり務め、現在は終身桂冠指揮者に就任している。教える方ではウィーン国立音楽院の教職にあり、また日本ではNHKの「スーパーピアノレッスン」モーツァルト編に講師として出演したのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

ハイドンでは有名なところで言うとピアノ協奏曲のまとまった録音があり、現在でもWARNER CLASSICS & JAZZのハイドンの協奏曲ボックスに収められて現役盤です。こちらもそのうち取りあげねばなりませんね。

このアルバムを取りあげたのはその素晴らしい演奏から。密かな愛聴盤でもあります。

交響曲92番「オックスフォード」(Hob.I:92)1789年作曲
小編成の現代楽器オケによるタイトな響き。冒頭からキビキビとしたフレージングが心地よいですね。録音も流石harmonia mundiらしく適度な残響と力強さが両立する素晴らしいもの。いい演奏の見本のように変な癖もなく、キレのよいテンポ、素晴らしい力感、フレーズごとの表情をしっかりつけて1楽章の立体感溢れる音響を万全の響きで聴かせます。
2楽章は現代楽器らしいゆったりとした響きではじまり、特にウィーンのオケらしく木管楽器の美しい響きが印象的。こうしたゆったりした楽章キビキビ感を失わないのは流石。展開部に入りオケはフルスロットル。火照りが静まったところで再び木管楽器の美しいフレーズで癒されます。
3楽章は非常に均整のとれたメヌエット。ウィーンの室内オケゆえ、ハイドンの交響曲を演奏し慣れているんでしょうか、まさに理想的なメヌエット、力感、均整、機知の何れも十分。
そして非常に抑えた音量から微風のような終楽章の有名なメロディーが響きます。これしかないと言う完璧なテンポ。すぐにオケの爆発に飲み込まれますが、再びこのメロディーが入る時にはこの抑えが非常に効いて素晴らしいメリハリ。いつ聴いても素晴らしいフィナーレの複雑なメロディーの構成。やはりハイドンは天才。最後の盛り上がりも素晴らしいんですが、合間に入るフルートの音色の美しさが際立ちます。安心して聴けるプロの名演といったところでしょう。

交響曲44番「悲しみ」(Hob.I:44)1772以前年作曲
ぐっと時代が遡ってシュトルム・ウント・ドランク期の名曲。音が鳴り響くと同時に憂いのあるハイドンのこの時期独特のほの暗い響きにいきなり惹き付けられます。前曲同様キビキビ感の素晴らしい演奏。この曲の1楽章はヴァイオリンの音階のキレが聴き所の一つなんですが、これまた素晴らしい演奏。悲しみといえば以前とりあげたシュミット=ゲルテンバッハ指揮のワルシャワ・シンフォニアが神がかったヴァイオリンのキレで痺れましたが、その演奏とくらべて精度は粗いもののエネルギーは劣りません。ハイドンの名旋律にただ痺れるひと時。この溢れ出る生気は素晴らしいですね。
2楽章はメヌエット。ほの暗い美しい旋律の海に呑まれるような素晴らしい楽章。弦楽器のあいかわらずキビキビ感に溢れた分厚い音色によって奏でられる旋律。素晴らしい立体感。溢れる詩情。ハイドンの魂が乗り移ったかのような素晴らしい音楽です。アントルモンの巧みなコントロールにより、深い影が心に刺さります。
そして3楽章はアダージョ。弱音器つきのヴァイオリンの美しすぎる旋律に木管が重なりとろけそう。完璧なテンポ、深い呼吸、ゆったりとした感興。この楽章は完璧。
そしてフィナーレ。渾身の力で最後の楽章を盛り上げます。もはや言葉は必要なし。溢れる生気と、迸るエネルギー。オーケストラも完全燃焼で終了。

いやいや、何度聴いても素晴らしい演奏。このアルバムが現在廃盤なのは人類の損失でしょう。是非再発売させてほしいですね。評価はもちろん両曲とも[+++++]。特に「悲しみ」は図抜けて素晴らしい演奏。先に触れたシュミット=ゲルテンバッハ指揮のワルシャワ・シンフォニアが演奏の素晴らしい精度で聴かせたのに対し、こちらはしっとりと情感の乗った心に触れる名演奏。いちど皆さんに聴いていただきたい演奏ですね。タワーレコードの復刻シリーズなどに取りあげてもらえないでしょうかね。

今日は最近休日出勤などが多かったのでお休みをとっています。これから散歩にでも出てのんびりしてきます。
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