作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

絶品、ラフラム、シェーンヴィーゼ=グシュルバウアー、フラーのピアノ三重奏曲

0
0
今日はピアノ三重奏ですが、ヴァイオリンの代わりにフルートで演奏したもの。

Laflamme.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

フルート・トラヴェルソがアニー・ラフラム(Annie Laflamme)、チェロがドロテア・シェーンヴィーゼ=グシュルバウアー(Dorothea Schönwiese-Guschlbauer)、フォルテピアノがリヒャルト・フラー(Richerd Fuller)の3人のアンサンブルによる、ハイドンのピアノ三重奏曲3曲(Hob.XV:16、XV:15、XV:17)を収めたアルバム。収録は2009年10月23日から26日、ウィーン近郊の街、マウアーバッハのKartauseでのセッション録音。ハイドン没後200年に合わせたものでしょう。レーベルはCoviello CLASSICSというドイツ、ダルムシュタットのレーベル。最近リリースされたものです。

奏者を調べておきましょう。

アニー・ラフラムはカナダ、ケベック州のセティル(Sept-Îles)生まれのフルーティスト。ケベック州のリムースキ音楽院、モントリオールのマクギル大学などで、エマニュエル・パユやパトリック・ガロワなどのマスタークラスを専攻。デュトワとモントリオール交響楽団やクレーメルのクレメラータ・バルティカなど一流どころと共演。2000年からウィーン音楽院で、その後ハーグ王立音楽院でフルート・トラヴェルソを学び、本格的な古楽器奏者となったようですね。コンサートではヨーロッパ諸国をはじめとして日本にも来ているそうですので、ご存知の方も多いのかもしれませんね。ジャケットの写真を見ると蒼井優を外人にしたようなかわいい感じ(笑)

ドロテア・シェーンヴィーゼ=グシュルバウアー(長い!)はウィーン生まれのチェリスト。ウィーンの音楽舞台芸術大学、ザルツブルクのモーツァルテウム、マンチェスターの王立ノーザン音楽大学、ニューヨークのジュリアード音楽院など様々な学校で学んだよう。オーストリアを中心に活動しているようですが、ウィーン・モデルンなどの現代音楽の演奏にも加わっているんですね。有名なところだとグスタフ・マーラー・ユースオーケストラの首席チェロ奏者、シャンドール・ヴェーグのカメラータ・アカデミカ・ザルツブルク等に参加、ニコラウス・アーノンクールのコンツェントゥス・ムジクス・ウィーンには20年在籍、そして2006年からはヨーロッパ室内管に参加するなど、主にオーケストラで活躍しているようですね。

フォルテピアノのリヒャルト・フラーは一度当ブログ初期にアルバムを取りあげています。

2010/01/28 : ハイドン–ピアノソナタ : ハイドン生家の響き

また、個人のウェブサイトもありましたので、リンクを張っておきましょう。

RICHARDFULLERFORTEPIANO.COM

アメリカ、ワシントン州の生まれのフォルテピアノ奏者。音楽とピアノを中央ワシントン大学、オレゴン大学で学び、その後フォルテピアノをサン・フランシスコとウィーンで学んだ。ソリストととしてレヴァインとウィーンフィルやエマ・カークビー、アンドリュー・マンゼ、フェステティチ弦楽四重奏団などと共演。欧米の主要なホールでコンサートを開いたり、テレビやラジオなどでも活躍しているそうです。録音はヴァンハル、プレイエル、ハイドンなど古典派中心ですね。以前取りあげたハイドン生家での録音もレパートリーの一つですね。

ご紹介したようにそれぞれの奏者はみな実力者。アンサンブルの精度はどうでしょうか。

ここに収められた3曲はハイドンのピアノ三重奏曲創作の第二期につくられた13曲の最後の3曲にあたるもの。第二期の作品は1784年から1790年にかけて作曲されたもので、この3曲は1790年ロンドンのブラントから作品59として出版されたとき、ヴァイオリンのかわりにフルートが指定されたということで、当時からフルートでの演奏が踏まえられていたものと考えられます。1790年といえばハイドンが長年世話になったエステルハージ家のニコラウス候が亡くなった年でもあります。

ピアノ三重奏曲(Hob.XV:16)1790年以前作曲
残響の比較的豊かな空間にフォルテピアノとフルート・トラヴェルソとチェロが心地よく響き渡ります。キビキビとしたリズム感の癖のない演奏。3人のアンサンブルはほぼ対等な印象。ということで演奏によっては目立たないチェロがそれなりの存在感。それぞれ楽器が入れ替わり立ち替わりクレッシェンドで盛り上がります。手に汗握るというほどではありませんが、3人の緊密な掛け合いは見事。全員キリッとしたメリハリがありながらバランスの良い演奏で好印象ですね。好きなタイプの演奏ですね。録音はバランスよく残響もちょうどいいですね。スピーカーの少し後方に適度な実在感で3人が定位する感じ。新しい録音らしく鮮度は非常にいいですね。
2楽章は短調のアンダンティーノ。ハイドンらしい素朴ながら憂いに溢れた名旋律。この楽章もさっぱりとした3人の緊張感ある極上のアンサンブルを堪能できます。表情豊かなから規律を失わないすばらしい表情。
3楽章はヴィヴァーチェ・アッサイ。丹念な表情付けでハイドンの書いた絡み合うメロディーラインの面白さを巧く浮かび上がらせています。3人が良く合って絶妙なアンサンブル。リズム感も非常に良く、重いところは皆無。1曲目から完璧な演奏ですね。

ピアノ三重奏曲(Hob.XV:15)1790年以前作曲
この曲は冒頭から変わったリズムで入り、曲想も前曲とは全く異なります。チェロのメリハリの効いた響きがアンサンブルを引き締めています。シェーンヴィーゼ=グシュルバウアー、なかなかの腕前ですね。1楽章はフォルテピアノのアルペジオとフルート・トラヴェルソのとろけて絡み合うような絶妙のアンサンブルが見事。はったりもこけおどしもなく、ただただ音符に忠実に弾きながら、音楽が溢れ出してくるような素晴らしく豊かな表情。ピアノ三重奏の素晴らしい音楽。寄せては返す波のような穏やかな音楽のうねり。ちょっとした転調によるはっとするような瞬間。フォルテピアノから紡ぎ出される表情豊かななさざ波。この楽章は絶品です。家のなかが素晴らしい音楽に満ちあふれます。
2楽章はゆったりとした歩みのアンダンテ。楽譜に戯れるように自在にフレーズをきざみ、フルート・トラヴェルソとフォルテピアノが掛け合います。
フィナーレは、前曲同様速さは程々におさえ、豊かな表情付けに重点が置かれます。特にラフラムのフルート・トラヴェルソの天上に突来抜けんばかりの伸びのある音が非常に効果的。最後のフレーズの前に一旦長い間をとって音楽をリセット。なかなかのアイデアです。この曲も絶品です。

ピアノ三重奏曲(Hob.XV:17)1790年以前作曲
最後の曲。この曲は2楽章構成。またしてもこう来るかというような変化。曲ごとのこれだけの曲想の違いは当たり前のことながら見事なものです。フォルテピアノの流麗なメロディーラインが心地よい演奏。モーツァルトを思わせるフォルテピアノのメロディーですね。途中チェロの大胆なアクセントがあり、ベートーヴェンを思わせる大胆な展開が出てくるなど曲もずいぶんと凝ったものです。
途中ゆったりした楽章がなく、いきなりフィナーレに。相変わらずじっくりと表情豊かな演奏。これまでどの楽章も非常に安定感が高く、音楽の密度、緊張感も非常に良くコントロールされています。これだけクォリティの高い演奏を維持できるとは素晴らしい技術があってのことと思います。アルバムの最初から最後まで絶品の演奏がつまった素晴らしいアルバムですね。

ラフラムの伸びのある音色。ドロテア・シェーンヴィーゼ=グシュルバウアーのキリッとしたアクセント。そしてリヒャルト・フラーの起伏に富んでいながら緻密なフォルテピアノと3人の素晴らしい掛け合いを堪能できます。評価はもちろん、全曲[+++++]とします。このアルバムはピアノ三重奏曲の名盤として皆さんにお薦めしたいいいアルバムゆえ、ハイドン入門者向けタグもつけておきます。

ピアノ三重奏曲は素晴らしい曲の宝庫。弦楽四重奏曲もいいんですが、音色の異なる3台の楽器の掛け合いはより変化と起伏に富んで、音楽の迫力も一枚上。ハイドンの素晴らしい音楽が心に迫りますね。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.