作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

スミソン弦楽四重奏団のOp.54(ハイドン)

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今日は前記事のホグウッドの交響曲とのつながりで、なぜか弦楽四重奏曲。

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スミソン弦楽四重奏団(Smithson String Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.54のNo.1、No.2の2曲を収めたアルバム。収録は1985年5月、アメリカメリーランド州ベセスダのブラッドレイ・ヒルズ長老派教会でのセッション録音。

どうしてホグウッドつながりかといえば、この四重奏団の第1ヴァイオリンは、ホグウッドのモーツァルトの交響曲全集でコンサートマスターを務め、アルバムにホグウッドと同列に表記されたヤープ・シュレーダーだからです。この四重奏団のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:ヤープ・シュレーダー(Jaap Schröder)
第2ヴァイオリン:マリリン・マクドナルド(Marilyn McDnald)
ヴィオラ:ジャドソン・グリッフィン(Judson Griffin)
チェロ:ケネス・スロウィック(Kenneth Slowik)

ライナーノーツやWikipediaの情報によれば、スミソン弦楽四重奏団はアメリカのワシントンのスミソニアン・インスティテュートを本拠地として活躍する古楽器の弦楽四重奏団。1982年の設立。アメリカの公営放送を通じて広く知られてきたとのこと。
ヤープ・シュレーダーは1925年、オランダのアムステルダム生まれのヴァイオリニストで指揮者、教育学者でもあるそう。アムステルダム音楽院やソルボンヌ大学などで学び、ホグウッドとの多くの録音で知られたエンシェント管弦楽団のコンサートマスターや、このアルバムの四重奏団の母体となるスミソニアン室内オーケストラの音楽監督を務めた。近年ではバーゼル・スコラ・カントゥルムやイェール大学、ルクセンブルク音楽院などで教鞭をとっているとのこと。
この四重奏団は古楽器を用いるだけでなく、奏法、音楽様式についても緻密研究により、可能な限りオリジナルな響きを再現することにあるとのこと。

さて、ヤープ・シュレーダーによるハイドンの弦楽四重奏曲は如何なる出来でしょうか。

Hob.III:58 / String Quartet Op.54 No.1 [G] (1788)
冒頭から、古楽器の雅ながら張りと実体感のあるざらついた音色の弦楽器による、スピーディーで生気溢れる演奏。意外とメリハリもはっきりついて表情は鮮明。録音は年代相当で直接音重視でスピーカーのすぐ後ろにクァルテットが鎮座しているような定位感。アンサンブルの息はピタリと合って緊密なもの。
2楽章は珍しくアレグレット。録音のせいか楽器のせいか、若干潤いに欠ける音色。迫力はなかなかなんですが音楽を楽しむにはちょっと響きが足りない感じ。演奏自体のメリハリ、デュナーミクなどはカッチリしていて聴き応えはあります。後半の盛り上がる部分は迫力十分です。
3楽章はメヌエット。古楽器特有な音色ながら、弾む感じを強調したり、間を取ったりと忙しい展開。よく聴くとチェロの迫力ある演奏としっかりした音程が聴き所でしょう。
フィナーレも実体感重視の弦楽器の少々デッドな響きが部屋の中に充満。迫力はかなりのもの。間をうまくとってフレーズをクッキリ浮かび上がらせます。音程のかなり離れたフレーズのつなぎが多く、アクロバチックな印象。最後は消え入るような音量で締めます。

Hob.III:57 / String Quartet Op.54 No.2 [C] (1788)
前曲よりも構えが大きい展開。ゆったりとした演奏で力感も前曲より際立ちます。もしかすると間をしっかりとっていることで音楽の立体感がよりクッキリしている感じ。前曲より明らかに充実度が上がっています。音程がちょっとふらつく部分がなくはないんですが、この迫力は確かなもの。
2楽章のアダージョは逆に抑えが非常に効いた演奏ではじまります。かなり自由にフレーズをとった不思議な曲。当時としてはかなり大胆な発想の曲だったんじゃないかと想像できます。とぎれることなくメヌエットに移行。メヌエットも変わった構成。そっと忍び寄るような不思議な曲想。アダージョもメヌエットも非常に短い曲。強弱のコントラストの付け方が非常に巧みな印象で曲の面白さが浮かび上がります。ここでもハイドンの閃きを堪能できます。しっかり楔を打つような最後の強調。
フィナーレはフィナーレのような雰囲気がほんのり漂う序曲のはじまりのようなこちらも不思議な曲。独創的な構成で、重厚な曲想の部分と軽やかな部分の対比が圧巻。このあたりがハイドンの比類ない才能を感じさせる部分。古楽器の極めてオーソドックスでクッキリとした演奏により、曲の面白さが手に取るようにわかる名演奏でしょう。この曲も最後は消え入るような美しい最後。

ヤープ・シュレーダーの率いるスミソン弦楽四重奏団のけっして派手ではないですが、しっかりとした演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲の巧みな創意が浮かび上がる名演奏といったところでしょう。これは弦楽四重奏曲が好きな方には是非聴いていただきたい玄人好みのアルバムですね。評価は1曲目が[++++]、2曲目は最高評価の[+++++]とします。

やはり曲ごとにハマり具合が微妙に異なるのが音楽の奥の深さ。どの曲もベストな演奏をするのはむずかしいものなんでしょうね。
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