ホグウッド/AAMの校長先生
今日はいままで避けて通ってきたホグウッドの交響曲を取りあげましょう。

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クリストファー・ホグウッド(Christopher Hogwood)指揮のエンシェント管弦楽団(The Academy of Ancient Music)の演奏でハイドンの交響曲6曲を収めたアルバム。収録曲は交響曲50番、54番、55番「校長先生」、56番、57番、60番「迂闊者」とハイドンの創作の最初の絶頂期のシュトルム・ウント・ドラング期の直後の1773年から1774年にかけて作曲された曲を集めたアルバム。今日はその中から今までブログで取りあげていない、交響曲55番「校長先生」を取りあげます。収録はロンドン近郊の街、ウォルサムストウ講堂で1993年の3月、6月、7月にかけてのセッション録音。レーベルは今はDECCA系列のオワゾリール(L’Oiseau-Lyre)。
このアルバムは皆さんご存知のようにホグウッドによるハイドンの交響曲全集を目指して刊行されていたシリーズの第8巻。たしか第4巻か第5巻あたりからリリースされ始めてて、その後第1巻にもどり順次第10巻までリリースされたところで中断されてしまったもの。丁寧な解説、美しい装丁、古楽器の典雅な演奏と3拍子そろったシリーズで、発売当時そこそこ人気があったもの。ただ、私自身はホグウッドのこの交響曲のシリーズはあまり積極的に推していません。古楽器の音色の美しさと繊細さは感じられるものの、肝心の生気や愉悦感、機知の表現というハイドンのはずせない魅力が少し薄いという印象がつきまとっているため。
当ブログでもホグウッドの演奏自体はいくつか取りあげています。
2011/04/02 : ハイドン–声楽曲 : 【新着】ホグウッドの伴奏による歌曲集、室内楽
2010/09/21 : ハイドン–協奏曲 : ホグウッドのトランペット協奏曲
2010/09/15 : ハイドン–協奏曲 : コワン/ホグウッドのチェロ協奏曲
ブログの記事で取りあげたように、逆に協奏曲の伴奏という場面ではなかなかいい指揮も見せるようで、総じて交響曲というよりも協奏曲や歌曲の伴奏のほうが出来がいいものが多い印象があります。
今日取り上げる校長先生は1774年の作曲。「校長先生」という呼び名は1840年のアロイス・フックスによる「ハイドン作品主題目録」にあとから書き込まれたものとしてはじめて現れ、ハイドン研究家のポールによるとこの呼び名は、この曲の第2楽章の主題の規則正しい性格によるとのこと。当時も校長先生とは規則正しさを求める存在だったんでしょうね。こう言われて第2楽章を聴くとなるほどと思えてしまうところがハイドンのウィットに富んだ曲想の素晴らしさですね。
Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
小編成の古楽器オーケストラのタイトな響きに彩られたスピーディな開始。カッチリしたリズムと推進力に溢れた演奏。迫力はほどほどですがキレの良さはなかなか。録音はかなりデッドな空間で実体感重視のもの。これでもう少しゆったりした響きがあれば音楽の潤いも増すのでしょうか。ライヴでノイズを消すための音響処理を施したような混濁感もちょっと感じられて、録音で少し損をしている感じ。1楽章は小気味よい古楽器独特の溜のない軽快感がポイント。ホグウッドの全集の録音は後半に来るほど力感と生気がだんだん増してきた印象があり、第8巻であるこのアルバムではそれなりのレベルに達していますね。
2楽章の校長先生のモチーフは弱音器をつけたヴァイオリンによる規則正しい付点音符の静かなリズムを基調とした変奏が続く楽章。ハイドン独特のシンプルで奥の深い音楽。管楽器や弦が時折メロディーを重ねて変化を表現。この楽章はホグウッドの演奏の特徴がいい方向に働いて非常に深い響きに。
3楽章のメヌエットはリズムの切れと変化を聴かせる楽章。トリオはヴァイオリンとバスによる寄り添ったり掛け合ったりする不思議なメロディーライン。ふたたびメヌエットでリズムを強調。
この曲の一番の聴き所はフィナーレ。様々に表情に変化を付けながらメロディーをつないでいく工夫に満ちた曲。弦から管楽器、そしてまた弦とモチーフをつないでいきます。創意にみちた実験的な曲。ハイドンのめくるめくアイデアに素直に感服。演奏もそれを楽しむ余裕がありなかなかの充実。最後にキリッと〆て終了。
ホグウッドの校長先生はハイドンの閃きを十分に表現した良い演奏でした。ただ、前記事のヨッフムと同様、ホグウッドはハイドンの交響曲全集の前に完成させたモーツァルトの交響曲全集の驚くべき新鮮さと溢れんばかりの生気、凄まじいキレを知っているだけに、ハイドンの丁寧な演奏でもちょっと最高評価はつけにくいところ。ということで評価は[++++]としています。この演奏はホグウッドのハイドンの交響曲の演奏としては出来のいい方であり、ハイドンの交響曲好きの方には広くおすすめできる演奏であることは間違いありません。

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クリストファー・ホグウッド(Christopher Hogwood)指揮のエンシェント管弦楽団(The Academy of Ancient Music)の演奏でハイドンの交響曲6曲を収めたアルバム。収録曲は交響曲50番、54番、55番「校長先生」、56番、57番、60番「迂闊者」とハイドンの創作の最初の絶頂期のシュトルム・ウント・ドラング期の直後の1773年から1774年にかけて作曲された曲を集めたアルバム。今日はその中から今までブログで取りあげていない、交響曲55番「校長先生」を取りあげます。収録はロンドン近郊の街、ウォルサムストウ講堂で1993年の3月、6月、7月にかけてのセッション録音。レーベルは今はDECCA系列のオワゾリール(L’Oiseau-Lyre)。
このアルバムは皆さんご存知のようにホグウッドによるハイドンの交響曲全集を目指して刊行されていたシリーズの第8巻。たしか第4巻か第5巻あたりからリリースされ始めてて、その後第1巻にもどり順次第10巻までリリースされたところで中断されてしまったもの。丁寧な解説、美しい装丁、古楽器の典雅な演奏と3拍子そろったシリーズで、発売当時そこそこ人気があったもの。ただ、私自身はホグウッドのこの交響曲のシリーズはあまり積極的に推していません。古楽器の音色の美しさと繊細さは感じられるものの、肝心の生気や愉悦感、機知の表現というハイドンのはずせない魅力が少し薄いという印象がつきまとっているため。
当ブログでもホグウッドの演奏自体はいくつか取りあげています。
2011/04/02 : ハイドン–声楽曲 : 【新着】ホグウッドの伴奏による歌曲集、室内楽
2010/09/21 : ハイドン–協奏曲 : ホグウッドのトランペット協奏曲
2010/09/15 : ハイドン–協奏曲 : コワン/ホグウッドのチェロ協奏曲
ブログの記事で取りあげたように、逆に協奏曲の伴奏という場面ではなかなかいい指揮も見せるようで、総じて交響曲というよりも協奏曲や歌曲の伴奏のほうが出来がいいものが多い印象があります。
今日取り上げる校長先生は1774年の作曲。「校長先生」という呼び名は1840年のアロイス・フックスによる「ハイドン作品主題目録」にあとから書き込まれたものとしてはじめて現れ、ハイドン研究家のポールによるとこの呼び名は、この曲の第2楽章の主題の規則正しい性格によるとのこと。当時も校長先生とは規則正しさを求める存在だったんでしょうね。こう言われて第2楽章を聴くとなるほどと思えてしまうところがハイドンのウィットに富んだ曲想の素晴らしさですね。
Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
小編成の古楽器オーケストラのタイトな響きに彩られたスピーディな開始。カッチリしたリズムと推進力に溢れた演奏。迫力はほどほどですがキレの良さはなかなか。録音はかなりデッドな空間で実体感重視のもの。これでもう少しゆったりした響きがあれば音楽の潤いも増すのでしょうか。ライヴでノイズを消すための音響処理を施したような混濁感もちょっと感じられて、録音で少し損をしている感じ。1楽章は小気味よい古楽器独特の溜のない軽快感がポイント。ホグウッドの全集の録音は後半に来るほど力感と生気がだんだん増してきた印象があり、第8巻であるこのアルバムではそれなりのレベルに達していますね。
2楽章の校長先生のモチーフは弱音器をつけたヴァイオリンによる規則正しい付点音符の静かなリズムを基調とした変奏が続く楽章。ハイドン独特のシンプルで奥の深い音楽。管楽器や弦が時折メロディーを重ねて変化を表現。この楽章はホグウッドの演奏の特徴がいい方向に働いて非常に深い響きに。
3楽章のメヌエットはリズムの切れと変化を聴かせる楽章。トリオはヴァイオリンとバスによる寄り添ったり掛け合ったりする不思議なメロディーライン。ふたたびメヌエットでリズムを強調。
この曲の一番の聴き所はフィナーレ。様々に表情に変化を付けながらメロディーをつないでいく工夫に満ちた曲。弦から管楽器、そしてまた弦とモチーフをつないでいきます。創意にみちた実験的な曲。ハイドンのめくるめくアイデアに素直に感服。演奏もそれを楽しむ余裕がありなかなかの充実。最後にキリッと〆て終了。
ホグウッドの校長先生はハイドンの閃きを十分に表現した良い演奏でした。ただ、前記事のヨッフムと同様、ホグウッドはハイドンの交響曲全集の前に完成させたモーツァルトの交響曲全集の驚くべき新鮮さと溢れんばかりの生気、凄まじいキレを知っているだけに、ハイドンの丁寧な演奏でもちょっと最高評価はつけにくいところ。ということで評価は[++++]としています。この演奏はホグウッドのハイドンの交響曲の演奏としては出来のいい方であり、ハイドンの交響曲好きの方には広くおすすめできる演奏であることは間違いありません。
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