作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ルート・スレンチンスカのピアノソナタライヴ

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6月最初のアルバムはピアノソナタのアルバム。

Slenczynska.jpg
HMV ONLINEicon

ルート・スレンチンスカ(Ruth Slenczynska)のピアノでハイドンのピアノソナタHob.XVI:32、ブラームスのラプソディOpus79 No.1、コープランドの「真夏のノクターン」、ショパンのソナタ第3番、ラフマニノフの8つのプレリュードを収めたアルバム。収録は1984年4月8日、アメリカミズーリ州、セントルイスのクライストチャーチ・カテドラルでのコンサートのライヴ。レーベルは以前もとりあげたアメリカのピアノ音楽専門レーベルのIVORY CLASSICS。ジャケットの写真を見るとかなりのヴィンテージものかと思いましたが、意外と最近の録音。

ルート・スレンチンスカはもちろんはじめて聴く人。1925年カリフォルニア州サクラメント生まれのアメリカのピアニスト。父親がヨゼフ・スレンチンスキという有名なヴァイオリニストで、幼い頃からピアノを学び、ヨーロッパにわたり、後年、アルトゥール・シュナーベル、アルフレット・コルトー、ヨーゼフ・ホフマンそしてラフマニノフなど錚々たるピアニストににピアノを学んだそう。デビューは6歳でベルリン、11歳でパリでオーケストラとの共演を果たしたということで、天才肌ということでしょう。ただ、練習やコンサートツアーの過密スケジュールや父親からのプレッシャーなどによって大きなストレスを受け15歳までにコンサートから遠ざかってしまいます。その後カリフォルニア大学バークレイ校で学び、学生結婚し10年後に離婚するなどの経験をして、再びコンサートに復帰、良く知られたピアニストとなりました。その後は南イリノイ大学での教職の地位を得て1987年までその地位にあったとのこと。なにやら波瀾万丈な感じですね。お元気なら現在86歳ということ。HMV ONLINEには10枚ほどのアルバムがあり、日本でのライヴアルバムも2枚含まれていますので、ご存知の方はご存知なんでしょうね。

今日はもちろん、ハイドンのソナタのみ取りあげます。

Hob.XVI:32 / Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
この曲はブレンデルの演奏で刷り込まれた曲。ブレンデルのゾクゾクするようなダイナミクスと図太い腕で弾かれるピアノの余裕の響きとは異なり、ほどほどの力感で弾かれますが、左手のキレのいいタッチと浮かび上がるような右手のメロディーラインはなかなかのもの。音は1984年の録音ということでジャケットの印象から受ける古風なものではありませんが、響きは多少デッドでピアノの実体感が聴き所。響きの美しさはあるものの全般に残響の少ない音。解像度は悪くありません。確かな腕のピアニストが8分の力で、落ち着いて弾き進めるような演奏。音を短めに切るような表現が随所に見られて、引き締まった印象を与えています。
2楽章のメヌエットは非常に優しい表情のメロディから入ります。ほんの入りの部分だけなんですが、はっとするような瞬間があります。このへんはピアニストのセンスということでしょう。けっしてダイナミックレンジが大きい演奏ではないんですが、曲想の立体感はなかなかのもの。そしてまたはっとするようなきらめき感抜群のメロディ。磨き抜かれた宝石というよりは原石のような自然さの中の美しさが持ち味でしょう。飾り気がない素肌美人のような演奏です。
フィナーレも無理せず手の中の範囲で曲想をクッキリ浮かび上がらせようと言う背伸びしない表現が非常にしっくり来ます。中音域の粒だちが最も美しいピアノの音色。フィナーレは3分少々の短い曲ですがほのかな詩情ただよう良い演奏。ピアノから香り立つ凛々しさを聴くべき演奏でしょう。最後は盛大な拍手に包まれて終わります。

はじめて聴くルート・スレンチンスカでしたが、雰囲気のあるいいピアノでした。この曲の演奏のパースペクティヴの中に位置づけるような演奏ではなく、スレンチンスカの雰囲気ある演奏を楽しむべきアルバムなんでしょう。評価は[++++]としたいと思います。これもハイドンのピアノソナタを聴く楽しみのひとつといえるでしょう。

今日は先週の激務の反動(笑)で比較的早く帰ることができました。何枚か最近入手したアルバムを聴いてからこのアルバムをセレクト。今日は芋焼酎をロックでちびちびやりながらハイドンのピアノソナタを肴にのんびりしています。この時間が貴重なんですね。
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4 Comments

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ヒロチェリ

ポゴレリチのハイドン

ハイドンの、
ピアノ・ソナタ 第46番変イ長調と、
ピアノ・ソナタ 第19番ニ長調を、
イーヴォ・ポゴレリチの演奏で聴きました。
(1991年録音)

この演奏は、
音の一つ一つの粒が、
狂おしいまでに素晴らしい。
そして美しい。

細部への変質狂的な眼差し。。。
猟奇的な演奏といってもよいかもしれません。

しかし、この音楽を聴いて、私はこの楽譜が、
古典派のものであるとは感じられませんでした。
(ロマン派的な演奏だと言っているわけではありません。)

ハイドンの楽譜をポゴレリチがフィルターとして媒介し、
この様な特異な演奏になったのだと考えられます。

ハイドンのピアノ作品を聴く際に、
最も頻繁に取り出すディスクです。
次点でグールドの演奏も良く聴きます。
(どちらも、ハイドン演奏の王道からは明らかに外れていますね~(^-^;))

お勧めです。


PS.そろそろ私のブログでチェリビダッケ批評を再開いたしますので、
   どうぞ、よろしくお願い致します。

  • 2011/07/18 (Mon) 00:58
  • REPLY

Daisy

Re: ポゴレリチのハイドン

ヒロチェリさん、ご無沙汰しています。コメントありがとうございます。
私もポゴレリチの演奏好きです。ピアノというのは不思議な楽器ですね。たかが鍵盤ですが、弾く人によって音楽が様々にかわります。弦楽器や声はコントロールできる範囲も広いのでまだ理解できますが、同じ鍵盤を弾くだけで、そしてテンポや強弱だけでこれだけ異なる音楽が生み出されるのはまったくもって不思議なことです。ポゴレリチもグールドも同じ演奏を他の人は決して真似することは出来ないですね。

最近チェリビダッケの未入手と思われるハイドンの交響曲のCD-Rを立続けに2枚手に入れましたが、どちらも既入手盤と同じ演奏でした。年代未定の演奏とタイミングと演奏が同じで、未知の演奏との期待はからまわりでした。

チェリビダッケの記事、楽しみにしております。今後ともよろしくお願いいたします。

  • 2011/07/19 (Tue) 00:02
  • REPLY

ヒロチェリ

Re: Re: ポゴレリチのハイドン

Daisyさん、こんばんわ。

CD-Rが2枚とも既に聴かれていたものでしたか。
チェリビダッケの海賊盤は膨大な数がありますからね・・・(^_^;)

ご存知かもしれませんが、「CeLIST」というものがあります。
チェリビダッケの演奏記録、ディスク情報が記載されているので、とても便利です。

http://www.bekkoame.ne.jp/~hippo/celi/celist/index.html#TOP

  • 2011/07/21 (Thu) 00:11
  • REPLY

Daisy

Re: Re: Re: ポゴレリチのハイドン

ヒロチェリさん、コメントありがとうございます。
「CeLIST」知りませんでした。これは凄いリストですね。労作です。私もある意味リストフェチですので、このリストの凄さがよくわかります。加えて名前も秀逸ですね(笑)
チェリビダッケは確かにライヴ盤が山ほどありますので、このリストを片手に未入手盤を探してみようと思います。貴重な情報ありがとうございます。

  • 2011/07/22 (Fri) 06:31
  • REPLY