作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

クリスティーヌ・ワレフスカ/デ・ワールトのチェロ協奏曲

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かなり前の記事で取りあげた、サルヴァトーレ・アッカルドのヴァイオリン協奏曲と一緒に収録されているチェロ協奏曲を取りあげます。昔書きかけの記事修復シリーズです(笑) 以前取りあげたアッカルドの記事はこちら。

2011/05/22 : ハイドン–協奏曲 : サルヴァトーレ・アッカルドのヴァイオリン協奏曲集

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クリスティーネ・ワレフスカ(Christine Walevska)のチェロ、エド・デ・ワールト(Edo de Waart)指揮のイギリス室内管弦楽団の演奏でハイドンのチェロ協奏曲1番、2番を収めたアルバム。チェロ協奏曲1972年1月のセッション録音。今は亡き蘭PHILIPSのDUOシリーズという廉価盤。

クリスティーネ・ワレフスカは終戦の年1945年、ロサンゼルス生まれたチェリスト。母はヴァイオリニスト、父はアンティーク・ヴァイオリンの売買を仕事とするなどの音楽一家。8歳頃父からチェロを学び始め、16歳でパリ音楽院に入りチェロと室内楽の双方で1等となった最初のアメリカ人とのこと。その後国際的に活躍するようになるとともに、録音活動にも積極的にに参加するようになりました。サン・サーンスのチェロ協奏曲を皮切りに、1970年代はPHILIPSレーベルに有名作曲家のチェロ協奏曲の一連の録音を残します。このアルバムもそのうちの1枚でしょう。その後、アルゼンチンをはじめとする南米やキューバで活躍する等変わった経歴も持っています。彼女のサイトを見ると現在もお元気そうですね。

Christine Walevska - Goddes of the Cello

指揮のエド・デ・ワールトは調べたら、アッカルドと同じ1941年生まれのオランダの指揮者。元々オーボエ奏者のようですが、1964年に23歳でニューヨークの国際ディミトリー・ミトロプーロス指揮コンクールで優勝し、指揮者としてのキャリアをスタートしました。ニューヨークフィルでバーンスタインの助手を1年務めたり、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団でハイティンクの助手を務めるなどして腕を磨き、1973年から1985年までロッテルダム・フィルの音楽監督に就任、1976年からはサンフランシスコ交響楽団首席客演指揮者に、1977年から1985年まで音楽監督に就任。その後、ミネソタ管弦楽団、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団、シドニー交響楽団、香港フィルハーモニー管弦楽団、サンタフェ・オペラなどの音楽監督などを歴任。2009年よりミルウォーキー交響楽団の音楽監督ということで、オーケストラトレーナーの腕を買われて各地で仕事をつづけている実力派ということでしょう。

実力派2人によるハイドンのチェロ協奏曲ですが、どのような音楽を聴かせてくれるでしょうか。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
デ・ワールトによるオケの序奏は、かなりゆったりしたテンポで最初から伸びのあるフレージング。じっくりとフレーズを刻んでいきますが、リズムが若干重めなため、ちょっと時代がかった感じもします。ワレフスカのチェロは、デ・ワールトに合わせてか、こちらもじっくり、少し重めで最初から鳴きを多用したもの。曲が進むにつれて、じっくりした演奏に勢いと華やかさが加わり、独特のこの雰囲気も悪くないと思うようになります。しばらくでタッチに慣れてしまい、穏やかな表情の独特のくずしのある草書を見るような風情。カデンツァは力が抜けて穏やかな表情。チェロが音楽に溶け込むような演奏がワレフスカの特徴でしょうか。
アダージョは1楽章の風情そのままにさらに力が抜けて、人に聴かせるのではなく、自分が弾いて楽しむようなチェロ。この外連味のなさはなかなかのもの。アダージョに入ってワレフスカの特徴が活きてきました。デ・ワールトもそれに寄り添ってまさに枯淡の境地。
フィナーレの入りはかなり個性的。これまでのテイストとはことなり序奏からかなりリズムのエッジを強調。テンポが遅いのにクッキリ表情をつけるので、かなり個性的に聴こえる訳です。チェロはすこしリズムが遅れ気味で入りますが、ハープシコードがかなり鮮明に伴奏に加わり繊細な表情を加えます。ワレフスカのチェロはかなりマイペース。オケとの掛け合いというより、オケがワレフスカに合わせているよう。かなり老成した演奏のように聴こえますが、ワレフスカはこの演奏当時27歳。この若さでこの腰の据わった演奏というのがビックリ。演奏者ごとにどこにこだわりがあるかというのは実に面白いものです。じっくりタイプの味わい深い演奏というところでしょう。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
2番の方は、1番よりもこのコンビの特徴がよりマッチした演奏。粗いタッチのデッサンなのに、しなやかかで自然な感じが出ている感じです。しかも筆のタッチに独特の個性があって、普通の人のものとは少し違う感じが良く出ています。聴いているうちに音楽のあたたかさに包まれるような演奏。曲自体が成熟して、自然への畏敬のようなものが感じられますが、まさに、その真髄をつくような演奏。テンポやテクニックだけ聴くとちょっと頼りない感じがしますが、音楽はテクニックだけではないと訴えているような演奏と言えばいいでしょうか。アダージョ、フィナーレともに一貫している演奏。叙情詩を読んでいるような気になりました。

女流のワレフスカとベテラン、デ・ワールトによるハイドンのチェロ協奏曲2曲の演奏。一緒にまとめられたアッカルドのヴァイオリン協奏曲とは対極をなすような演奏でした。ワレフスカのチェロは音楽はテクニックにあらずと訴えているような、じわりと心に触れる演奏。フルニエの酔拳ともことなるしなやかさ。他の誰とも似ていない、これはこれで個性的な演奏でした。これはハイドンのチェロ協奏曲を聴き込んできた方にこそわかる良さかもしれませんね。この曲のファーストチョイスには推しにくいので、評価は両曲とも[+++]とします。

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