作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

サルヴァトーレ・アッカルドのヴァイオリン協奏曲集

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今日は久々のヴァイオリン協奏曲。

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サルヴァトーレ・アッカルド(Salvatore Accardo)のヴァイオリンと指揮のイギリス室内管弦楽団の演奏でハイドンのヴァイオリン協奏曲Hob.VIIa:1、VIIa:3、VIIa:4の3曲。チェンバロの演奏に名手ブルーノ・カニーノが加わっています。このアルバムは2枚組でその他にチェロ協奏曲2曲やヴァイオリンとピアノのための協奏曲なども含まれていますが、今日はヴァイオリン協奏曲方を取りあげたいと思います。ヴァイオリン協奏曲は1980年5月の録音。

このアルバム自体はちょっと前に手に入れていたんですが、聴かずに積んでありました。PHILIPSレーベルの全盛期の録音ゆえ、これまでの経験から手堅い出来ということがだいたいわかっていますので、逆にこれまで手が伸びなかったというところです。今日は未聴盤の山からこのアルバムをチョイスした訳ですが、理由は前記事のクレモナ四重奏団の演奏を聴いて、イタリアのヴァイオリンをもう少し聴いてみたくなったからというところ。

サルヴァトーレ・アッカルドは知らない人はいないでしょう。1941年イタリアのトリノ生まれということで、現在70歳、この演奏時は39歳ということで全盛期の録音でしょう。幼少の頃から才能を認められ、ナタン・ミルシテインなどに師事。13歳のときにアドリア海の一番奥に位置するトリエステでリサイタルを開くなど神童として知られました。17歳でパガニーニ国際コンクールで第1位を獲得し「パガニーニの再来」と評されるなど、その後もパガニーニの演奏の名手として知られた人。私自身はヴァイオリンの美音、特に色気のあるようなしっとり、しっかりした音色が印象に残っています。

紹介が長くなりましたのでレビューに入りましょう。

ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)1765年頃作曲
冒頭は予想通り、イギリス室内管弦楽団の瑞々しい音色の伴奏から入ります。アッカルドのヴァイオリンはしっかり安定したリズムで速いパッセージを軽々と、そして伸びのいい音で奏でていきます。脳内の予測とほぼ一致する演奏に安堵感が広がります。予想とちょっと異なるのがチェンバロがけっこう目立って加わり、典雅な雰囲気を醸し出しているところ。ヴァイオリンはハイドンの時代の音楽というよりはパガニーニのようでもあり、カデンツァに至ってアッカルドの美音とテクニックが炸裂。見事なテクニックにうっとり。ただし、あんまりハイドンの曲を聴いている感じがしないほど流麗(笑)
2楽章はハイドン初期の曲の素朴な美しさが際立つ名曲。好きな楽章です。アッカルドのヴァイオリンはイタリア風の明るさと陽光に照らされた大理石像のような優美さをを兼ね備えています。意外に感じたのがヴァイオリンの音色の線が細いこと。もう少し力強い音色かと思ってましたが、繊細な感じの方が強い音色。フレージングと音色の安定感は流石というレベル。この楽章もカデンツァが見事。
3楽章も堅実な入り。あまり指揮者としてのコントロールが目立つことはありませんが、協奏曲の伴奏らしく、オケは堅実に支えることに徹しているよう。オケの方は規模に比べると厚みのある音色と、こちらも安定感のあるテンポが心地よいもの。リズムをキリッと引き締め、オケも小節を効かせたメリハリのあるいい響き。アッカルドも伴奏に乗って気持ち良さそうに弾き進めます。最後はゆっくりスピードダウンして終わります。安定感が見事な演奏と言えば良いでしょう。

ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:3)1765年~70年頃作曲
曲想が豊かになった1楽章の入り。厚めのオケの響きが心地よい入り。この楽章はオケのコントロールというか結果的に醸し出される情感の豊かさが見事。前曲では安定感以上に踏み込んだところをみせなかったアッカルドの指揮ですが、この曲ではオケが主導権を握っているような見事なコントロール。キレてます。アッカルドもオケの力演にヴァイオリンで応えているような良い意味の緊張感が生まれています。分厚いオケの上で天真爛漫にヴァイオリンを操るような素晴らしい演奏。オケのじっくりと刻むメロディーラインがハイドンの素晴らしい音楽を表現。前曲より明らかに音楽的に充実しています。カデンツァはやはりパガニーニのような超絶技巧を凝らしたもの。ちょっとハイドンのヴァイオリン協奏曲としてはやり過ぎ感は否めませんが、聴き応えは十分。終結部もオケの気合いが乗った素晴らしい感興。
2楽章のはじまりはビロードのような極上の柔らかい響きでハイドンの美しいメロディーを聴かせます。アッカルドのヴァイオリンも力を抜いてゆったりと美しいメロディーを奏でることに集中しているよう。この楽章はまさに天上の響き。無為のなせる技。ただただ美音に打たれるような素晴らしい時間。秀逸なのはカデンツァ。まさに音楽の真髄だけを抜き出したような気合いのこもった、しかも力を抜ききった上での演奏。抜群です。
フィナーレも力むことなく、音楽だけがキレよく進む、まさにオケの意識が一点に集中したような素晴しい一体感。フィナーレはこのような微風のような演奏がもっともふさわしいですね。

ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:4)1765年~70年頃作曲
最後の曲も名演の予感。流麗、穏やか、美音とこのアルバムの最上の響きがいきなり耳を奪います。すでに力はだいぶ抜けていて、弦楽器はアッカルドのコントロールらしくボウイングが丁寧でしっとりとした感触で美しいメロディーを奏でていきます。ソロはもはや自己主張をすることをやめてしまったようなオケとの一体感。音楽をともに奏でる幸せを満喫しているような至福感に包まれた演奏。やはりカデンツァはヴァイオリンの音色で聴かせる本格的なものですが、これまでよりも自然さが増し、今までのような違和感は感じません。ハイドンの曲を弾き進めるうちにハイドンの音楽の真髄にアッカルドが感化されたということでしょうか。
2楽章は前曲同様至福の時間。もう言葉による説明は不要でしょう。やはり、この時期のPHILIPSレーベルの充実ぶりは突き抜けたものがあります。こういったメジャーではない曲の録音でも、音楽を愛する人への素晴らしいメッセージが込められた渾身の録音と言ってよいでしょう。このアルバムも今は廉価盤として販売されていますが、内容は宝物のような素晴らしい演奏の素晴らしい録音。
フィナーレはアルバムの締めにふさわしい素晴らしい充実ぶり。オケに再び力が漲り、ヴァイオリンとの迫真の掛け合い。カニーノのチェンバロも掛け合いに華を添え、典雅な趣を加えます。短い楽章ですが、活き活きとしたリズムとオケ、ソロのキレが素晴らしいフィナーレ。いつものように最後はぐっと速度を落として曲を閉じます。

さきほども触れましたが、全盛期のPHILIPSの勢いをつたえる素晴らしいアルバムです。出だしの1曲目の少々ハイドンらしくない雰囲気が少々難点ですが、後の2曲は素晴らしい出来。ヴァイオリン協奏曲のおすすめ盤として広く皆さんにお薦めしたいアルバムです。評価は1曲目は[++++]、残り2曲は[+++++]としました。

このアルバムは手に入れやすいと思いますので、皆さん、アッカルドの美音とオケの充実ぶりを是非お聴きいただきたいと思います。このアルバムの2枚目のチェロ協奏曲など方はどこかでまた紹介したいと思います。
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