作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アイヴァー・ボルトンの天地創造(ハイドン)

0
0
今日は先日交響曲を取りあげたときに予告したボルトンの未聴盤。

BoltonCreation.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

アイヴァー・ボルトン(Ivor Bolton)指揮のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の演奏でハイドンのオラトリオ「天地創造」。ソプラノがミア・パーソン(Miah Parsson)、テノールがトピー・レーティプー(Topi Lehtipuu)、バリトンがデイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン(David Wilson-Johnson)、合唱がザルツブルク・バッハ合唱団。収録は2005年10月20日~22日、ザルツブルクのモーツァルテウム大ホールでのライヴ・レコーディング。レーベルはOHEMS CLASSICS。HMV ONLINEには2種のパッケージがありましたが、安い方を注文したところ輸入盤と思いきや国内盤でした。四季のほうは普通のCDだったんですがこちらはSACDハイブリッド盤。

最近お気に入りのボルトン、これまでに取りあげた記事であまりちゃんと紹介していませんでしたので、略歴を書いておきましょう。1958年、イギリスの中西部ランカシャー地方のブラックロッドという街の生まれ。ハープシコード奏者としても知られているようです。ロンドンの王立音楽院、国立オペラスタジオなどで学び、1984年セント・ジェイムズ・バロック・プレイヤーズを創設。その後、イングリッシュ・ツーリング・オペラの音楽監督(1991年~92年)、グラインドボーン・ツーリング・オペラの音楽監督(1992年~97年)、スコットランド室内管弦楽団の首席指揮者(1994年~96年)などとキャリアを重ね、ヨーロッパの主要なオペラハウスでも活躍。このアルバムのザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団では2004年のシーズンから首席指揮者の地位についています。レパートリーはバロック音楽から現代音楽までと幅広く、また歌劇場での豊富な経験が四季や天地創造などの大曲の素晴らしいコントロールに活きているんでしょう。

いちおう、過去のボルトンの演奏の記事のリンクを張っておきましょう。

2011/05/09 : ハイドン–交響曲 : アイヴァー・ボルトンの奇跡、88番、迂闊者
2010/12/13 : ハイドン–オラトリオ : アイヴァー・ボルトン/モーツァルテウム管弦楽団の四季ライヴ

一方、オケのザルルブルク・モーツァルテウム管弦楽団は、何と1841年、モーツァルト没後50年を記念してモーツァルト未亡人のコンスタンツェとその息子たちなどによって「教会音楽協会モーツァルテウム」として設立されたまさにモーツァルトゆかりのオーケストラ。1939年には、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽アカデミー(現音楽大学)から別れ、独立した運営組織となったとのこと。現代楽器のオーケストラですがこのアルバムの解説によれば、このアルバムの演奏は管楽器のみ古楽器を用いているとのこと。

こちらも最近のモーツァルテウムのいい演奏の記事のリンクを張っておきましょう。今月とりあげたメスナーの戦時のミサはだいぶ前の演奏なので割愛。

2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

前振りが長くなりましたので、早速演奏のレビューに入りましょう。

天地創造(Hob.XXI:2)1796年~98年作曲
第1部は冒頭から期待通りの引き締まった響き。いつものボルトンの響きです。ダイナミクスというより弱音のコントロールが行き届いており素晴らしい緊張感。1番バッター、バリトンのウィルソン=ジョンソンは派手さはありませんがしっかりした渋めの声。驚くのがコーラスの透明感。響きの美しさにほれぼれ。
第2曲の合唱つきアリア。テノールのレーティプーは細めの若さを感じる声。もう少し表情があると良いですが、声の伸びはなかなか。ソロにコーラスが重なりオケの波が一波ずつ重なっていくところの迫力は見事。テンポを緩めるところとまくるところの手綱捌きはボルトンならではでしょう。
第4曲でガブリエル登場。ソプラノのパーソンはちょっと癖のある声。こちらも声の伸びはよく、悪くありません。録音はソロにスポットライトを当てるのではなくオケの一部がソロというようなバランス。強いて挙げればオケが一番リアルに録られています。
第8曲、いつも注目のガブリエルのアリア。パーソンは正統派の歌唱。端正な声で音階も明確、高音の伸びと艶も素晴らしいですね。これでもうすこし情感が乗ってくれば言うこと無しです。
第10曲はコーラスとオケの迫力漲る演奏。こうゆところでテンポを上げ、強音のアクセントをきつめにつけてくるところがボルトンならではキリッとした迫力を生んでいるんでしょう。
そして第1部のクライマックスにいたる第12曲から第13曲へかけての盛り上がり。やはり弱音部の印象的なフレージングが良く効いています。聴き慣れたメロディーにちょっと変化のあるアクセントをつけて新鮮な印象を与えているのも良いですね。クライマックスは見事なキレ。

第2部に入ってもボルトンの緻密なコントロールがテンションを保っています。
第15曲のガブリエルのアリア「力強い翼をひろげて」は第8曲よりもパーソンの良さが出ていますね。高音の響きの良い声の魅力が素直に楽しめるアリア。
第18曲の三重唱。これはボルトンのフレーズコントロールで曲想の面白さが際立ちます。間の取り方とデュナーミクが絶妙。そしてそのまま第19曲のクライマックスに突入。

CDを変えて2枚目。

聴いていくうちに、聴き所は迫力のある部分よりもフレージングの面白さにあるように感じてきます。そういった意味では第2部はそうした魅力に溢れた曲が多く聴き応えがあります。第22曲のアリア、第24曲のアリア、第26曲の合唱、第27曲の三重唱など、どの曲も曲の面白さを素直に楽しめる演奏。ソロが圧倒的な歌唱で聴かせる演奏とは別の楽しみと言った感じでしょう。第28曲のハレルヤコーラスもキリッとした締まった演奏で第2部を終えます。

第3部はいつものように静寂からの入り。第29曲のテノールのレチタティーヴォはなんだか柔らかな声にうっとり。第3部の聴き所、第30曲のアダムとエヴァのデュエット。さっぱりとした表情付けがかえって情感を豊かに表現しているよう。ソプラノとバリトンの掛け合いも落ち着いたもので見事な呼吸。背後にさざ波のようにおしよせるコーラスとの対比というか立体感が素晴らしいですね。後半の盛り上がりも見事。金管の突き抜ける響きと押し寄せる大波、ホールに響き渡るコーラス。そして響きの余韻。
第32曲で再びアダムとエヴァのデュエット。こんどは朗々と歌い合うデュエット。声の調子も上がり、オケとの呼吸もピタリと決まった歌唱。
そして終曲、第34曲は最初からフルスロットルでオケ、ソロ、コーラスの響きの海。最後までボルトンのコントロールによるタイトな響きに圧倒される演奏でした。拍手は入っていません。

アイヴァー・ボルトンによる天地創造、演奏は期待通りのものでした。ただしちょっとした難点も。まずはソロが少し弱いこと。3人とも欠点があるというほどではありませんが、オケにちょっと迫力で負けているという感じ。それと録音でしょうか。十分鮮明な録音で、ライヴの会場ノイズは良く抑えられていますがそのためか、録音にちょっと生気がありません。ちょっと音響処理のやり過ぎでしょうか。このアルバムの評価は[++++]としました。天地創造に素晴らしいアルバムが多数ありますのでちょっと辛めになってます。演奏は素晴らしいものですがちょっと録音が水を差しているのが正直なところでしょう。この演奏を生で聴けたらボルトンの引き締まったオケの響きに圧倒されていたことでしょう。

今日はこれから一件宅急便を出して、ひと泳ぎしてきます。

※録音日の表記が誤ってましたので修正しました(2011年5月15日)
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.