作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

フェステティチ四重奏団のOp.33(旧録音)

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5月になって最初のレビューは弦楽四重奏曲。

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フェステティチ四重奏団(Quatuor Festetics)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33とOp.42を収めた2枚組。ただし現在流通しているARCANAへの録音ではなく、harmonia mundi FRANCEへの旧録音。1990年12月から91年1月にかけてブダペストでのセッション録音。一方ARCANAのほうはHMV ONLINEの情報では2000年の録音とのこと。新盤の方はまだ未入手なんですね。

フェステティチ四重奏団のARCANAの方の録音は2巻を除いてほとんど持っているですが、録音が超デッド。うちのシステムで聴くとちょっととげとげしく弦が薄っぺらく聴こえるのでので曲を楽しむには少し問題があるため、あまり取り出す機会が多くありません。一方、フェステティチ四重奏団はARCANA以前にもharmonia mundi FRANCEなどにいくつか録音があり、手元にはOp.64の2枚組がありましたが、これがharmonia mundiによる残響の豊かな良い録音。先日ディスクユニオンで今日取り上げるOp.33を発見して迷わず購入。手に入れたのは4月ですので、ごく最近です。

フェステティチ四重奏団はハンガリーのブダベストに本拠を置く古楽器による弦楽四重奏団。メンバー表を見るとこのアルバムとARCANAの最近のアルバムでメンバーに変更はなさそう。

このアルバムもARCANA盤とは異なり、冒頭からたっぷりした残響含んだ良い録音。流石harmonia mundiですね。同じ奏者で表現も最近の録音の方が緻密なんでしょうが、デッドな空間で弾かれた弦楽器のちょっと痩せた音とは異なり音楽を十分楽しむことができます。

弦楽四重奏曲集Op.33は「ロシア四重奏曲」と呼ばれ、それは作曲の翌年アルタリア社の初版にロシア大公への献辞がつけられたことによるもの。ロシア大公は1781年にウィーンを訪れ、12月26日または25日に大公妃の部屋で音楽会が催された際、ハイドンの弦楽四重奏曲の1曲が演奏されたようです。このアルバムの収録は作曲当時の順番のようなので、曲ごとに演奏の特徴などを簡単に触れておきましょう。

弦楽四重奏曲Op.33 No.5(Hob.III:41)1781年作曲
冒頭の曲故耳が集中します。速めの快活なテンポ。インテンポで畳み掛けるように進め、生気とエネルギーが満ちあふれています。2楽章は短調の痛切なメロディーが美しい曲。クイケンなどの古楽器の演奏でのクールな感じとは異なりメロディーに没入する感じ。楽器の音色は古楽器そのものですが演奏スタイルは古楽器風という感じはなく楽器の雅な音色が特徴。3楽章はやはり速めの展開。テンポとフレーズごとのメリハリはハッキリつける方で、ハイドンの曲の流麗さと構成の面白さを活き活きと描きます。フィナーレは端正さを取り戻し曲の襟を正します。1曲目から古楽器とは思えない流麗さに耳を奪われます。

弦楽四重奏曲Op.33 No.2(Hob.III:38)「冗談」1781年作曲
2曲目は私の好きな曲。冒頭からヴァイオリンの艶やかな音色が心地よい演奏。楽器が非常に良く鳴っている感じが伝わります。途中現れる不協和音のアクセントがずしんと来ますね。2楽章はスケルツォが来て、3楽章がラルゴ。このラルゴが素晴らしい出来。じっくり遅いテンポで緊張感溢れる展開。素晴らしい集中力。アンサンブルの一体感も完璧。フィナーレも軽やかに決まり、この曲も抜群の出来。

弦楽四重奏曲Op.33 No.1(Hob.III:37)1781年作曲
冒頭から短調の険しい曲想が心に刺さります。基本的に演奏の安定感は良いためどの曲も聴かせどころを押さえた素晴らしい演奏。この曲も雅な古楽器の音色による流麗な四重奏の魅力溢れる演奏。この曲も2楽章がスケルツォ、3楽章はアンダンテ。アンダンテが抜群。素っ気ない演奏にも聴こえますがハイドンの音楽の詩情が色濃く表現された演奏。チェロのよく伸びた弦の音が素晴らしいですね。どの楽器も素晴らしい力量。フィナーレのアンサンブルは奇跡的な素晴らしさ、メロディーの波が次々と襲ってくる素晴らしい迫力。

弦楽四重奏曲Op.33 No.3(Hob.III:39)「鳥」1781年作曲
1楽章が素晴らしいエネルギー感。曲ごとにムラがほとんどなく素晴らしい安定感。有名なこの曲も新鮮さを保ちながらぐいぐい引き込まれる演奏。抜群のテクニックに全奏者の息がピタリとあった音楽性。基本的に速めのテンポによる精度の高いアンサンブル。弦楽四重奏曲の魅力が万全に表現されています。この曲のフィナーレは珍しくクッキリとメロディーラインのクリアさを前面に出した演奏。かっちり決まります。

弦楽四重奏曲Op.33 No.6(Hob.III:42)1781年作曲
変わった曲調の1楽章。曲の様子を探りながら演奏するような感じですが、途中のちょっと抑えた表現の部分の美しさが印象的。流れが時折止まる曲の特徴を生かした表現でしょうか。この曲は2楽章がアンダンテ。張りつめた緊張感が素晴らしい演奏。絶品。3楽章のスケルツォ、4楽章のフィナーレとも余裕たっぷりの演奏。この曲は格別集中力が素晴らしいですね。音楽が溢れ出てくる感じです。

弦楽四重奏曲Op.33 No.4(Hob.III:40)1781年作曲
Op.33の最後の曲。この曲も変わった曲想なんですが、その曲想を噛み砕くようにじっくりした演奏。音量のコントロールの面白さを巧く使ったり、テンポを所々象徴的に落として曲の面白さを表現。もはや曲自体の構造を読み尽くして自在な表現を極めます。ハイドンのクァルテットのすべてを知り尽くしたかのような自在さ。2楽章はスケルツォ、そして3楽章にラルゴ。このラルゴも絶品。最後は明るいプレスト。最後のピチカートが微笑ましいですね。

弦楽四重奏曲Op.42(Hob.III:43)1785年作曲
このアルバムの最後はOp.42。この曲はほの暗さが印象的な曲。Op.33のテンションの高さとは打って変わって、穏やかな曲調が続きます。この曲もゆったりした3楽章の充実ぶりが素晴らしい出来。あんまり集中して聴いたことがない曲だけに久々に聴き入っちゃいました。

このアルバムの評価は全曲[+++++]です。録音は90年から91年にかけてで、その10年後に録音された新盤がこのアルバムを超える演奏かどうか興味は尽きませんが、これは入手したときの楽しみにとっておきましょう。このアルバム自体は聴きやすい良い録音と4人とも万全のテクニックとピタリとそろった音楽性が素晴らしい出来です。アルバム自体が入手しやすい状態ではないことを考慮に入れてもこの演奏の素晴らしさは皆さんにお薦めしたいもの。「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。
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2 Comments

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だまてら

作品33・・・

たまたま通りがかりました、だまてらと申します。
今月5月14日(土)午後、所沢市の松明堂音楽ホールで古典四重奏団がハイドンSQ全曲演奏会シリーズの第7回(全17回!)を行いますが、同曲集より第1番と第2番「冗談」、さらに作品50より第1番と第2番という信じられない垂涎のプログラムを演奏します。
http://www12.plala.or.jp/shomeido/concert/koten/haydn11.jpg
フェステティチSQはアルカナへの新盤を聴いています。これも良いですがマイベストはウェラーSQ、「冗談」単独ならヤナーチェクSQでしょうか。最近聴いたピリオド系だと、カザルスSQ(良く考えたら凄いネーミング!)がいいですね。フェステティチSQのリーダーが「ケルテシュ、イシュトバーン」というのは日本でいえば「山田太郎」みたいな感じでしょうかね!

Daisy

Re: 作品33・・・

だまてらさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
古典四重奏団のコンサート情報、見てみたらなかなか良さそうですね。小さな会場ゆえライヴ感十分な演奏を楽しめそうですね。予定が合えば行ってみたいと思います。
ウェラー四重奏団、ヤナーチェク四重奏団とも未聴ですので是非手に入れて聴いてみたいと思います。
普段仕事の後更新しているので弦楽四重奏曲は作品ごとにとりあげるとたいてい2枚組ですので重いんですね(笑)。こんごはレビューを増やしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


  • 2011/05/02 (Mon) 06:26
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