作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

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今日はブリュッヘンのライヴ。

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フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen)指揮のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の演奏によるハイドンのリラ・オルガニザータ協奏曲(Hob.VIIh:3)、交響曲84番、そしてモーツァルトの交響曲38番「プラハ」の3曲を収めたアルバム。収録は1995年8月20日、ザルツブルクのモーツァルテウム大ホールでのライヴ。

このうち冒頭のリラ・オルガニザータ協奏曲について。いつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」を紐解いてみると、当時のナポリ王フェルディナンド四世が、自ら得意としていたリラ・オルガニザータのための協奏曲の作曲をハイドンに依頼したのに対しハイドンが1786年に作曲したもの。現在5曲が残され、このアルバムに含まれる曲はそのうちの1曲。そもそもリラ・オルガニザータとは、大型のヴィオラに似た形状で、内側に把手でまわす気の輪車があり、この輪車が下から現に接触して振動させる仕組み。弦は直接指で押さえず、反対側から鍵(キー)で操作されれう木製のブリッジで抑えるようになっている。鍵はこの役割だけでなくオルガンのふいごのような役割をもつ。要は弦楽器とオルガンの間の子のようなものでしょう。

滅多に演奏されることがなさそうなこの曲ですが、ライナーノーツによれば通常はフルートとオーボエで演奏されることが多いとのことですが、ブリュッヘンはこの演奏にあたり、本物のリラ・オルガニザータにより近づけるためブロックフルーテとガンバを選んだとのこと。ということでこのアルバムでは2台のブロックフルーテと2台のガンバによってリラオルガニザータが再現されています。

リラ・オルガニザータ協奏曲(Hob.VIIh:3)1786年作曲
録音は適度にライヴ感のある会場の広さを感じさせる良い録音。冒頭から不思議な響き炸裂です。バリトンもそうですが、リラ・オルガニザータもえも言われぬ不思議な響きだったことが推察されます。小さなオルガンと弦の組み合わせの実に不思議な音色。曲は晴朗な明るい曲。この協奏曲もハイドンの楽器の音色に対する鋭敏な感覚にもとづいて書かれているように感じます。リラ・オルガニザータの響きからインスピレーションを得てメロディーが書かれているように感じます。オケはいつもの18世紀オーケストラではなく、現代楽器のモーツァルテウム管ですので、いつもの不気味な迫力の宿るオケではなくわりと正統派の演奏。節を強調する感じはいつものブリュッヘンですが、オケの響きは極めてニュートラル。
2楽章は聴いたことのある旋律。交響曲100番「軍隊」の2楽章と同じメロディーですね。ただしソロがリラ・オルガニザータとなり、打楽器の炸裂はありません。軍隊の2楽章のメロディーライン飲みを残した不思議な曲。リラ・オルガニザータのような響きのソロにあわせているところで、オケがちょっと鈍重になってしまっているのが惜しいところ。もう少し生気というかキビキビ感が欲しいところ。
3楽章もゆったりしたテンポの楽章。ちょっと締まらない感じを残してしまいますが、協奏曲としての締まりよりもりら・オルガニザータの音色を想像しながら不思議な響きを楽しむべき演奏ということでしょう。
最後は暖かい拍手に包まれます。

交響曲84番(Hob.I:84)1786年作曲
かわって84番。こちらはブリュッヘンの演奏と知らずに聴いたら、まずブリュッヘンの演奏とは当てられないでしょう。極めてニュートラルで純度の高い自然な演奏。ブリュッヘンの演奏で時折感じるリズムの重さなどもなく、非常にリラックスして振っている感じがよく伝わります。迫力でも音色でもなく、達観したような自然さが心を打つ演奏。これはいい。1楽章の流れは見事の一言。
2楽章のアンダンテも良い流れがつづき、適度にキレよく、練りもせず、さっぱりと美しいメロディーを刻んでいきます。オケの自然な響きとそれをうまく捉えた録音も見事。会場ノイズもほとんど目立たず、ライヴでのノイズ除去をした録音によくある生気が抜けててしまったような薄い響きにもなっておらず、録音は理想的でしょう。適度なリアリティと潤いのある響きが楽しめます。まるでコンサート会場にいるような素晴らしいリアリティ。
3楽章のメヌエットは美しい響きのなか、やはり力まず、自然な演奏。良く聴くと自然と言ってもフレーズに微妙にアクセントがつけられ、凡庸な響きにならないようしっかりコントロールしていることがわかります。自然で聴き応えのある素晴らしい演奏です。
フィナーレの入りは羽毛をさわるようなデリケートな入り。すぐに力感が漲りノリがよくなります。スピードも適度なところがかえって良い感じ。後半テンポをゆったりと落とし力を極端にぬいて再び繰り返しに入るあたりのコントロールも非常に効果的。じっくりと84番の堪能できる名演奏ですね。素晴らしい演奏に会場から、耳の肥えた聴衆のリスペクトを感じる拍手。良い演奏です。

そして、最後はプラハ。これがまた素晴らしい演奏。基本的に84番の特徴そのままにモーツァルトの名曲をよりじっくり料理した感じで、このアルバムの聴き所ですね。久しぶりにプラハの名演奏を堪能。心はザルツブルクに飛んでいます(笑)

ブリュッヘンの手兵18世紀オーケストラではなく現代楽器のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団とのライヴは、手兵との演奏とは違った魅力に溢れた素晴らしい演奏でした。評価はリラ・オルガニザータ協奏曲が[+++]、84番は[+++++]です。特に84番とプラハはいろいろな演奏を聴いている耳の肥えた方ほど良さがわかってもらえるような、実に良い演奏。はったりもこけおどしもなく、普通の演奏なんですが、実に慈しみ深い。ブリュッヘンの違う魅力を発見した感じです。いや、ライヴはいいですね。
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