作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】フー・ツォンのピアノ・ソナタ集-2 やはり絶品!

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昨日到着したフー・ツォンのピアノソナタ集のつづきです。

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HMV ONLINEicon / amazon(MP3)

フー・ツォン(Fou Ts'ong)のピアノによるハイドンのピアノソナタ集。収録曲目は収録順にピアノソナタHob.XVI:46、XVI:20、XVI:50、XVI:33、XVI:32、XVI:49、そしてアンダンテと変奏曲Hob.XVII:6の7曲。収録は2009年8月25日~27日、ロンドンのエドワード懺悔王教会でのセッション録音。レーベルはイギリスのMeridian、なにげに良いアルバムの多いレーベルです。

ちなみに昨日はライナーノーツなどちゃんと読んでなかったんですが、東武トレーディングのつけた簡単な日本語解説には収録曲目について、本体ジャケット裏面に記載されたCD-2の最後のソナタのNo.59 Hob.XVI:51は誤りで正しくはHob.XVI:49ということが触れられていました。確かにHob.XVI:51は2楽章構成ですので、ちょっと考えればすぐわかりますね。曲名表記に誤りがあるのはよくあることですが、このような名演奏のアルバムにしては惜しいこと。再販の時は直してほしいものですね。

昨日聴いた2曲は、美しいピアノの音色を存分に楽しめる響きの美しい録音と、ゆったりとしながら自在にテンポを揺らして、ハイドンのソナタのフレーズをしっかりと描いていく素晴らしい演奏。今日はCD-1の最後のXVI:50から続きを聴いていきましょう。

ピアノソナタ Hob.XVI:50(1794/5年作曲)
名曲XVI:50。静寂のなかに出だしの音を一つずつおいていくような印象的な入り。前2曲ではあまり感じられなかったんですが、この曲には枯れた感じが少し感じられます。老練さというかちょっとしたタッチのタイミングの揺れと言うかそういったものが深みを与えているように聴こえます。ハイドンのソナタでは一際大きな構えのこの曲。徐々にその壮大な構成感が現れてきます。キレの良い高音の音階と時折現れる左手の強打音。そして後半現れる一瞬のるまるでオルゴールのような静謐な響きにはっとさせられます。最後は壮大さを表現して終了。
2楽章のアダージョはやはりツォンの真骨頂、一音一音すべてに意味があるように強弱とテンポと響きをコントロール。ピアノの表現を極め尽くしたものだけが表現できる領域。やはりすっと力を抜いた音の使い方が絶品。最後の一音が消え入る様子は静寂との対話のよう。
3楽章は前2曲のようにじっくり来るかと身構えていたら意外と普通に近い速めのテンポ。右手のきらめき感と左手の迫力を自在なテンポで結びつけたフィナーレ。ただししっかりとフレーズに表情をつけていくところはツォンらしいところ。

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ちょっと前に録った自宅近くの植込みのユキヤナギ。

CDを取り替えてCD-2に。

ピアノソナタ Hob.XVI:33(1770年代作曲)
時代をさかのぼって再び1770年頃の作品。ハイドンのメロディーの閃きをそのまま演奏したようなアプローチ。これまでの曲よりもテンポの変化、表情の変化を少し抑え気味にして曲の魅力をストレートに表現しようとしているんでしょう。このあたりの手加減も見事。
2楽章のアダージョは暗闇に一筋の光が射すような趣。短調の険しい感じと、途中でくりかえされる響きの色の変化。少し明るさがさしたり、陰ったり。
3楽章はツォンの自在さの極致を表したような表現。壮大さ、演出の濃さは影を潜め、逆に美しいピアノ響きの純粋さを極めたような純度の高い表現。曲ごとのこれだけの表現の変化は見事です。

ピアノソナタ Hob.XVI:32(1776年作曲)
一転して力感溢れる曲。この曲も好きな曲です。ツォンにしては速めなテンポで力感溢れる1楽章。この曲はむしろ若々しさを感じさせる精緻な演奏。冒頭からエネルギー感が見事。この曲もテンポの変化は他の曲よりも抑え気味で勢いのよさを強調するような方向性。最後の一音で空間に楔を打ち込むよう。
2楽章はメヌエットですが、このメヌエットも速めに進めます。曲に宿っているエネルギーを受けて見事な解釈。ハイドンの仕組んだ詩的な表情の表現も十分。
3楽章も速い展開。楽章間の連続性を狙ってか、一貫して速い展開。この曲の真髄を見切ったアプローチでしょう。最後のアクセントも見事に決まって終了。

ピアノソナタ Hob.XVI:49(1789/90年作曲)
再び大曲。出だしのメロディーに珍しく特徴的なアクセントをつけます。演奏スタイルは再びじっくりと自在なテンポをとりながらフレーズを描き分けていくものへ。曲ごとに明確にスタイルを変えてきますね。この曲は流麗な演奏も多いですが、ツォンはむしろごろつくような特徴的なこの曲のメロディを逆手に取って、少しつまずくような表現を繰り返し、流麗というよりは、テンポ感の面白さを全面に出したもの。曲ごとにインスピレーションのもとがはっきりとあり、それにもとづいて演奏スタイルを決めているようですね。後半に至りスケール感をきちんと出して迫力の面でも見事な展開。
2楽章はツォン得意のアダージョ。このアルバムに含まれるアダージョはどれも絶品の出来。完全にリラックスして静寂と対話しながらピアノの響きで音楽を創っていくような見事な演奏。ハイドンのピアノ音楽を聴く悦びを満喫できる演奏。なかでもこのXVI:49のアダージョは完璧な出来。絶品です。
フィナーレはアダージョの感動を鎮めるように、あえて表現を抑え気味にして淡々と楽譜を音にしていきます。聴く曲聴く曲すべて素晴らしい出来。

アンダンテと変奏曲 Hob.XVII:6(1793年作曲)
最後はこちらも大曲。最後にもってくるあたり、ハイドンのピアノ曲を知り尽くしたアルバムの企画ですね。短調の美しいメロディーをゆったりと弾き進めていきますが、やはり特徴的なのが効果的な力の抜き方。ところどころでふと力を抜いて緊張を緩めますがこれが非常に効果的。熟練のなせる技でしょう。もはや変奏が音楽の宇宙のような幽玄な世界。この曲は良い意味で枯れた感じも表現され、ハイドン晩年の深みもよく出ています。また終盤の素晴らしい迫力も見事。空間にピアノ強音が響き渡るエクスタシー。この曲も絶品です。

このアルバム、前記事で取り上げた2曲を含めて全曲[+++++]なのは言うまでもありません。ハイドンのピアノソナタの名曲の極上の演奏をまとめたアルバムとしてすべての人に聴いていただきたい名盤です。ピアノソナタのおすすめ盤はと今聴かれたら迷わず本盤をおすすめします。美しい響き、自在なテンポでフレーズを描き、ハイドンのピアノソナタの真髄に迫る素晴らしい演奏です。

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雨の実家の庭に咲く紫の綺麗な花。何という花でしょう。

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同じく実家の庭の鮮やかなオレンジの葉。こちらも名前がわかりません。

今日はこれからひと泳ぎしてきます。
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