作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

佐藤和美とバティックのフルートソナタ

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今日は珍しい曲を紹介。先日フルート四重奏曲に曲に編曲された太陽四重奏曲を取り上げましたが、今度はフルートソナタへの編曲です。

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HMV ONLINEicon / amazon

ハイドンのフルートソナタ。といってももともとフルートのために書かれたものではなく、弦楽四重奏曲Op.77のNo.1をA. メラーという人がメヌエットを省いて編曲したものとのこと。原曲の弦楽四重奏曲Op.77は1799年作曲。フルートソナタとしては1802年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社をはじめとするいくつかの出版社からハイドンの作品90として出版されたもの。ハイドンはピアノと他のソロ楽器のための曲をほとんど書いていないようですが、このジャンルで出版されたハイドンの作品は、ハイドンの他の規模の大きな作品などをハイドン以外の人物が編曲したもののようですね。このへんの背景は以前のピアノ四重奏曲に編曲された太陽四重奏曲を取り上げた記事の背景とも共通するものでしょう。

2011/04/09 : ハイドン–室内楽曲 : フルート四重奏による太陽四重奏曲

演奏はフルートが佐藤和美(男性!)とピアノがローランド・バティック(Roland Batik)。収録は1999年3月31日、4月1日、4日、ウィーンのヤマハホールで。ピアノはヤマハのようです。

佐藤和美は1948年生まれ。13歳よりフルートを始める吉田雅夫氏などに師事。1971年ドイツ留学。ハンブルグ国立音楽大学、翌年ベルリン国立音楽大学(ベルリン芸術大学)に入学し、フルートとピアノを学ぶ。1973年バイエルン・ホーフ交響楽団に入団、首席奏者として活躍。1976年ベルリン市立音楽学校フルート科講師に就任、同時にソリストとして活動を開始。最近はこのアルバムで組んだローランド・バティックなどとリサイタルなどもしているようです。私ははじめて聴く人。

ローランド・バティックはハイドンのピアノソナタ全集の録音がありますので知っている方も多いでしょう。1951年ウィーン生まれのピアニストですが、ジャズピアニスト、作曲家でもあります。ウィーン音楽・表現芸術大学でピアノを専攻し、フリードリヒ・グルダの師事すると同時に、ジャズ・ピアニストとしての腕を磨いたとのこと。1977年に、ジャズのトリオを結成。コンサート・ホールやジャズ・クラブでの数々コンサートを開き、さらに1982年から1988年にかけて、フリードリヒ・グルダの息子で当ブログでも取り上げたパウル・グルダとのデュオで一躍有名になり、ヨーロッパのオケと共演。1988年以後はソリストとして活躍。

ローランド・バティックのハイドンのピアノソナタは1巻を除いてすべて持ってるんですが、実はちょっと苦手な演奏でもあります。フルートと組んだフルートソナタという珍しい企画のこのアルバム、果たして出来は如何なるものでしょう。

フルートソナタ(ハイドンの弦楽四重奏曲Op.77のNo.1のハイドン以外の人による編曲)1802年出版
残響豊かな部屋での録音のよう。聴き慣れた弦楽四重奏曲のメロディーですが、フルートの優美な音色で奏でられるメロディーはやはり印象ががらっと変って聴こえます。1楽章は緊迫したテンションが素晴らしい迫力。フルートの音色の色彩感が際立ちます。バティックのピアノは左手の柔らかい低音が特徴でしょうか。ピアノソナタの演奏もそうですがちょっととらえどころのない特徴というか、ピアノを良く鳴らした演奏なんですがこれという癖がなく、表現の方向性がつかみにくい人との印象は相変わらず。ピアノの音色もスタインウェイとは異なりクッキリ感よりも胴鳴りの豊かさで聴かせる感じですね。
2楽章は弦楽四重奏曲での影のあるアダージョとは打って変わって、色彩感溢れるフルートところがるようなピアノの響きから構成される,むしろ陽性の響き。途中のピアノソロの部分は堂々とした揺るぎない響きで聴き手を魅了。
3楽章はフィナーレ。ちょっと意外だったのがこのフィナーレのテンポが遅いこと。ハイドンの曲はフィナーレがキリッとしていないと締まらない感じがしてしまいます。なぜか前2楽章よりもフルートもピアノも演奏が平板な感じを与えてしまい、一本調子な感じになってしまってます。テンポもちょっと重くなり、自然な重厚さというより、単純に鈍さにつながってしまうような印象。収録日が変わったのでしょうか。フィナーレの出来がちょっと落ちてしまいましたね。もしかしたらこれはアマチュア奏者を意識した楽譜の指示かもしれませんが、純粋に音楽として聴くと先程のような感想になってしまいますね。

珍しい編曲の演奏故コレクション価値は高いと思いますが、純粋にハイドンの曲として聴くと今ひとつキレが欲しいのが正直なところ。この演奏の私の評価は[+++]としています。
こういった編曲もの、しかも当時、アマチュア奏者が多いフルートを含めた編曲ものが出版されるのはこの時代に特徴的なことだった訳ですね。曲の面白さをあらためて知ると同時に、やはり原曲をオリジナルで弾いたときの説得力について考えさせられる演奏ということができるでしょう。

このアルバム、ハイドンの室内楽好きな方には編曲の珍しさという意味も含めておすすめです。
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