作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ロラン・マルタンのピアノソナタ集

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今日はディスクユニオンで見つけた一枚。

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ロラン・マルタン(Laurent Martin)のピアノによるハイドンのピアノソナタ3曲、Hob.XVI:23、XVI:6、XVI:49の3曲を収めたアルバム。ハイドンの中期、初期、後期のソナタを並べたという構成でしょうか。レーベルはLigia Digitalというレーベル。ジャケットにはDistribution:Harmonia Mundiとありますので傘下のレーベルでしょうか。収録は2003年5月、フランスの南部の街ミラボーでのセッション録音。

ロラン・マルタンは終戦の年、1945年フランスのリヨンに生まれたピアニスト。このアルバムのライナーノーツにも略歴がなく、Wikipediaもフランス語版にしか記事がなく細かいことはわかりません。マルタンの演奏するアルバムはLigia Digitalレーベルではグノー、シューマン、シャブリエ、ベルリオーズ、スクリャービン、オンスロー、アルカン、カスティヨンとフランスを中心としたマイナーものばかり。またMARCOPOLOやNAXOSからはアルカンの録音が多くリリースされています。フランスもの好きの方には知られた存在なのかもしれませんが、私ははじめて聴く人。

このアルバムを取りあげたのはもちろんその演奏の素晴らしさから。マイナー盤でしかもマイナーな演奏者ではありますが、その演奏はハイドンのソナタの神髄に迫る素晴らしさ。私が紹介せずに誰がとりあげましょうか。

ピアノソナタ(Hob.XVI:23)1773年作曲
なぜか1曲目だけ収録のレベルが低く、2曲目からレベルが上がる不思議なアルバム。それゆえ1曲目はボリュームを結構上げて聴きます。比較的残響が豊かな録音で響きの美しさで聴けてしまうもの。1楽章は速めのテンポで、さくさく弾き進めていく感じ。指がよくまわって速いテンポの痛快な表情が見事。力を入れる部分が練る感じなのも悪くありません。これだけ速いテンポで、フレーズごとの表情を豊かに演奏できるのはそれなりの技術が必要ですね。
2楽章のアダージョ。このアルバムの最も素晴らしい部分は各曲のアダージョの演奏。素晴らしいきらめき感。さりげない演奏なんですが味わい深い名演と言っていいでしょう。落ち着いた呼吸、没入しすぎない冷静さ、磨きすぎない素朴さなど、ハイドンに必要な要素をすべて備えていると言っていいでしょう。
3楽章は再び速めのテンポで突き進む感じ。曲想の面白さを知り尽くしてさらっと弾くような凄さがありますね。速いパッセージのキレと力強いアクセントが魅力ですね。

ピアノソナタ(Hob.XVI:6)1750年代作曲
一転して初期のソナタ。録音レベルがだいぶ上がってビックリ。前曲同様速めのテンポで入ります。鍵盤の上で遊ぶような感じが良いですね。楽譜を自在に弾きこなすことを楽しむような余裕がありますね。ちょっと粗いような印象を与える部分もあるんですが、それが欠点にならないところが素晴らしいですね。
2楽章はメヌエット。さりげなく入りますが、左手がデリケートにサポートしながら進みます。滑らかに変化するアゴーギグが見事。ほのかな明るさのある前半、影のある中間部、そして再び明るさをとりもどした後半と変化する曲想に応じたコントロール。
3楽章のアダージョ。この楽章の落ち着いた美しさの表現はハイドンのソナタの神髄にせまっています。一律な表現ではなく変化する曲想と表現がマッチ。
フィナーレは力強さと変化とデリケートさと多彩な表情が魅力。

ピアノソナタ(Hob.XVI:49)11789/90年作曲
記憶に残る有名なメロディーラインが耳に蘇ります。少し荒っぽくもあり、遊び心もあり、キレもメリハリもある素朴な演奏という感じ。左手の低音の表情づけが意外とはっきりしているのが他の演奏との違いと言って良いでしょう。寄せ手は返す波のような曲想をみごとに表したテンポの揺れ。綺麗に弾こうということではなく、曲に素直に弾こうという感じの演奏だと思います。自在な表現が見事と言う他ありません。これは見事な演奏。
2楽章アダージョ・カンタービレ。孤高のアダージョ。音量の変化はあまり付けずに自在なリズムから生み出される詩情のみを表現手段として弾き進めていきます。デリケートさを感じさせない堂々とした演奏ながら、良く聴くと一音一音を緻密にコントロールしていることがわかります。力強く堂々としたアダージョなのに素晴らしい詩情。これは名演奏ですね。このアルバムの白眉とも言える楽章。
フィナーレは規則的に繰り返す象徴的なメロディーラインが印象的な楽章。もうマルタンの術中にハマりきっていますのであとは流すだけのような楽章ですが、巧くまとまって曲をクッキリ閉じます。

はじめて聴くマルタンのハイドンは、良い意味で荒っぽく自在に弾き進め、細かなところに拘るでもなく、大きな曲の流れを的確につかみ、しかも機知の表現にすぐれる、曲の神髄に迫る素晴らしい演奏でした。評価は全曲[+++++]です。フランスもののスペシャリストのようですが、ハイドンを聴く限りテクニック、音楽性は抜群ですね。こうゆうアルバムがあるので未聴盤を集めるのがやめられない訳ですね。一応現役盤のようですので、ピアノ好きな方には一聴をお薦めします。
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