作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ユロフスキのオラトリオ版「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」

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今日は昨日タワーレコード渋谷で仕入れた中からもう1枚。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ヴラディーミル・ユロフスキ(Vladimir Jurowski)指揮のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンのオラトリオ版「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」。ソロはソプラノがリサ・ミルン(Lisa Milne)、メゾ・ソプラノがルクサンドラ・ドノーゼ(Ruxandra Donose)、テノールがアンドリュー・ケネディ(Andrew Knnedy)、バリトンがクリストファー・マルトマン(Christpher Maltman)、合唱がロンドン・フィルハーモニー合唱団です。収録は2009年11月28日、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴ録音。

前記事のカークビーの歌曲集同様リリースされたばかりのもの。ユロフスキは最近良く話題になる若手指揮者。アルバムもいろいろリリースされているようですが未聴の人。ちょうどレコード芸術の広告でこのアルバムがリリースされたことを知り、機会があれば注文しようとしていたものでした。

さて、ユロフスキですが、略歴などを調べてみました。1972年モスクワ生まれのロシア人指揮者。モスクワ音楽院で音楽を学んだあと、ドイツ統一の年1990年に家族ともどもドイツに移住し、主にドレスデン、ベルリンで音楽を学んだとのこと。1995年にアイルランドで催されるウェックスフォード音楽祭において、リムスキ=コルサコフの歌劇「五月の夜」を指揮してデビューし、その後は国際的に活躍しています。2001年からグラインドボーン音楽祭音楽監督、2007年からはこのアルバムのオケであるロンドン・フィルの首席指揮者となっています。現在でも39歳ですから若いですね。

なお、指揮者やこの曲の情報などHMV ONLINEの上のリンクはかなり情報が充実していますのでご覧ください。特にこの曲の管弦楽版、弦楽四重奏曲版を含む演奏リストなどはなかなかの労作。私が普段ネット販売でHMV ONLINEを利用するのは、アマゾンやTOWER RECORDS ONLINEにくらべて、個々のアルバムの情報が丁寧に記されていることも大きなポイントです。このあたりは大きな差がありますね。

ユロフスキの最新のライヴの出来はどうでしょうか。

序章からキレのいいオケの響き。比較的速めのテンポで、この曲独特の深い情感よりも曲の構造を浮き彫りにするようなアプローチ。ロンドンフィルの古い演奏で感じるオケの甘さは感じず、キリッと引き締まった音。音だけ聴くとノンヴィブラート的なさっぱり感があり、現代楽器の演奏ながら古楽器での演奏に近い、いわゆる古楽器的アプローチでしょう。新しい時代の解釈を感じます。

第1ソナタからは合唱とソロが加わります。ソプラノのドノーゼの声が目立って通りがよいですね。実際の宗教行事での演奏ではちょっとあっさりし過ぎのような印象もあるかもしれないくらいです。合唱は弱音のコントロールが見事。

コーラスの短いつなぎが入り第2ソナタへ。この演奏ではつなぎは一般的なコーラスによるもの。少しずつしなやかな叙情性が増してきて曲の情感を反映した演奏に変化してきているよう。この曲のしなやかな情感の表現はなかなか。叙情的な表現に陥らず、あっさりした表現で曲の憂いをうまく表現でき、曲の大きなうねりを感動的に奏でています。つなぎの部分をふくめて会場のノイズなどはうまく処理できているんですが、その音響処理のせいか、若干響きの潤いと立体感が少々欠けるのが惜しいところ。

第3ソナタに入り、またすこし情感がつよくなります。静寂感とゆったり感が加わり、会場の聴衆の神経がタクトの先に集中しているような素晴らしい緊張感。抑えた部分のコントロールが絶妙です。ソリストの歌唱も合唱もよく溶け合って美しい響き。非常にしなやかな流れ。

第4ソナタは起伏の大きな表現でメロディーを進めます。休符を長めにとり劇性を強調しますが、基本的に控えめなヴィブラートとあっさりしたフレージングによって均衡を保っています。

しずかな短い序章を挟んで第5ソナタへ。ピチカート主体の絶妙に美しい曲。微視的にならないよう大きな流れをさっと描くようなざっくりとメロディーを流していき、曲の構造をすっきり表現。途中でテノールのケネディーのソロが入りオラトリオ版であることを印象づけます。やはり速めのテンポによるすっきりとした情感が見事。

第6ソナタは郷愁を感じる名旋律の曲。全曲を通して感じるあっさりしながらも情感をうまく表現する手法が徹底され、この曲のうら悲しい感じをうまく表現しています。

第7ソナタは最後のソナタ。曲の大詰めを予感させるメロディーライン。ハイドン独特の暖かみと慈しみに溢れたメロディーをユロフスキが織り上げていきます。オケもコーラスも名残を惜しむような寂しげな演奏になり、ソロが少し悲しげに華を添えます。最後は消え入るように。

最後は地震の場面。ティンパニをともない、一転遅めのテンポで大地を揺るがすようすをざっくり表現。ここにきてテンポを落とす機転は見事。終曲の迫力を存分に表現。盛大なブラヴォーに包まれます。

この演奏は聴き始めはピリオド・アプローチの流行りの演奏と思って、あまり良い印象を受けなかったんですが、聴き進むうちにユロフスキの術中にハマった感じです。全体設計が緻密であり、さっぱりとした演奏から醸し出される深い情感が見事。ユロフスキ、素晴らしい才能の持ち主とみました。この曲の新たな時代のスタンダード的な演奏ともいえるかもしれません。評価は[+++++]としました。ただ、若干録音が最近のライヴ録音に多い音響処理でノイズはほとんど感じないものの、肝心の演奏の生気がちょっと弱まってしまっているのが惜しいところ。

前の記事のカークビーの歌曲とともに素晴らしい演奏がつづき、幸せな週末を送っています。さて、明日は何を取り上げましょうか、、、
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