【新着】エマ・カークビーの歌曲集
昨日は、仕事を途中で切り上げて久しぶりに渋谷タワーレコードに寄ってみました。渋谷の街は人はかなり少ないものの、普段と変わらぬようす。タワーレコードは営業していましたが、エレベーターは停電に備えて利用停止の張り紙。エスカレーターでクラシック売り場に行き、空いた店内でしばらく久しぶりのショッピングを楽しみました。
最近早朝から深夜まで仕事続きだったので、音楽を楽しむ暇もなく、疲れもたまっていましたが、連休は休めそうだったので連休中に聴こうとハイドンを中心に10数枚手に入れてきました。いつも行くスポーツクラブも臨時休業、プールはいつ再開するかわからないようなので、休み中はのんびり音楽でも聴いて休養して過ごしたいと思います。良かった演奏はレビューで取り上げたいと思ってます。
さて、いろいろ買ったんですが、その中から今日はこのアルバム。

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エマ・カークビー(Ema Kirkby)のソプラノとマーシャ・ハジマーコス(Marcia Hadjimarkos)のフォルテピアノの組み合わせによるハイドンの歌曲集。レーベルは今や廉価盤レーベルの世界的覇者BRILLIANT CLASSICS。
BRILLIANTのアルバムは当初他社音源を買い取ってリリースしたものも多かったので、カークビーのハイドン歌曲ということなら、昔の録音だろうと思って買ったんですが、家に帰ってビニールをはがしてみると、最新の録音。2009年1月スイスのレマン湖近く、シャラ(Charrat)のシャラ音楽ホール(Salle Charramuse)でのセッション録音。BRILLIANTは近年バリトントリオの全集やスコットランド歌曲集などハイドンの素晴らしいプロダクションを連発していますが、このアルバムも素晴らしい企画ですね。今までカークビーのハイドンの歌曲集が大手も含めてアルバムとしてリリースされてなかったのが不思議なくらいです。
さて、いつものようにカークビーについて紹介。Wikipediaなどによると、カークビーは1949年生まれのイギリス人ソプラノ歌手。このアルバムの収録時は60歳ということですね。オックスフォード大学で古典を修め、最初は英語教師として働いていたようですが、合唱団のメンバーとして演奏活動を開始したとのこと。この声ならすぐに合唱団でも目立った存在になるでしょう。その後リュート奏者のアントニー・ルーリーらと共に、ルネサンス以降の音楽を専門とする「コンソート・オブ・ミュージック」を創設し古楽の演奏の第一人者となりました。当初はL'OISEAU LYREレーベルの看板アーティストとして日本でも知られた存在でしょう。ノン・ヴィブラート唱法による端整で透明感ある独特な美声によって、「天使の声」と呼ばれていましたね。
伴奏のマーシャ・ハジマーコスはアメリカ人のよう。幼少の頃からピアノに親しみ、マイケル・グレイブスのショートケーキのようなポストモダン建築の代表作、ポートランド市庁舎で有名なオレゴン州ポートランドで学び、ピアノとフランス文学をアイオワ州立大学で学んだよう。その頃ハープシコードなど古楽器への興味を持つようになったとのこと。後にヨーロッパに移り、フランス国立音楽院でインマゼールなどとともに学んだとのこと。その後はフォルテピアノとクラヴィコードのスペシャリストとして活躍しているようです。このアルバムの他にもハイドンのソナタ集もリリースされているようですので入手してみたいと思っています。
収録曲目は収録順に以下のとおり。ハイドンの英語による歌曲と有名な「ナクソスのアリアンナ」など11曲。名曲ぞろいです。
「さすらい人」(Hob.XXVIa:32)
「鋭い目」(Hob.XXVIa:35)
「魂の歌」(Hob.XXVIa:41)
「誠実」(Hob.XXVIa:30)
「おお美しい声よ」(Hob.XXVIa:42)
カンタータ「ナクソスのアリアンナ」(Hob.XXVIb:2)
「牧歌」(Hob.XXVIa:27)
「回想」(Hob.XXVIa:26)
「ナイルの戦い」(Hob.XXVIb:4)
「彼女は決して恋について打ち明けなかった」(Hob.XXVIa:34)
「貴婦人の鏡台」(Hob.XXXIc:17a)
これらの曲は「ナクソスのアリアンナ」をのぞいて1794年から95年とハイドンがロンドン旅行に行っていた頃の作品。「ナクソスのアリアンナ」は1789年頃の作品です。
これらの曲の演奏リストは下記のリンクにあります。
Opera & Vocal 3 - Haydn Recordings Archive
カークビーの声は60歳という歳を全く感じさせなない声。以前の透明感溢れる声から少し変化して情感の表現が濃くなってきたように感じます。以前ほどノンヴィブラートという感じでもなく、自然な歌唱になった気がします。高音域の美しさは相変わらずで声量も十分。ハジマーコスのフォルテピアノはテンポをかなり揺らしてこちらも情感溢れる伴奏。録音は適度な残響の少し狭いホールで録られたような音。カークビーの声とフォルテピアノがホールのステージに定位しているような適度な距離感で最近の録音ゆえ自然さは十分。
いくつかの曲をかいつまんでレビューしておきましょう。
3曲目の「魂の歌」。カークビーの高音域の声の素晴らしい伸びとハジマーコスの起伏に富んだフォルテピアノが描く情感に溢れたハイドンの名曲。前半の沈んだ曲調から中半の明るい曲調、そして後半の再び沈んだ曲調への変化の演出が見事。カークビーの声は素晴らしい張り。
6曲目におかれた「ナクソスのアリアンナ」。この曲のみイタリア語。曲の解説は以前の記事をご参照ください。
2010/08/08 : ハイドン–声楽曲 : アンナ・ボニタティバスのオペラアリア集(つづき)
ハジマーコスのフォルテピアノがかなり劇的な雰囲気を出した伴奏で、カークビーも古楽風という範囲にとどまらない歌唱。曲はレチタティーヴォ、アリア、レチタティーヴォ、アリアの4部構成ですが、最後のアリアのカークビーの絶唱。カークビーのみならずハジマーコスの自由闊達なフォルテピアノも聴き所。
10曲目の「彼女は決して恋について打ち明けなかった」は、出だしのフォルテピアノの表情のコントロールが非常に巧み。この自在さはまるでアンドレアス・シュタイアーのよう。伴奏から抜群の緊張感。歌が入るとカークビーの抜群の美声が空間に満ちあふれます。
11曲目の「貴婦人の鏡台」。アルバムの最後におかれた曲。カークビーの慈しみに溢れるつぶやくような短い歌。最初は歌詞を歌い、次はハミングで、そしてフォルテピアノだけになって最後は消え入るように。素晴らしい叙情。このアルバムにはちゃんと歌詞がついていますので、最後のこの美しい曲の短い歌詞をつけておきましょう。
「魅力ある美しい姿を過信してはいけない。美しさは魅力だがいつの間に魅力は失われていく」
鏡台の前にたたずむ貴婦人が歌っている姿が浮かんでくるようです。2分少々の短い曲ですが息を飲むような美しさに溢れた名曲ですね。
このアルバムはカークビーの絶妙な歌唱、ハジマーコスの素晴らしいフォルテピアノの伴奏、見事な選曲、そして手に入れやすい価格(タワーで650円でした!)、ということなしの名盤。アメリングの歌曲集にと並ぶハイドンの歌曲の代表的なアルバムとして皆さんにお薦めしたいいいアルバムです。評価は全曲[+++++]としました。
このアルバム、ジャケットはいわゆるBRILLIANT風の絵をあしらったあまりインパクトのないものなんですが、もうすこし工夫すればもっと注目されるような気がします。演奏の素晴らしさとジャケットの落差が大きいですね(笑) これだから聴いてみなくてはわからない訳なんですが、、、
最近早朝から深夜まで仕事続きだったので、音楽を楽しむ暇もなく、疲れもたまっていましたが、連休は休めそうだったので連休中に聴こうとハイドンを中心に10数枚手に入れてきました。いつも行くスポーツクラブも臨時休業、プールはいつ再開するかわからないようなので、休み中はのんびり音楽でも聴いて休養して過ごしたいと思います。良かった演奏はレビューで取り上げたいと思ってます。
さて、いろいろ買ったんですが、その中から今日はこのアルバム。

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エマ・カークビー(Ema Kirkby)のソプラノとマーシャ・ハジマーコス(Marcia Hadjimarkos)のフォルテピアノの組み合わせによるハイドンの歌曲集。レーベルは今や廉価盤レーベルの世界的覇者BRILLIANT CLASSICS。
BRILLIANTのアルバムは当初他社音源を買い取ってリリースしたものも多かったので、カークビーのハイドン歌曲ということなら、昔の録音だろうと思って買ったんですが、家に帰ってビニールをはがしてみると、最新の録音。2009年1月スイスのレマン湖近く、シャラ(Charrat)のシャラ音楽ホール(Salle Charramuse)でのセッション録音。BRILLIANTは近年バリトントリオの全集やスコットランド歌曲集などハイドンの素晴らしいプロダクションを連発していますが、このアルバムも素晴らしい企画ですね。今までカークビーのハイドンの歌曲集が大手も含めてアルバムとしてリリースされてなかったのが不思議なくらいです。
さて、いつものようにカークビーについて紹介。Wikipediaなどによると、カークビーは1949年生まれのイギリス人ソプラノ歌手。このアルバムの収録時は60歳ということですね。オックスフォード大学で古典を修め、最初は英語教師として働いていたようですが、合唱団のメンバーとして演奏活動を開始したとのこと。この声ならすぐに合唱団でも目立った存在になるでしょう。その後リュート奏者のアントニー・ルーリーらと共に、ルネサンス以降の音楽を専門とする「コンソート・オブ・ミュージック」を創設し古楽の演奏の第一人者となりました。当初はL'OISEAU LYREレーベルの看板アーティストとして日本でも知られた存在でしょう。ノン・ヴィブラート唱法による端整で透明感ある独特な美声によって、「天使の声」と呼ばれていましたね。
伴奏のマーシャ・ハジマーコスはアメリカ人のよう。幼少の頃からピアノに親しみ、マイケル・グレイブスのショートケーキのようなポストモダン建築の代表作、ポートランド市庁舎で有名なオレゴン州ポートランドで学び、ピアノとフランス文学をアイオワ州立大学で学んだよう。その頃ハープシコードなど古楽器への興味を持つようになったとのこと。後にヨーロッパに移り、フランス国立音楽院でインマゼールなどとともに学んだとのこと。その後はフォルテピアノとクラヴィコードのスペシャリストとして活躍しているようです。このアルバムの他にもハイドンのソナタ集もリリースされているようですので入手してみたいと思っています。
収録曲目は収録順に以下のとおり。ハイドンの英語による歌曲と有名な「ナクソスのアリアンナ」など11曲。名曲ぞろいです。
「さすらい人」(Hob.XXVIa:32)
「鋭い目」(Hob.XXVIa:35)
「魂の歌」(Hob.XXVIa:41)
「誠実」(Hob.XXVIa:30)
「おお美しい声よ」(Hob.XXVIa:42)
カンタータ「ナクソスのアリアンナ」(Hob.XXVIb:2)
「牧歌」(Hob.XXVIa:27)
「回想」(Hob.XXVIa:26)
「ナイルの戦い」(Hob.XXVIb:4)
「彼女は決して恋について打ち明けなかった」(Hob.XXVIa:34)
「貴婦人の鏡台」(Hob.XXXIc:17a)
これらの曲は「ナクソスのアリアンナ」をのぞいて1794年から95年とハイドンがロンドン旅行に行っていた頃の作品。「ナクソスのアリアンナ」は1789年頃の作品です。
これらの曲の演奏リストは下記のリンクにあります。
Opera & Vocal 3 - Haydn Recordings Archive
カークビーの声は60歳という歳を全く感じさせなない声。以前の透明感溢れる声から少し変化して情感の表現が濃くなってきたように感じます。以前ほどノンヴィブラートという感じでもなく、自然な歌唱になった気がします。高音域の美しさは相変わらずで声量も十分。ハジマーコスのフォルテピアノはテンポをかなり揺らしてこちらも情感溢れる伴奏。録音は適度な残響の少し狭いホールで録られたような音。カークビーの声とフォルテピアノがホールのステージに定位しているような適度な距離感で最近の録音ゆえ自然さは十分。
いくつかの曲をかいつまんでレビューしておきましょう。
3曲目の「魂の歌」。カークビーの高音域の声の素晴らしい伸びとハジマーコスの起伏に富んだフォルテピアノが描く情感に溢れたハイドンの名曲。前半の沈んだ曲調から中半の明るい曲調、そして後半の再び沈んだ曲調への変化の演出が見事。カークビーの声は素晴らしい張り。
6曲目におかれた「ナクソスのアリアンナ」。この曲のみイタリア語。曲の解説は以前の記事をご参照ください。
2010/08/08 : ハイドン–声楽曲 : アンナ・ボニタティバスのオペラアリア集(つづき)
ハジマーコスのフォルテピアノがかなり劇的な雰囲気を出した伴奏で、カークビーも古楽風という範囲にとどまらない歌唱。曲はレチタティーヴォ、アリア、レチタティーヴォ、アリアの4部構成ですが、最後のアリアのカークビーの絶唱。カークビーのみならずハジマーコスの自由闊達なフォルテピアノも聴き所。
10曲目の「彼女は決して恋について打ち明けなかった」は、出だしのフォルテピアノの表情のコントロールが非常に巧み。この自在さはまるでアンドレアス・シュタイアーのよう。伴奏から抜群の緊張感。歌が入るとカークビーの抜群の美声が空間に満ちあふれます。
11曲目の「貴婦人の鏡台」。アルバムの最後におかれた曲。カークビーの慈しみに溢れるつぶやくような短い歌。最初は歌詞を歌い、次はハミングで、そしてフォルテピアノだけになって最後は消え入るように。素晴らしい叙情。このアルバムにはちゃんと歌詞がついていますので、最後のこの美しい曲の短い歌詞をつけておきましょう。
「魅力ある美しい姿を過信してはいけない。美しさは魅力だがいつの間に魅力は失われていく」
鏡台の前にたたずむ貴婦人が歌っている姿が浮かんでくるようです。2分少々の短い曲ですが息を飲むような美しさに溢れた名曲ですね。
このアルバムはカークビーの絶妙な歌唱、ハジマーコスの素晴らしいフォルテピアノの伴奏、見事な選曲、そして手に入れやすい価格(タワーで650円でした!)、ということなしの名盤。アメリングの歌曲集にと並ぶハイドンの歌曲の代表的なアルバムとして皆さんにお薦めしたいいいアルバムです。評価は全曲[+++++]としました。
このアルバム、ジャケットはいわゆるBRILLIANT風の絵をあしらったあまりインパクトのないものなんですが、もうすこし工夫すればもっと注目されるような気がします。演奏の素晴らしさとジャケットの落差が大きいですね(笑) これだから聴いてみなくてはわからない訳なんですが、、、
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