イタリア四重奏団の「皇帝」、Op.33 No.2(ハイドン)
依然、震災関連の特別対応で毎日ドタバタしています。土日も出勤したのでくたくた。今日も休む予定だったんですがいろいろあって出勤でした。仕事が一段落したら帰るつもりでいたんですが、夕刻電力量が不足して計画停電外の大規模停電もあり得るとの情報で状況一変。またどたばたでした。それでも交通機関の乱れを心配して久々に8時過ぎと早く帰ってきました。
そうはいっても寒い中避難所で過ごされている皆さん、捜索や復興支援に走り回る人々の環境とくらべればまだまだ恵まれた環境。贅沢は言ってられませんね。
さて、こうゆうときこそ良い音楽を聴いて、心だけでも豊かでありたいものです。

今日はイタリア弦楽四重奏団(Quartetto Italiano)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.76 No.3「皇帝」とOp.33 No.2を収めたアルバム。収録は1965年3月、レーベルは懐かしいフランスのAdes。
イタリア四重奏団は終戦の年、1945年イタリアのカプリ島でデビューしたクァルテット。当時は4人の奏者が20代という若さ。1967年から75年にかけて録音されたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集が偉業として広く知られたものとのこと。その後もモーツァルト、シューマン、ブラームス、ヴェーベルンなどの弦楽四重奏曲全集を収録してリリースしてます。惜しくも1980年に解散しています。表記はイタリア語だけですが、なんとオフィシャルと思われるサイトがありますのでリンクを張っておきましょう(英語もあるように見えますが、工事中です)
Quartetto Italianoオフィシャルサイト(イタリア語)
この演奏当時のメンバーは以下のとおり。
ヴァイオリン:パオロ・ボルチャーニ(Paolo Borciani)
ヴァイオリン:エリサ・ペグレッフィ(Elisa Pegreffi)
ヴィオラ:ピエロ・ファルッリ(Piero Farulli)
チェロ:フランコ・ロッシ(Franco Rossi)
ヴィオラとチェロは途中で交代したあとのメンバーです。
私のイタリア四重奏団の印象は流石イタリア人のクァルテットと思わせる流麗さと力感溢れる演奏。モーツァルトの弦楽四重奏曲全集は愛聴盤のひとつです。
1曲目は有名な「皇帝」、この曲の2楽章の変奏の主題に使われたの旋律は「皇帝讃歌」”Gott, erhalte den Kaiser!"(Hob.XXVIa:43)という歌曲。元オーストリア国歌、現ドイツ国歌です。この曲の作曲の経緯は有名ですのでご存知の方も多いと思いますが、いちおういつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」から紹介しておきましょう。
ハイドンは1791年と1794年の2回にわたってロンドンを訪れていますが、イギリス滞在中に英国国歌”Got Save the King”の存在に感銘を受け、母国オーストリアにも国歌があればと考えていたようです。それを知ったヴァン・スヴィーテンが当時のオーストリア首相に話をもちこみ、詩人レオポルド・ハシュカに歌詞をつくらせ、ハイドンが曲を仕上げたのが「皇帝讃歌」。それを皇帝の誕生日である1797年2月12日にオーストリア全土に国歌として発表したもの。ハイドンが国歌を作りたいと思うと、それが本当に国歌になってしまうところが、当時のハイドンの存在の大きさを物語っていますね。
さて、そろそろ演奏のレビューに。まずは「皇帝」から。
1楽章は録音年代が信じられないような鮮明、精緻な弦楽器の力強い響きから入ります。強い部分の鋼のような音色と弱い部分の柔らかい音色の使い分けが見事。フレージングはイタリア四重奏団ならでは流れるようなもの。そしてピタリと息の合ったアンサンブル。録音は若干デッドですが、鮮明さも実体感も十分。スピーカーのまわりに4人の奏者がびしっと並んでいるようなリアルなもの。もちろん時代なりの古さはありますが鮮明さは相当なものです。現代の録音とちがって芯のしっかりした音が逆に迫力を高めているよう。1楽章は挨拶がわりに怒濤の迫力を見せつけます。
2楽章の皇帝讃歌のメロディーは抑えた入り。有名なメロディーをゆったりと抑えて表現。この演奏の白眉はその後の変奏。最初の主題を抑えて入り、変奏はゆったりしたテンポながら自在な弓さばきで変化を楽しみながら表現の幅を広げていくような展開。イタリア四重奏団らしく流麗さも感じさせますが、憂いの表情、ほのかな情感の表現が秀逸。えも言われぬ幸福感。この楽章の最後の音量を思い切り落とした部分に至っては魂だけになったメロディーが自身で曲をすすめていくような不思議な感覚。この楽章は絶品ですね。
3楽章のメヌエットは木質感のつよい弦の音色の美しさが前面に出たもの。たっぷりと溜をとってリラックスした展開。この楽章も流石イタリア四重奏団というべき流麗さにあふれています。旋律が低音域から高音域に音をあげをあげていくところの流れるような見事さは聴き所。
フィナーレは再び1楽章冒頭で聴かれた突き刺さるような鮮明な弦の響きが素晴らしいインパクト。漲る力感、ピタリと息の合ったアンサンブル、すすむにつれてフォーカスがピタリと合い、緊張感に富んだ素晴らしい迫力。最後は空間に楔を打つように鋼のような音で終わります。
いやいや、素晴らしい迫力。生で聴いたら凄いことになっていたでしょう。
つづく2曲目のOp.33 No.2は18年遡って、1781年の作曲。ぐっと素朴な曲調ゆえ、弾く方も力をセーブして弾いているよう。全曲を通してその余裕が演奏の美点と聴きました。こんどは全楽器の緊密なアンサンブルというよりはヴァイオリンの美しいメロディーを中心とした各楽器のサポートというような位置づけで曲が書かれているように聴こえます。2楽章のスケルツォ、3楽章のラルゴ、フィナーレと流れよく進め、各奏者の見事な弓さばきもちりばめられた名演奏者による余裕ある演奏という風情ですね。さいごはさらりと消え入るような演出つきの演奏。
どちらの曲も素晴らしい演奏。もちろん両曲とも[+++++]としました。最近あまり店頭では見かけなくなりました故、見かけたら即ゲットすべき名盤です。ハイドン入門者向けタグも進呈!
帰ってテレビをつけるとやはり震災、原発のニュースが始終ながされてましたね。家族を見つけた方の笑顔と、家族を失い悲しみに暮れる方、やはり家族をうしないながらも見つけてくれたかたに感謝を伝える人と様々な表情。運命によって様々な結果に別れてしまうものなんですね。
今日も茨城などで比較的強い余震が何度かありましたが、いつになったら収束にむかうのでしょうか。早くゆっくり音楽を聴いたり、楽しく飲みにいける普段の生活を取り戻したいものです。
知り合いも含めて被災地の皆さん、がんばってくださいね。
そうはいっても寒い中避難所で過ごされている皆さん、捜索や復興支援に走り回る人々の環境とくらべればまだまだ恵まれた環境。贅沢は言ってられませんね。
さて、こうゆうときこそ良い音楽を聴いて、心だけでも豊かでありたいものです。

今日はイタリア弦楽四重奏団(Quartetto Italiano)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.76 No.3「皇帝」とOp.33 No.2を収めたアルバム。収録は1965年3月、レーベルは懐かしいフランスのAdes。
イタリア四重奏団は終戦の年、1945年イタリアのカプリ島でデビューしたクァルテット。当時は4人の奏者が20代という若さ。1967年から75年にかけて録音されたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集が偉業として広く知られたものとのこと。その後もモーツァルト、シューマン、ブラームス、ヴェーベルンなどの弦楽四重奏曲全集を収録してリリースしてます。惜しくも1980年に解散しています。表記はイタリア語だけですが、なんとオフィシャルと思われるサイトがありますのでリンクを張っておきましょう(英語もあるように見えますが、工事中です)
Quartetto Italianoオフィシャルサイト(イタリア語)
この演奏当時のメンバーは以下のとおり。
ヴァイオリン:パオロ・ボルチャーニ(Paolo Borciani)
ヴァイオリン:エリサ・ペグレッフィ(Elisa Pegreffi)
ヴィオラ:ピエロ・ファルッリ(Piero Farulli)
チェロ:フランコ・ロッシ(Franco Rossi)
ヴィオラとチェロは途中で交代したあとのメンバーです。
私のイタリア四重奏団の印象は流石イタリア人のクァルテットと思わせる流麗さと力感溢れる演奏。モーツァルトの弦楽四重奏曲全集は愛聴盤のひとつです。
1曲目は有名な「皇帝」、この曲の2楽章の変奏の主題に使われたの旋律は「皇帝讃歌」”Gott, erhalte den Kaiser!"(Hob.XXVIa:43)という歌曲。元オーストリア国歌、現ドイツ国歌です。この曲の作曲の経緯は有名ですのでご存知の方も多いと思いますが、いちおういつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」から紹介しておきましょう。
ハイドンは1791年と1794年の2回にわたってロンドンを訪れていますが、イギリス滞在中に英国国歌”Got Save the King”の存在に感銘を受け、母国オーストリアにも国歌があればと考えていたようです。それを知ったヴァン・スヴィーテンが当時のオーストリア首相に話をもちこみ、詩人レオポルド・ハシュカに歌詞をつくらせ、ハイドンが曲を仕上げたのが「皇帝讃歌」。それを皇帝の誕生日である1797年2月12日にオーストリア全土に国歌として発表したもの。ハイドンが国歌を作りたいと思うと、それが本当に国歌になってしまうところが、当時のハイドンの存在の大きさを物語っていますね。
さて、そろそろ演奏のレビューに。まずは「皇帝」から。
1楽章は録音年代が信じられないような鮮明、精緻な弦楽器の力強い響きから入ります。強い部分の鋼のような音色と弱い部分の柔らかい音色の使い分けが見事。フレージングはイタリア四重奏団ならでは流れるようなもの。そしてピタリと息の合ったアンサンブル。録音は若干デッドですが、鮮明さも実体感も十分。スピーカーのまわりに4人の奏者がびしっと並んでいるようなリアルなもの。もちろん時代なりの古さはありますが鮮明さは相当なものです。現代の録音とちがって芯のしっかりした音が逆に迫力を高めているよう。1楽章は挨拶がわりに怒濤の迫力を見せつけます。
2楽章の皇帝讃歌のメロディーは抑えた入り。有名なメロディーをゆったりと抑えて表現。この演奏の白眉はその後の変奏。最初の主題を抑えて入り、変奏はゆったりしたテンポながら自在な弓さばきで変化を楽しみながら表現の幅を広げていくような展開。イタリア四重奏団らしく流麗さも感じさせますが、憂いの表情、ほのかな情感の表現が秀逸。えも言われぬ幸福感。この楽章の最後の音量を思い切り落とした部分に至っては魂だけになったメロディーが自身で曲をすすめていくような不思議な感覚。この楽章は絶品ですね。
3楽章のメヌエットは木質感のつよい弦の音色の美しさが前面に出たもの。たっぷりと溜をとってリラックスした展開。この楽章も流石イタリア四重奏団というべき流麗さにあふれています。旋律が低音域から高音域に音をあげをあげていくところの流れるような見事さは聴き所。
フィナーレは再び1楽章冒頭で聴かれた突き刺さるような鮮明な弦の響きが素晴らしいインパクト。漲る力感、ピタリと息の合ったアンサンブル、すすむにつれてフォーカスがピタリと合い、緊張感に富んだ素晴らしい迫力。最後は空間に楔を打つように鋼のような音で終わります。
いやいや、素晴らしい迫力。生で聴いたら凄いことになっていたでしょう。
つづく2曲目のOp.33 No.2は18年遡って、1781年の作曲。ぐっと素朴な曲調ゆえ、弾く方も力をセーブして弾いているよう。全曲を通してその余裕が演奏の美点と聴きました。こんどは全楽器の緊密なアンサンブルというよりはヴァイオリンの美しいメロディーを中心とした各楽器のサポートというような位置づけで曲が書かれているように聴こえます。2楽章のスケルツォ、3楽章のラルゴ、フィナーレと流れよく進め、各奏者の見事な弓さばきもちりばめられた名演奏者による余裕ある演奏という風情ですね。さいごはさらりと消え入るような演出つきの演奏。
どちらの曲も素晴らしい演奏。もちろん両曲とも[+++++]としました。最近あまり店頭では見かけなくなりました故、見かけたら即ゲットすべき名盤です。ハイドン入門者向けタグも進呈!
帰ってテレビをつけるとやはり震災、原発のニュースが始終ながされてましたね。家族を見つけた方の笑顔と、家族を失い悲しみに暮れる方、やはり家族をうしないながらも見つけてくれたかたに感謝を伝える人と様々な表情。運命によって様々な結果に別れてしまうものなんですね。
今日も茨城などで比較的強い余震が何度かありましたが、いつになったら収束にむかうのでしょうか。早くゆっくり音楽を聴いたり、楽しく飲みにいける普段の生活を取り戻したいものです。
知り合いも含めて被災地の皆さん、がんばってくださいね。
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