慈しみの音楽、ヘルマン・アーベントロートの88番
地震がつづきますね。今日は静岡で強い地震。東京が包囲されてきた感じで不気味です。そんな時こそ音楽で心を癒さなくてはなりません。今日は見た目からそのような印象はないんですが、実は慈しみに溢れた音楽を。

ヘルマン・アーベントロート(Herman Abendroth)指揮でハイドンの交響曲88番、97番を収めたアルバム。今日はその中の88番を取り上げましょう。88番はライプツィヒ放送交響楽団の演奏で1956年ライプツィヒ放送局スタジオでの放送用録音。97番の方は1955年1月20日ベルリン放送交響楽団の演奏で、ベルリン放送局スタジオでの放送用録音。レーベルはBERLIN Classics。このアルバムは廃盤のようなので、同じ演奏が含まれた別仕様のアルバムも紹介しておきましょう。

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88番、97番の演奏は同じもののようですが、それに加えてヘンデルの管弦楽のための二重協奏曲第3番も収められています。こちらのHMV ONLINEのリンクの解説が充実していますのでご覧いただくとよいでしょう。
アーベントロートを取り上げたのは、先日取り上げたケーゲルのアルバムで、ケーゲルの経歴を調べた際、アーベントロートのアシスタントからキャリアをスタートさせたこと、そして1956年、アーベントロートの死去に伴いケーゲルが1978年までライプツィヒ放送交響楽団の首席指揮者となったという話を知って、興味を持ったから。手に入れたのがだいぶ前になりますので印象も薄れかけてたのが正直なところ。ちょっと聴き直してみたところ、ケーゲル最晩年の超自然体の演奏にもつながる、癒しの要素があることが聴き取れました。
アーベントロートの印象はジャケットの写真などを通じてつたわる彼自身の険しい表情や雰囲気から、険しい演奏と思われがちですが、その演奏からは優しさや慈しみを感じるようなところも多い演奏なんですね。
Wikipediaの情報によると、アーベントロートは1883年、ドイツのフランクフルト生まれの指揮者。7歳でヴァイオリンを始めますが、生家が書籍商ということで、書籍商を目指して進学したものの、芸術サークルなどに参加し、ミュンヘン・フィルハーモニーなどでの演奏をするうちに指揮者を志すようになったとのこと。その後ドイツ各地のオケで指揮をして活躍したんですが、1934年からはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団常任指揮者、1949年よりライプツィヒ放送交響楽団首席指揮者、1953年からはベルリン放送交響楽団首席指揮者など、このアルバムのオケを振っていたことになりますね。亡くなったのは1956年とのことで、まさに今日取り上げる88番は亡くなった年の73歳での録音ということになります。
1楽章は岩のように強固な序奏からはじまり、主題に入ると一気にギアチェンジしてトップスピードに。速い部分への鮮烈な切り替えは見事。1楽章はまさにスピーディーな演奏。録音は1956年ですが、放送用ということでモノラルながら非常に良好。暖かみもキレもある良い録音。
この演奏の聴き所は慈しみに溢れた2楽章のラルゴ。何気ない演奏ながら、自然で、デリカシーに富んだフレージング。柔らかな弦の音色で構成される至福のメロディーライン。沸き上がる感興。なんという慈しみ。ところどころフライング気味に次のメロディが顔をだすように弾くのが特徴的なところですね。
3楽章のメヌエットはスマートなフレージング。迫力もあるんですが流麗さもあり、スタイリッシュといってもいい趣深いもの。中間部は逆に良く溜めた小節を効かせたフレーズで対比を鮮明に。ふたたび流麗なメロディーにもどって楽章をまとめます。
フィナーレは軽さもある快速テンポなんですが、ただ速いだけでなく非常に豊かな表情をもっているのがこの演奏の凄いところ。そもそも諧謔性をも感じるメロディーラインの面白さをもっている楽章ですが、その構造とニュアンスを速いテンポで一望のもとにしてしまう見通しの良い演奏。速い速い。最後のクライマックすの立体感の素晴らしさ。畳み掛け度合いも素晴らしい気迫でフィニッシュ。
アーベントロートの交響曲88番は、楽章ごとの構造を鮮明に描き分け、特に速い楽章の演出の見事さが際立つ演奏でした。なぜか全編に漂う慈しみ深い雰囲気は、ヒストリカルな録音に起因するところもあるでしょうが、アーベントロートの演奏の非常に繊細なフレージング、デュナーミクのコントロールによるものだと思います。2楽章の美しさは絶品。そして交響曲としてのまとまりは終楽章の圧倒的な立体感溢れるコントロールによるものですね。もちろん評価は[+++++]としました。手に入れた時より評価を上げました。
いろんな地域で多くの人が災害、原発、家族の安否などの不安を抱えています。音楽が解決にはなりませんが、一瞬心配事を忘れて安らかな気持ちになれるかもしれません。50年以上前に一人の指揮者が亡くなる前に演奏した、渾身の力を振り絞ったハイドンの名曲の貴重な記録。時代を超えて人の心に響く何かを持っている素晴らしい演奏。このようなときにこそ、ひととき音楽に耳を傾けてみるのも良いかもしれませんね。

ヘルマン・アーベントロート(Herman Abendroth)指揮でハイドンの交響曲88番、97番を収めたアルバム。今日はその中の88番を取り上げましょう。88番はライプツィヒ放送交響楽団の演奏で1956年ライプツィヒ放送局スタジオでの放送用録音。97番の方は1955年1月20日ベルリン放送交響楽団の演奏で、ベルリン放送局スタジオでの放送用録音。レーベルはBERLIN Classics。このアルバムは廃盤のようなので、同じ演奏が含まれた別仕様のアルバムも紹介しておきましょう。

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88番、97番の演奏は同じもののようですが、それに加えてヘンデルの管弦楽のための二重協奏曲第3番も収められています。こちらのHMV ONLINEのリンクの解説が充実していますのでご覧いただくとよいでしょう。
アーベントロートを取り上げたのは、先日取り上げたケーゲルのアルバムで、ケーゲルの経歴を調べた際、アーベントロートのアシスタントからキャリアをスタートさせたこと、そして1956年、アーベントロートの死去に伴いケーゲルが1978年までライプツィヒ放送交響楽団の首席指揮者となったという話を知って、興味を持ったから。手に入れたのがだいぶ前になりますので印象も薄れかけてたのが正直なところ。ちょっと聴き直してみたところ、ケーゲル最晩年の超自然体の演奏にもつながる、癒しの要素があることが聴き取れました。
アーベントロートの印象はジャケットの写真などを通じてつたわる彼自身の険しい表情や雰囲気から、険しい演奏と思われがちですが、その演奏からは優しさや慈しみを感じるようなところも多い演奏なんですね。
Wikipediaの情報によると、アーベントロートは1883年、ドイツのフランクフルト生まれの指揮者。7歳でヴァイオリンを始めますが、生家が書籍商ということで、書籍商を目指して進学したものの、芸術サークルなどに参加し、ミュンヘン・フィルハーモニーなどでの演奏をするうちに指揮者を志すようになったとのこと。その後ドイツ各地のオケで指揮をして活躍したんですが、1934年からはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団常任指揮者、1949年よりライプツィヒ放送交響楽団首席指揮者、1953年からはベルリン放送交響楽団首席指揮者など、このアルバムのオケを振っていたことになりますね。亡くなったのは1956年とのことで、まさに今日取り上げる88番は亡くなった年の73歳での録音ということになります。
1楽章は岩のように強固な序奏からはじまり、主題に入ると一気にギアチェンジしてトップスピードに。速い部分への鮮烈な切り替えは見事。1楽章はまさにスピーディーな演奏。録音は1956年ですが、放送用ということでモノラルながら非常に良好。暖かみもキレもある良い録音。
この演奏の聴き所は慈しみに溢れた2楽章のラルゴ。何気ない演奏ながら、自然で、デリカシーに富んだフレージング。柔らかな弦の音色で構成される至福のメロディーライン。沸き上がる感興。なんという慈しみ。ところどころフライング気味に次のメロディが顔をだすように弾くのが特徴的なところですね。
3楽章のメヌエットはスマートなフレージング。迫力もあるんですが流麗さもあり、スタイリッシュといってもいい趣深いもの。中間部は逆に良く溜めた小節を効かせたフレーズで対比を鮮明に。ふたたび流麗なメロディーにもどって楽章をまとめます。
フィナーレは軽さもある快速テンポなんですが、ただ速いだけでなく非常に豊かな表情をもっているのがこの演奏の凄いところ。そもそも諧謔性をも感じるメロディーラインの面白さをもっている楽章ですが、その構造とニュアンスを速いテンポで一望のもとにしてしまう見通しの良い演奏。速い速い。最後のクライマックすの立体感の素晴らしさ。畳み掛け度合いも素晴らしい気迫でフィニッシュ。
アーベントロートの交響曲88番は、楽章ごとの構造を鮮明に描き分け、特に速い楽章の演出の見事さが際立つ演奏でした。なぜか全編に漂う慈しみ深い雰囲気は、ヒストリカルな録音に起因するところもあるでしょうが、アーベントロートの演奏の非常に繊細なフレージング、デュナーミクのコントロールによるものだと思います。2楽章の美しさは絶品。そして交響曲としてのまとまりは終楽章の圧倒的な立体感溢れるコントロールによるものですね。もちろん評価は[+++++]としました。手に入れた時より評価を上げました。
いろんな地域で多くの人が災害、原発、家族の安否などの不安を抱えています。音楽が解決にはなりませんが、一瞬心配事を忘れて安らかな気持ちになれるかもしれません。50年以上前に一人の指揮者が亡くなる前に演奏した、渾身の力を振り絞ったハイドンの名曲の貴重な記録。時代を超えて人の心に響く何かを持っている素晴らしい演奏。このようなときにこそ、ひととき音楽に耳を傾けてみるのも良いかもしれませんね。
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