作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

セバスチャン・テヴィンケル/南西ドイツ室内管の悲しみ

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今日は交響曲のマイナー盤。

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HMV ONLINEicon / amazon

セバスチャン・テヴィンケル(Sebastian Tewinkel)指揮のプフォルツハイム南西ドイツ室内管弦楽団(Südwestdeutsches Kammerorchester Pforzheim)による、シュトルム・ウント・ドラング期の交響曲を集めたアルバム。収録曲目は収録順にモーツァルトの交響曲25番(KV.183)、C. P. E. バッハのハンブルク交響曲(Wq182 Nr.5)、そしてハイドンの交響曲44番「悲しみ」の3曲。アルバムのタイトルも”Sturm und Drang”ということで、この時期の3人の作曲家の交響曲によって時代の空気を再現しようという好企画。レーベルはドイツのebsというレーベル。収録は2002年6月18日から20日、エーシェルブロンという街の祝祭ホールにて。エーシェルブロンはオケのホームタウンであるシュトゥットガルト近郊の街、プフォルツハイムのそばの街です。収録場所はいつもグーグルマップでその時のことを想像しながら確認するんですが、ちょっと楽しい作業です。

指揮者のセバスチャン・テヴィンケルは1971年、ドイツ北部、ドルトムントの近くのウンナ(Unna)生まれの指揮者。ハノーヴァー音楽演劇大学でヴァイオリンと音楽を学び、その後シュトゥットガルト音楽舞台芸術大学でジャンルイジ・ジェルメッティとサー・コリン・デイヴィスに音楽を学んだとのこと。その後ヘルベルト・フォン・カラヤン基金の奨学生となり、ドイツの主要オケなどを中心に世界のオケとも共演。ロシアや日本にも来ているようですね。2002年のシーズンからこのアルバムのオケであるプフォルツハイム南西ドイツ室内管弦楽団の音楽監督になったとのことで、このアルバムは音楽監督への就任記念の録音ともとれますね。

収録曲の作曲年はモーツァルトの25番が1773年10月5日、C. P. E. Bachが1773年、そしてハイドンの悲しみは1772年以前ということで、シュトルム・ウント・ドラングの最盛期に作曲された、そして何れも短調の曲。

冒頭のモーツァルトの25番を聴くと、キレのいい小編成オケによる颯爽とした演奏。ライナーノーツを見ると第一、第二ヴァイオリンがそれぞれ4人ずつ、ヴィオラが3人、チェロが2人、コントラバス1人、オーボエとファゴットが2人ずつ、ホルンが4人とチェンバロという構成。聴き慣れた曲ですがフレーズごとにカッチリアクセントをつけ、一貫して速めのテンポで非常に爽快な演奏。音色と響きという意味ではマッケラスの指揮するスコットランド室内管と似ているでしょうか。

つづくC. P. E. Bachの交響曲も響きの変化に富んだ短調の緊張をはらむ曲。ただ、モーツァルトとハイドン、それもそれぞれの傑作交響曲に挟まれると、音楽の豊かさにおいて相当聴き劣りしてしまうのはやむを得ないところ。

そして、ハイドンの「悲しみ」。1楽章は鮮度溢れるオケの響きの魅力がいきなり炸裂。速めのテンポでキビキビ進め、フレーズの間を時たま長くとってメリハリ感も満点。対向配置で左と右からヴァイオリンのメロディーが畳み掛けるように襲いかかるスリリングな展開。各楽器の精度は程々故ぴしっと線がそろっている感じではないんですが、良い意味で粗さがライヴ感溢れる迫力にもつながっており、むしろ好印象です。弦は素晴らしいノリ。ホルンのテンポが若干甘いところがちょっと気になるところ。
2楽章のメヌエット。この楽章も少し速めのテンポでキビキビした弦の魅力を十分に生かしたもの。1楽章のメリハリからするともう少し緩急の幅を持たせてもいいように思います。勢いで一気に聴かせてしまうメヌエット。
3楽章のアダージョは、抑えた表現ではなく、どちらかというと鳴らして聴かせる表現。やはりこのアダージョは名曲ですね。メロディーラインの美しさ、影のある旋律、どことなく郷愁を感じる素朴なメロディー。シュトルム・ウント・ドラング期のハイドンの傑作交響曲であることを強く感じる楽章。いつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」には1809年のベルリンで行われたハイドンの追悼式にこの楽章が演奏されたとのことで、それも頷ける名曲。
フィナーレは冒頭から素晴らしい力感とキレ。テヴィンケルがぐいぐい煽っているのがよくわかります。この組み合わせの速い楽章の躍動感と生気はなかなか聴き応えあります。オケ全員が髪を振り乱して弾いている様子が伝わるような演奏。

シュトルム・ウント・ドラング期の3人の作曲家の名曲を集めたこのアルバム。企画の視点は非常にいいですね。ハイドンの演奏も生気溢れる良い演奏ですが、精度の面と、抑えた表現による表現の幅が広がればさらに良い評価と出来ると思います。評価は[++++]とします。
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