作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ブリュッヘンの90番、91番、オックスフォード

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今日は3月最初のアルバム。今日はブリュッヘンのハイドンです。

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フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen)指揮の18世紀オーケストラ(Orchestra of The 18th Century)の演奏で、ハイドンの交響曲90番、91番、92番「オックスフォード」の3曲を収めたアルバム。すべて1994年から95年にかけてのライヴ収録。収録日とロケーションは曲ごとのレビューと一緒に記載します。

このアルバムを取り上げたのは、アルバム自体を最近手に入れたため。ブリュッヘンのハイドンの交響曲はほとんど所有していたのですが、このアルバムに収められた91番、92番のみ未入手でした。90番は他の曲とセットでリリースされたものを入手していました。ブリュッヘンのハイドンはひところ全録音を収めたボックスセットが販売されていたんですが、あと2曲のところだったので、買わずにじっと我慢しているうちにPHILIPSレーベル自体がDECCAに統合となり、ブリュッヘンのボックスもいつしかあまり見ないようになってしまい、どうしたものかと思っていたところ、ディスクユニオンでようやくこのアルバムを見かけたもの。ブリュッヘンのハイドンのコンプリート、だいぶかかりました(笑)

最近ネット上でレビューなどされていますが、ブリュッヘンは先月新日本フィルを振ってベートーヴェンの交響曲やバッハのロ短調ミサなどを演奏して話題になったよう。まったく無防備でしたので、コンサート情報も知らず、従って公演にも顔を出しておりません。演奏のようすなどは稲毛海岸さんのブログにくわしくありますのでそちらをご参照ください。

音楽の都:ブリュッヘン/新日本フィル(2011/2/17)

リンクした記事の他にもコンサートのレビューが豊富でとても読み応えがあります!

さて、ブリュッヘンのハイドンですが、当ブログでは3度に渡って取り上げています。

2010/11/01 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘンの88番、89番、協奏交響曲
2010/10/20 : ハイドン–管弦楽曲 : ブリュッヘンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉
2010/04/04 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘンのザロモンセット

ブリュッヘンのハイドンは古楽器の中では異色ともいえる分厚い迫力のある響きで描くスケール感と古楽器の雅やかさの相俟った素晴らしいものですが、曲によって出来にムラがあるのも正直なところ。最近聴いた中では上記記事でふれた88番が素晴らしい出来だったのが記憶に新しいところ。ブリュッヘンのハイドンの残された未入手盤、今日は時間もあるため90番から92番まで3曲ともレビューすることとしましょう。

いつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」によれば、この3曲は作曲の経緯から3曲セットのもので、フランスのドーニ伯爵からの依頼により作曲されたもの。3曲とも自筆譜が存在し、ドーニ家の蔵書印が押されているとのこと。作曲は1788年~89年にかけて。ハイドンはその後1791年にロンドンを訪問した際、第1回のザロモンコンサートで演奏されたのが92番「オックスフォード」で、この曲の呼び名は1791年7月にオックスフォード大学から名誉音楽博士を授与された際の記念音楽会で演奏されたことに因んだものとのこと。

まずは90番。(1994年5月オランダ、ユトレヒトのVredenburgでのライヴ)

このアルバムでもっとも鮮明な録音。冒頭の序奏からブリュッヘン特有の図太く邪気に溢れた古楽器の響きが殺気に近い緊張感。ちょっとくどさを感じる寸前までアクセントを強調して、じっくりしたテンポでぐいぐい進めます。ブリュッヘンのハイドンの最も素晴らしい面がでた演奏。この迫力は古楽器では誰も真似ができないでしょう。木管楽器の柔らかい音色と畳み掛ける弦の対比が素晴らしい効果。リズムは朴訥に近いんですが、それが迫力をさらに増しているといったところでしょう。1楽章から怒濤の迫力!
2楽章はアンダンテ。ブリュッヘンのゆったりした楽章はあっさり気味に演奏することが多いんですが、この楽章も練ることもなくあえてさくさく進め、途中の盛り上がりの迫力で聴かせるパターン。途中楔が打たれるようにはいるアクセントの迫力は1楽章に続き流石のもの。途中顔をだす木管やホルンの響きは極上ゆえ、ざらついた弦とのコントラストは最高。
3楽章のメヌエットは遅めのテンポでじっくりとしたメヌエット。中間部のオーボエがこれまた美しい音色で彩りを加えます。
フィナーレはブリュッヘンの真骨頂、素晴らしいキレで分厚いオケをコントロール。この終楽章は見事の一言。以前ラトルとベルリンフィルのアルバムでも触れましたが、この楽章は終わったと見せかけて繰り返しが始まるような曲。ただし、ラトルがそれを演出として使っているのに対し、ブリュッヘンはああくまでも正統派で曲自体の魅力をフルに表現。素晴らしい演奏ですね。

続いて91番。(1995年5月オランダ、エンスヘーデの音楽センターでのライヴ)

ロケーションが変わって、ドイツ国境に近いエンスヘーデでのライヴ。前曲のキレまくりの演奏とくらべると、曲調も手伝って若干大人しめの演奏。録音は前曲よりも若干デッドでちょっと潤いに欠ける印象。会場ノイズの除去の処理の影響でしょうか。演奏自体は迫力に溢れたものですが、キレたところと抑えたところの対比が若干劣るせいか、フレージングの締まりが弱くなっている印象もあります。あくまで前曲比で、それなりに良い演奏である前提です。
2楽章のアンダンテは前曲同様あっさりした入りで途中に図太い楔をあしらった構成。ただしフレージングのきれがちょっと落ちて、つなぐ部分を引きずるようなところがあり、前曲ほどの迫力には至りません。
3楽章のメヌエット、今度は普通のテンポ。前半後半の舞曲の迫力はブリュッヘンならでは。この楽章は中間部の柔らかい表現がなかなか良いです。
フィナーレはやはりブリュッヘンの特徴がよく出たもの。細かいアクセントやリズムとコントラストの変化をちりばめながら、基本的にはオケの迫力溢れる音色で聴かせるもの。

最後は92番「オックスフォード」。(1995年1月オランダ、ユトレヒトのVredenburgでのライヴ)

ふたたびユトレヒトでのライヴ。こちらも残念ながら90番の素晴らしいキレの音響とは少し差があります。90番と比べて低音よりの録音。全体的に流れに乗った演奏。90番が明確なアクセントと間を最大限に生かしてすばらしい迫力を生んでいたのに対し、オックスフォードの方はある意味普通の演奏に近く、90番ほどテンポを落とさずブリュッヘンにしてはメロディーが流れています。
第2楽章のアダージョは基本的にあっさりした感じのものながら、これまでよりもデュナーミクの幅を大きめにとり、丹念な表情づけを意識しているよう。つづく3楽章のメヌエットも比較的あっさりした展開。
最後のフィナーレは速めのテンポで抑え気味に有名なメロディーから入りますが、すぐにブリュッヘンらしく分厚いオケの響きで一気に迫力を増します。この曲は明確に終楽章の盛り上がりに焦点を合わせた演奏。終楽章に入り一気に気合いが漲ります。第2、第3楽章が比較的あっさりしていたのは、ここにポイントを合わせていたからでしょう。速めのテンポのまままくしたてるように進め、フィナーレのクライマックスまで持っていきます。この楽章の迫力は流石ブリュッヘンというところでしょう。

評価は、90番が[+++++]、91番とオックスフォードが[++++]ということとします。このアルバムの聴き所はやはり抜群の出来の90番。その直後におかれた91番、オックスフォードも良い演奏なんですが、90番のすばらしさとはやはり差がつくところ。

久々にブリュッヘンのハイドンを堪能です。今度来日するときには是非生を聴いてみたいと思います。
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2 Comments

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稲毛海岸

御紹介いただき感謝いたします

私のブログを御紹介いただき、ありがとうございました。
ハイドンのCDを聴きたくなったときに、私が「最初の選択肢」として取り出すのがブリュッヘンのCDなので、このレビューも興味深く拝見しました。
おっしゃるように「異色ともいえる分厚い迫力のある響き」が、私も大好きです。

  • 2011/03/02 (Wed) 22:04
  • REPLY

Daisy

Re: 御紹介いただき感謝いたします

稲毛海岸さん、こんばんは。
私もブリュッヘンのロ短調ミサ聴きたかったですね。やはり実際に聴くのとCDでは相当違います。ブリュッヘンの度迫力の音響は生でこそ楽しめるのではないかと思ってます。私はブリュッヘンは生できいたことがないので、元気なうちに一度聴いておきたいですね。今後ともよろしくお願いいたします。

  • 2011/03/02 (Wed) 22:22
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