作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ホルツマイア/トリオ・ヴァンダラーのスコットランド歌曲

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先日素晴らしいピアノ三重奏曲を聴かせたトリオ・ヴァンダラー。別のアルバムが手に入りました。

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HMV ONLINEicon / amazon

ヴォルフガング・ホルツマイア(Wolfgang Holzmair)のバリトンとトリオ・ヴァンダラー(Trio Wanderer)の演奏による、歌曲集。ベートーヴェン12曲、プレイエル3曲、ハイドン11曲の歌曲を収めたアルバム。ハイドンはスコットランド歌曲集からの選曲です。収録は2007年12月18~21日、これまたスイス、シオンのティボール・ヴァルガ・スタジオにて。レーベルはおそらくこのアルバムで初めて目にするcypresというベルギーのブリュッセルに本拠を置く会社。ただし輸入元がマーキュリーですので、丁寧な解説がついて、いつも通りいい仕上がりです。

トリオ・ヴァンダラーのことは前記事を参照いただくことにして、今日は歌手のヴォルフガング・ホルツマイアについて触れておきましょう。当初トリオ・ワンダラーと表記していましたが、濁るようなので過去の記事もトリオ・ヴァンダラーと修正しました。

ハイドン音盤倉庫:トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集

ヴォルフガング・ホルツマイアはオーストリア西部、ザルツブルクの近くのフェックラブルック郡の生まれ。ウィーン音楽舞台芸術アカデミーで声楽を学び、リートを中心に活動。ピアニストのイモージェン・クーパーと組んでリサイタルを開いたり、オペラでも活躍しているとのこと。

マーキュリーの輸入したアルバムにつけられる帯のキャッチは、いつもながら気が利いてます。ちょっと引用してみましょう。

「(前略)ヨーロッパ大陸から様々な音楽家たちが押し寄せた英国には、音楽都市ウィーンからも多くの大作曲家たちが立ち寄りました。ベートーヴェン、ハイドン、プレイエル・・・それぞれの事情で英国と関係をもった彼ら三人のオーストリア人は、皆一様に英国各地で歌い継がれた民謡を愛し、祖国で鍛えられた室内楽書法を駆使して、ピアノ三重奏という豊かな伴奏をともなう民謡編曲を多数残しました。」

まさに、このアルバムの狙いを見事にとらえたキャッチですね。続きがまたすばらしい文章。

「彼ら随一の室内楽にも劣らない充実度満点の響きが。民謡独特の素朴なメロディ、胸打つハーモニーと重なり合うときの至福・・・ヨーロッパ最前線で活躍する多忙なヴェテラン集団トリオ・ヴァンダラーは、そうした濃やかな音響世界を贅沢すぎるほどの的確さで見事「いま」を息づかせていくのです。」

下手にブログで解説するよりもよほど的を射た素晴らしい文章ですね。アルバム自体の企画も素晴らしい上にこういった丁寧な輸入者の仕事が加わり、我が家に素晴らしいハイドンやベートヴェンの歌曲が届くわけです。

今日はハイドンの曲を取り上げます。トラック番号と曲名は次のとおり。

16「すてきな彼女、とても優しく」Hob.XXXIa:59
17「奴隷の嘆き」Hob.XXXIa:137
18「ダンカン・グレイ」Hob.XXXIa:34
19「グリーンスリーヴス」Hob.XXXIa:112
20「クッションを作れるか」Hob.XXXIa:48
21「スコットランドの青い瞳」Hob. XXXIa:176
22「ビールのつまみにバノックを」Hob.XXXIa:171
23「キリクランキー」Hob. XXXIa:169
24「マギー・ロウダー」Hob.XXXIa:35bis
25「父を見なかったかい」Hob.XXXIa:5bis
26「好きなあの娘はまだ小娘」Hob.XXXIa:-

全部で11曲。すべてBrilliant Classicsのスコットランド歌曲集に含まれる曲ですね。ほとんどが1800年以降に民謡を編曲したもの。ハイドンが最晩年にたどりついた純粋無垢な世界です。シュトルム・ウント・ドラング期のほの暗さとはまた異なる、郷愁を感じる曲やあまりにも純粋なさっぱりと明るさを感じる曲が続き、ハイドンの歌曲のエッセンスを楽しめる選曲。

このアルバムはこうした企画の素晴らしさ以上に、その演奏の仕上がりが絶品。上にリンクを張ったピアノ三重奏曲でトリオ・ヴァンダラーが素晴らしい腕前なのは把握してましたが、バリトンのホルツマイアもリート向きの素晴らしい声。声量はほどほどながら精妙なリズム感、リラックスしたフレージング、端正な声色。シンプルな曲だけにごまかしは一切効かないわけで、力量がきっちり発揮された演奏ということができるでしょう。

演奏はピアノが主導権を握りますが、ピアノ三重奏曲の録音とは異なりバランスがピアノを重視し過ぎることはなく適度な音像。録音自体は新しいもので、収録も響きのよいティヴォール・ヴァルガ・スタジオゆえ音の鮮度は抜群。リヴィングルームにバリトンとピアノトリオが出現したかのようなリアリティ。

このアルバムの歌曲はBrilliant Classicsのスコットランド歌曲集と並んで、歌曲の素晴らしさをつたえる名盤。Brilliant Classicsの方が明るさとノリの良さを感じますが、演奏の精度と律儀さはこちらの方が上と聴きました。よって全曲[+++++]とします。

歌曲の新たな名盤ということで、好きな方は必聴のアルバムですね。おそらくハイドンの時代はこう言った曲の演奏を、我々の時代にダイアナ・クラールを聴くように聴いていたんじゃないかと想像しています。これはこれで深い感動をもたらす音楽。時代を超えて人の声の魅力は尽きないものですね。
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