作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンタイ/クヴェール/ヴェルツィアーによるピアノ三重奏曲集

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昨日聴いたフランス人トリオによる現代楽器のピアノトリオがとっても良かったので、今日は同じフランスものの古楽器によるピアノ三重奏曲の名演奏を。

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HMV ONLINEicon / amazon

昨日はトリオ・ヴァンダラーのによるピアノ三重奏曲の素晴らしい演奏に酔いしれました。ハイドンのピアノ三重奏曲は室内楽を聴く歓びに溢れていて、いいですね。今日は同じフランス系の奏者の古楽器による名演奏を。このアルバムはおそらく10年くらい前に手に入れていましたが、未整理盤の山のなかに死蔵していたもの(笑)。買った時は何度か聴いた覚えがありますが、当時はLS3/5aというコンパクトモニターをメインスピーカーとしていたせいか、古楽器系の演奏がクッキリしすぎてあまり好みの演奏という印象を持たなかった印象があります。最近整理のために聴き返して、その素晴らしさに最近気づいたもの。最近のメインスピーカーはKEFのiQ-9というものですが、ゆったり感と定位感もそれなりで、どんな音楽も楽しめるので気に入ってます。聴く音楽も再生環境の影響をシビアに受けるということでしょう。

ちなみにオーディオ系の話題はあんまり当ブログでは取り上げていませんが、自宅の環境はリンクの記事のとおり。オーディオ好きな方からすると、えらくしょぼいシステムですが、現システムに変わってから音に不満をもつことがなくなり、ほとんどシステムはいじってません。昔は電源コードやボード、ラックなどの調整をずいぶんしてみたりして音の変化に一喜一憂したものですが、調整がぴたりとハマったということでしょう。

ハイドン音盤倉庫:オーディオ環境

脱線が長くなりましたので、いつものようにアルバムの紹介に戻りましょう。

収録曲目は収録順に、ハイドンのピアノ三重奏曲40番(Hob.XV:26)、37番(XV:23)、36番(XV:22)の3曲。奏者はフォルテピアノがジェローム・アンタイ(Jérôme Hantaï)、ヴァイオリンがフィリップ・クヴェール(Philippe Couvert)、チェロがアリックス・ヴェルツィアー(Alix Verxier)の3人のトリオ。特に三重奏団としての名前を付けている訳ではないようですね。収録は1999年、スイスのモントルー東方の街、シオンのティボール・ヴァルガ・スタジオでのセッション録音。ここは先日取り上げた、アンヌ・ケフェレックのピアノソナタ集の録音に使われた場所。ライナーノーツにはシオンをフランスとの表記がありますが、地図上は明らかにスイスです。どうなっているんでしょう。

ジェローム・アンタイは1961年パリ生まれのフォルテピアノ奏者。私より一つ年上になります。おそらくそれほど有名な人ではないのではないかと思います。フォルテピアノの他にヴィオラ・ダ・ガンバを弾くよう。他の2人も同様、著名な演奏家というレッテルが貼られている人ではありませが、このアルバムの演奏を聴くと、その質の高さはピアノ三重奏曲のこれまでリリースされているアルバムに勝るとも劣らない素晴らしい出来。

このアルバムに収められているピアノ三重奏曲は1794年、95年の作曲。このころハイドンは2回目のロンドン旅行に出かけ、交響曲の100番から104番が作曲された、ハイドンの創作の絶頂期のもの。60歳を超えてハイドンが最も充実していた頃ですね。どの曲もどおりで緊密を極めた素晴らしい曲な訳です。

1曲目は40番(XV:26)。嬰ヘ短調という特殊な調をとる作品。ロンドン旅行の最中に作曲されたとのことで最も悲劇的な性格が強い曲で、2楽章は交響曲102番のものもの同じ曲ですがどちらが原曲かは専門家の間でも意見が分かれるとのこと。

1楽章は短調の険しい表情から始まりますがすぐに明るさも垣間見える曲調。昨日のトリオ・ヴァンダラーの演奏とは異なり、フォルテピアノ、ヴァイオリン、チェロのバランスが適度にそろって対等な関係。フォルテピアノはピアノに近い厚みを感じさせるリアリティ。ヴァイオリンとチェロもフォルテピアノとの一体感溢れる演奏。テンポは中庸なんですが、演奏の迫力は現代楽器の演奏を上回る素晴らしいエネルギー感。抜群の生気。やはりフォルテピアノのダイナミクスの表現の幅が大きいので、1楽章は素晴らしい迫力。2楽章は聴き慣れた102番の2楽章のメロディーの心地良い響き。ヴァイオリンの奏でる旋律の美しさがフォルテピアノとチェロの織りなす伴奏から浮かび上がる感じが見事な展開ですね。3楽章は再び短調による険しい表情に戻ります。3台の楽器の息もぴったり合って、ハイドンの素晴らしい音楽を弾く歓びに溢れた演奏。古楽器の演奏にありがちなカッチリとした演奏というよりはむしろ現代楽器による演奏に近い自由さを感じる演奏ですね。テンポも強弱も適度にメリハリをつけているため、表情は非常に豊かな演奏です。最後の一音まで緊張感が漲ります。

2曲目は37番(XV:23)。この曲もニ短調と短調作品ですが、短調によるのは1楽章の冒頭のみ。

1楽章は前曲に増して迫力を感じさせる曲調。楽章が進むに連れてフォルティッシモの波が次々と押しよ寄せる素晴らしい迫力。たった3台の楽器によるアンサンブルというのが信じられない充実した響きを感じる楽章。1楽章の終わりに至るまでの展開は流石最盛期のハイドンの筆によるものと納得せざるを得ない、緻密な構成。こればかりは聴いていただかないとわからないでしょう。2楽章は静寂の表現が美しい楽章。冒頭からフォルテピアノの繊細な響きが絶妙な効果を生んでいます。3楽章は楽章を通して弾むリズムにのって快速テンポのフォルテピアノ、ヴァイオリン、チェロの掛け合いを楽しめます。

最後は36番(XV:22)。30分近い大曲。1楽章だけで13分あります。

1楽章はこのアルバムで初めて長調で始まります。この曲は交響曲にも負けないような充実した構成。1楽章はソナタ形式で現れるメロディーが豊かに展開して壮大な構成に。演奏の善し悪しは既にまったく意識からなくなっています。もちろん演奏自体は素晴らしいものですが、自然さと生気にあふれる展開は曲自体への集中を促すほどの究極の洗練を見せているというレベルです。2楽章のポコ・アダージョはゆったりとしたテンポで刻まれる美しいメロディーを楽しむ楽章。フォルテピアノの雅な音と弦の静かなアンサンブル。このアルバムでもっとももくつろいだ楽章です。3楽章は舞曲風のメロディーが特徴的。生気ばかりではなく全体を見通した余裕のある演奏はこのアルバムに一貫した特徴。フォルテピアノの刻む早めのリズムが心地よく響きます。ヴァイオリンの高音の響きの美しいこと。最後は非常に抑えてフィニッシュ。

3曲ともに非常に充実した演奏。昨日のトリオ・ヴァンダラーの演奏に引けを取らない素晴らしい演奏。もちろん3曲とも[+++++]の最高評価。古楽器によるハイドンのピアノ三重奏曲のこちらも模範的名演。

当ブログでも室内楽を取り上げる量がまだまだ少ないのでこれからは少しずつ増やしていきたいと思います。交響曲やオラトリオなどの大作と異なり地味には違いありませんが、最近は室内楽の方が聴いていてしっくりするようになりました。要は歳をとったのだと思います(笑)

明日からまた仕事が忙しそうですので、毎日の更新は難しいかもしれません。無理をしないようにのんびりやっていきますのでよろしくお願いします。
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