作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マルタン・ジュステルのオルガン曲集

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昨日カラヤンのロンドンという超メジャー盤を取り上げたので、今日はマイナー盤です。

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マルタン・ジュステル(Martin Gester)のオルガン、指揮でハイドンのオルガンの入る曲を集めたアルバム。収録順に、サルヴェ・レジーナ(XXIIIb:2)、ピアノ(オルガン)ソナタ(XVI:37)、オルガン協奏曲(XVIII:7)、音楽時計のための曲5曲、オルガン協奏曲(XVIII:8)。オケはル・パルルマン・ドゥ・ムジーク(Le Parlement de Musique)、収録は1992年9月、フランス北部のランス近郊の街、フェール=アン=タルドゥノワの教会(Eglise Saint-Mâcre)で。レーベルはフランスのOpus111。ジャケットの周りをレーベル名で囲うデザインは古くはEMIフランスのPATHE MARCONIのLPでも特徴的でしたが、フランス好みなんでしょうか。残念ながらこのアルバムは廃盤のようです。

マルタン・ジュステルも、オケのル・パルルマン・ドゥ・ムジークこのアルバムではじめて聴きます。マルタン・ジュステルはフランス生まれの指揮者、オルガン奏者、チェンバロ/フォルテピアノ奏者。ストラスブール国立音楽院で音楽を学び、1990年にこのアルバムで演奏しているル・パルルマン・ドゥ・ムジークを設立して、17世紀、18世紀の音楽を得意としているよう。

両者のサイトがありましたのでリンクを張っておきますが残念ながらフランス語のみ。

Martin Gesterのオフィシャルサイト(仏語)
Le Parlement de Musique - Martin Gesterのオフィシャルサイト(仏語)

このアルバムを取り上げたのは、オルガンを含むハイドンの曲の良い演奏だからということではなく、2曲目におかれたピアノソナタ(XVI:37)のオルガンによる精妙な響きの面白さと、珍しい音楽時計のための曲が含まれているから。何れも非常に珍しいものです。

今日は時間があるので、このアルバムの全曲を紹介しましょう。

まずは、サルヴェ・レジーナ。ハイドンはサルヴェ・レジーナを3曲作曲していて、最初は1756年と非常に早い時期のもの(XXIIIb:1)。1756年と言えばハイドンがエステルハージ家の副楽長に就任する5年も前で24歳の頃、そしてモーツァルトが生まれた年でもあります。2曲目は1771年のもの(XXIIIb:2)。ハイドンがエステルハージ家の楽長に就任した5年後。まさにシュトルム・ウント・ドラング期の最盛期で同年に名曲交響曲44番「悲しみ」が作曲されています。そしてその2年後の1773年の1楽章のもの(XXIIIb:4)。このアルバムに含まれるのは2番目のものです。

演奏はソプラノ、アルト、テノール、バスの独唱とヴァイオリン2人、とヴィオラ、チェロ、ヴィオローネ各1人、そしてオルガンという小編成での演奏。冒頭のオルガンの心地よい音色と室内楽のような古楽器の弦の張りつめた木質系の音色の織りなす雅なアンサンブル。ゆったりとしたというより一歩一歩踏みしめるようなテンポで入ります。声も合唱とは異なり一人一人の声がクッキリわかるオペラの重唱部分のような趣。合唱の厚みのある声の魅力ではなく一人一人のソリストの声の美しさを楽しめる声部。この時期のハイドンの曲に特徴的なうら悲しいメロディーを歌い上げていきます。編成からいってもダイナミクスよりも精妙なアンサンブルの魅力を楽しむべき演奏。オルガンの響きが宗教曲としての雰囲気を盛り上げます。テンポは一貫して遅めで演奏の精度も高く、この曲の別の一面を聴かせてくれるような演奏ですね。音だけ聴くとハイドンよりだいぶさかのぼった時代の音楽に聴こえます。実際の音量バランスはもう少しオルガンが目立つのでしょうが、録音だけに巧くまとめています。

つづいて注目のオルガンソロによるハイドンのピアノソナタXVI:37。この曲は先月ハスキルの名演奏を取り上げたばかり。ピアノの演奏でも2楽章の深い情感が非常に印象に残る名曲ですね。これをオルガンで弾くとどのような印象に変わるのかと思って聴くと、まるで最初からオルガンのために作曲されたようなハマり具合。
1楽章はキリッとした音調。いろいろな設定でオルガンの音色をコントロールできるのでしょうが、あまりオルガンの仕組みに詳しくありませんのでよくわかりません。こちらもバッハの時代にさかのぼったような響きでハイドンのメロディーが蘇ります。教会中に響き渡るオルガンの素晴らしい存在感。こちらも一定のテンポで堂々たる演奏。響きのカオスに襲われそうです。
2楽章は一転、非常にソフトな音色に設定され、静謐な音響。この音色で静かに始まる2楽章の情感深いメロディーはぴたりと決まって素晴らしい詩情。この曲はオルガンで弾くのがオリジナルではないかと思わせる説得力があります。オルガンの美しい音色に思わすハイドンの時代へトリップしたような気分に。
3楽章はふたたびキリッとした音調に戻り、ハイドンの特徴的なメロディーを透明感溢れる高音で、そして左手のアクセントはオルガンの地響きのような分厚い迫力音塊で表現してピアノとは全く異なる印象を浮かび上がらせます。このアルバムに含まれるピアノソナタはこの曲のみなんですが、抜群の選曲ですね。もしかしたら他の曲もオルガンによる演奏で全く新たな表情を魅せるんでしょうか。XVI:20の2楽章なんかもオルガンでの演奏を聴いてみたいものです。興味は尽きません。

評価はサルヴェ・レジーナは[++++]、ピアノソナタは[+++++]としておきましょう。この後もきちんと紹介すべき素晴らしい演奏故、ここで一旦記事をまとめます。夜にでも続きをアップします。

雪の降る中、ちょいと仕事に出かけます。
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