作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

クリスチャン・ヤルヴィの86番

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今日はハイドンのパリ交響曲集のおすすめを。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

クリスチャン・ヤルヴィ(Kristjan Järvi)指揮のニーダーエステライヒ・トンキュンストラー管弦楽団の演奏で、ハイドンのパリセットの6曲を収めたアルバム。録音は2006年から2007年まで、セッション録音とライヴ録音を組み合わせたもののようですが、収録はウィーンのムジークフェライン。レーベルは懐かしいPREISER RECORDS。このレーベルのヒストリカルなアルバムは結構所有していますが、最近の録音はほとんど記憶にありません。今日はその中から好きな86番を取り上げます。86番の録音は2007年5月16日、19日、21日。

クリスチャン・ヤルヴィはご想像のとおり、ネーメ・ヤルヴィの息子で、今をときめくパーヴォ・ヤルヴィの弟という名門一家の出身。1972年エストニアのタリン生まれということで今年38歳ですので、指揮者としてはまだまだ若いですね。音楽はニューヨークで学び、1998年から2000年までロサンジェルス・フィルハーモニーで同じ北欧出身のエサ=ペッカ・サロネンのもとで助手を務めるなどして経験を磨いたよう。2004年からこのアルバムの演奏を担当するニーダーエステライヒ・トンキュンストラー管弦楽団の首席指揮者と音楽監督を務めています。

このアルバムを取り上げたのは、ひとえにその演奏の素晴らしさから。私はこのアルバムでクリスチャン・ヤルヴィをはじめて聴いたんですが、最近聴いたパリセットの演奏の中でもピカイチの出来。いまパリセットの現代楽器によるおすすめ盤と聞かれたら、迷わず本盤をお薦めします。クリスチャン・ヤルヴィの他のアルバムは未聴ですが、兄のパーヴォも弟のクリスチャンも素晴らしい才能。父のネーメ・ヤルヴィはシベリウスの交響曲など何枚か聴きましたが、ちょっと大味さがある演奏でしたが、息子二人は何と緻密な音楽を奏でることでしょう。素晴らしい才能の持ち主であることは疑いありません。

さて、今日取り上げる86番。これまでは、シューリヒト、クルト・ザンデルリンク、ブルーノ・ヴァイルなどが好きな演奏でしたが、そのいずれとも異なる演奏。

1楽章は速めのテンポによる瑞々しいオケの響き。ノンヴィブラートらしい透明感のある響きです。序奏が終わっていきなり素晴らしい推進力のメロディーに移ります。フレーズごとにアクセントをしっかりつけているんですが、速めのテンポが手伝って怒濤の推進力。ハイドンの交響曲を聴く快感に溢れています。よく聴くとオケの精度は抜群という訳ではないんですが、メロディーのコントロールのセンスが良いせいで非常に緻密な音楽。この1楽章は見事。兄のパーヴォの引き締まったオケよりもすこし余裕があるぶんハイドンに合っているだと思います。オケの響きはさすがムジークフェライン、自然な響きと余韻が抜群の美しさ。特に残響が多い録音ではなく鮮明さもあるんですが、交響曲を楽しむにはベストにちかい録音。1楽章のフィナーレで既に素晴らしい手応え。

2楽章も基本的に同じ路線ですが、少し速めのテンポと抜群のリズム感、そしてコミカルな部分の効果的な休符の扱いなどが相俟って、ハイドンの曲の面白さが際立つ演奏。かなり明確な表情付けをしていますが、不思議とくどくなく、自然さすら感じさせるあたりはセンス以外の何者でもないでしょう。どのフレーズも新鮮に響くのは、慣習にとらわれず音符を再構成して自身の音楽を作っているからでしょう。

3楽章は前ぶれなくいきなり素晴らしい推進力で、平板にちかいような均質な響きを意図的に作っているようです。この楽章はぐいぐい進めることに集中しているようで表情の変化は、途中のゆったりとした部分以外はほとんどつけずに進めます。

フィナーレは予想通り快速テンポでめくるめくメロディーをまくしたてていきます。このアルバムに共通する素晴らしい感興が最も良くでた楽章。この終楽章の複雑なメロディを巧みにコントロールして、曲全体の構成感をカチッと出してくるあたり、並の指揮者ではありませんね。ダイナミクスのコントロール、リズムのコントロール、そしてオケのバランス、どれをとっても破綻なくしかも素晴らしい盛り上がり。これは素晴らしいフィナーレ。ためもアクセントもきっちりした素晴らしい演奏。

86番の素晴らしさはほれぼれするほど。他の曲も同様のすばらしさです。この曲は文句なしに[+++++]です。ハイドンの交響曲が好きな方には必聴のおすすめ盤。久々に「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。
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