作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ペーター・レーゼルのピアノ協奏曲

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今日はペーター・レーゼルの演奏を。

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HMV ONLINEicon

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)のピアノ、ギュンター・ヘルビッヒ(Günter Herbig)指揮のベルリン交響楽団の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲2曲(XVIII:11、XVIII:4)。上のアルバムはHMV ONLINE「レーゼルの芸術 ピアノ協奏曲編」とのタイトル通り、レーゼルの演奏したピアノ協奏曲をCD10枚にまとめたもの。この4枚目がハイドンのピアノ協奏曲になってます。10枚セットの収録曲目は上のHMV ONLINEのリンクをご覧ください。

ペーター・レーゼルは1945年、ということは終戦の年、旧東ドイツのドレスデン生まれ。音楽を学んだのは留学したモスクワ音楽院。その後、チャイコフスキー国際コンクール、モントリオール国際ピアノコンクールなどに入賞して国際的な活動に。現在はドレスデンに在住し、母校のドレスデン音楽大学で教えているそうです。日本にも最近来ているようで、2007年4月に日本では30年振りとなるコンサートを紀尾井ホールで開いたようでね。HMV ONLINEにも30アイテムがヒットしますので、人気もまだまだある人。

このハイドンの録音は1979年から80年、ベルリンのイエスキリスト教会でのセッション録音。レーゼル30歳代の録音ですね。

レーゼル、私ははじめて聞く人。いつもコメントをいただくyoshimiさんのブログで、先日ハイドンの協奏曲を取り上げられ、非常に評価が高いので気になってHMVに注文したという次第です。以前も紹介しましたが、yoshimiさんのブログの記事はこちら。トラックバックが出来ないようなので、リンクだけで失礼。

気ままな生活:ハイドン/ピアノ協奏曲 (ミケランジェリ、ピノック、フー・ツォン、レーゼル)

さて、楽しみにしていたアルバム。出来はどうでしょう。

まずは有名なXVIII:11から。

まず圧倒されるのがヘルビッヒのコントロールするベルリン交響楽団の爽やかにリズムのエッジをしっかり出した几帳面なオケの響き。テンポは中庸ながらキビキビした感じもほんのり感じさせつつもベーシックな演奏。デュナーミクの幅も大きくメリハリも適度にあって協奏曲のサポートとしては理想的なものでしょう。録音はレンジの狭さから多少古さを感じさせるものの、実体感重視で問題ありません。レーゼルのピアノは気負いなく、音符に忠実に弾いていく質実剛健なもの。ただ音符に忠実というよりは、右手の音階にうっすらただよう詩的な感じが華やいだ印象も醸し出しており、yoshimiさんの言う「スミレのように可憐で優しく微笑みかけてくるよう」な印象を残しているんだと思います。ピアノ音は、確かににじみのないかちっとしたもの。いちばん気に入ったのが溜めがなく直裁に弾き進めていくところ。オケとの一体感も見事。かなり合わせているんでしょう。1楽章は落ち着いた弾きぶりで、味わい深さが印象に残りました。
2楽章はレーゼルのピアノの魅力が溢れた楽章。右手の奏でるメロディーラインだけでも、非常に情感に富んだ深みのあるもの。この楽章はオケは完全に脇役にまわり、ピアノの魅力を表現することに特化した設計。この抑えた表現から醸し出される深い情感は見事の一言。
3楽章はピアノの音の魅力とオケーケストラの魅力の高度な融合。冒頭からリズミカルに掛け合い、ピアノとオケの見事な呼吸を堪能できます。途中転調してピアノのソロを聴かせるところでは、過度に目立つことをせず、全体の流れの秩序のなかでのピアノの個性をさりげなく弾くような展開。最後は力をあえて抜いたようにフィナーレに。

つづいてXVIII:4。

この曲の特徴である、特徴的なリズムから入りますが、そのリズム感をあえて抑えて速めのテンポであっさり入るヘルビッヒ。作曲年代を考慮して、室内学的な演奏を意図したものでしょうか。レーゼルもまずはあえて流すようにメリハリを抑え気味にして入ります。徐々にオケの力感とピアノのメリハリが力を帯びてきます。1楽章の後半は表現の幅が広がり掛け合いの妙味が味わえます。カデンツァは今まで聴いたことがない変わったもの。
2楽章のアダージョは、普通に入るオケの伴奏に乗ってレーゼルがかなりゆったりした詩的なフレージングで入ります。レーゼルのピアノは音楽的完成度が高いのか、入り方が少し変わっても、醸し出す音楽の濃さや、オケとの絡み方が非常に安定感があるというか、揺るぎない感じがします。この楽章はおそらくレーゼルがもっとも自由にというか表現の幅を広げた演奏をしているんですが、音楽的に少しも隙がないのは流石です。
3楽章はピアノもオケもキレています。リズムの鮮度が一皮むけて、ダイナミックさも今までで一番。抑えた部分の抑えが効いているので表現の幅が大きく感じます。素晴らしい推進力のままフィニッシュ。

期待のレーゼルのピアノ協奏曲、素晴らしい出来でした。両曲とも文句なしに[+++++]です。一聴して派手な演奏ではないので、人によっては違う評価もあり得るかもしれませんが、この演奏はピアノが好きな方にはたまらない演奏でしょう。ヘルビッヒによるオケのサポートも、目立ちすぎることもなく、音楽性も高い理想的なもの。そのオケに乗ってレーゼルのまさに慈しみ深いピアノ。さりげない中にも詩情の深さを聴かせる玄人好みの演奏と言うことができるでしょう。yoshimiさんに良いアルバムを教えていただきました。

このアルバムはおそらくハイドン以外も聴くべき演奏が沢山ありそうなので、のんびり楽しみたいと思います。
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4 Comments

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yoshimi

気に入っていただいて、なによりです

レーゼルのハイドン、やはり良い演奏だったようで、ちょっと安心しました。好みの違いというのはあるものですから。
記事はとても参考になりました。交響曲はあまり聴かないのでオケの良し悪しはわからないですし、同じ録音を聴いても印象の違いとか、表現・たとえ方の違いなどを知るのは面白いですね。
レーゼルは、一般的な人気はもう一つですが、昔よりは知られていますし、ピアノをよく聴く・弾く人でレーゼル好きな人は結構多いようです。

そういえばXVIII:11のカデンツァもハイドン自作のものではないですね。
楽譜を見てみましたが、フー・ツォンはハイドン自作を弾いているので、これが普通なんでしょうか。
ミケランジェリは前半はハイドン、後半はオリジナル(たぶん)を接続して、ちょっと華やか。
レーゼルは、あえてオリジナルを弾いたわりに全然凝ってなくて、既存のパートを回想的につなげて、本体と一体化したような流れにしてますね。XVIII:4は楽譜を見ていないのですが、考え方はおそらく同じなのでしょう。
オリジナルのカデンツァは、バックハウス、ケンプ、アンダなどが、ベートーヴェンやモーツァルトで弾いてますし、普通と違うカデンツァを聴くのは面白いです。

XVIII:4はまだ聴いていなかったのですが、今聴いてみるとこの曲もいいですね~。
少しモーツァルト風(?)で、XVIII:11よりもやや重心が低くて落ち着いた感じがしますが、レーゼルのピアノは、こちらの方が伸びやかで開放感がある感じがします。

BOXセットの他のコンチェルトも、良いものが多いのでいろいろ楽しめると思います。
個人的には、ベートーヴェンはもちろん、プロコフィエフとシューマンはかなり気に入ってます。

Daisy

Re: 気に入っていただいて、なによりです

yoshimiさん、いつもいつもコメントありがとうございます。
レーゼルのハイドン、良いですね。ピアノ好きな方が好きなのがよくわかります。このピアノを聴くとソナタも聴きたくなります。現行盤には見当たりませんが、録音はされていないんでしょうか。
現行リリースされている14枚組のボックスセットのピアノ独奏曲編の構成をみるとブラームスなどベートーヴェン以降のものが多いので、古典派よりもロマン派を得意としていたんでしょうね。ハイドンの演奏を聴くと古典派もまんざらではありませんし、モーツァルトも素晴らしいのではないかと想像してます。あるいはレーベルにはオルベルツがいましたので、録音上棲み分けがされていたのかもしれませんね。

次はとりあえずベートーヴェンを聴いてみます。

  • 2011/01/25 (Tue) 07:03
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yoshimi

レーゼルの録音

こんにちは。レーゼルは、リサイタルでハイドンのソナタ(Hob.XVI,52など)は弾いていますが、スタジオ・ライブとも録音も残していないようです。
モーツァルトはあまり得意な作曲家でないので、レーゼルの演奏については判断できないものがありますが、ロココ調的な甘さは少なく、いつものクリアな音とタッチで、骨格のしっかりしたさっぱりした情感のある、ちょっと真面目なモーツァルトという感じでしょうか。

レーゼルのソロで定評のあるのは、ブラームス(若い頃に録音した作品集)とベートーヴェンです。ベートーヴェンの方は現在全集録音中で評判が良いようです。(私はまだ聴いてませんが)
元々ヴィルトオーソ系の技巧抜群な人なので、レパートリーには難曲も結構多いです。そのため古典派よりもロマン派の録音が多くなっているのでしょう。

ベートーヴェンのコンチェルトも安心して聴ける内容ですから、じっくりお楽しみくださいませ。

Daisy

Re: レーゼルの録音

yoshimiさん、こんにちは。
まだ帰宅途中の電車です(笑)。最近仕事が忙がしいので、毎日帰宅が遅く、ゆったっり音楽を聴く時間とれません。ブログの記事を書くのが毎日精一杯というところです。ただ、ブログを書くといろいろ反応もあり、自身も好きで続けている事ゆえ、さほどの負担でもないんですが。
レーゼルはハイドンを聴いている限りテクニックニシャンだとは聴こえなかったんですが、そうゆう面もあるんですね。むしろ、モーツァルトの方が相性がいいと想像していたのに意外です。こればかりは聴いてみないとわかりませんね。週末にでもベートーヴェンのコンチェルトを聴いてみようと思います。まずは好きな4番か2番からでしょうか。

  • 2011/01/25 (Tue) 21:44
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