シュミット=ゲルテンバッハ/ワルシャワ・シンフォニアの悲しみ

先日ディスクユニオンで手に入れたアルバム。ジャケットから怪しい妖気が漂っていたのでゲットといういつもの流れ。眼鏡をかけた中年の指揮者らしき男声が花畑のまえにたたずむ写真を配した、不思議なジャケット。apertoというベルリンにある未知のレーベルのアルバムで、収録曲目はハイドンの交響曲44番「悲しみ」とモーツァルトの交響曲29番というなかなかの組み合わせ。指揮はフォルカー・シュミット=ゲルテンバッハ(Volker Schmidt-Gertenbach)でオケはワルシャワ・シンフォニア(Sinfonia Varsovia)。録音は1991年4月、ポーランドのワルシャワ国立ラジオスタジオでのセッション録音。
このアルバムを取り上げたのは、ジャケットに妖気が漂っていただけではなく、驚愕の演奏の出来から。最初に言っておきますが、このアルバムの演奏は見事の一言。出会い頭に衝撃的な演奏とはこのことです。
演奏者の解説をライナーノーツから拾うと、まずオケのワルシャワ・シンフォニアは1984年4月にユーディ・メニューインがポーランドを訪れた際に、当時の若手の有能な演奏集めて結成されたオーケストラ。その時のリハーサルやコンサートの出来がよかったので常設オケとするようになったもの。当時聴衆や批評家から熱烈に賞賛され、テレビやラジオにも大きく露出されたようです。以来世界にツアーを組むなど知名度を高めてきたとのこと。このアルバムでも抜群の精度の演奏を聴かせています。
指揮者のフォルカー・シュミット=ゲルテンバッハについては多くの情報が書かれていません。HMV ONLINEを検索するとARTE NOVAレーベルなどに何枚かアルバムがあります。普通の見栄えのいわゆるおじさんですが、ただのおじさんではありませんでした。
1曲目に配された、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」。腰を抜かさんばかりの名演奏でした。
現代楽器のおそらく小編成のオケ。1楽章はいきなり抜群に精度の高い導入部。驚くべきはヴァイオリンパートの素晴らしいキレ。全員が完全にボウイングが一致しているような素晴らしいキレ。いや、ほんとうに素晴らしいんです。ヴァイオリンが火花を吹きながら克明に音階を再現。弦があまりに素晴らしいことを知ってか、金管はオフ気味に収録されています。これほどまでに冴え渡ったヴァイオリンパートは今まで聴いたことがありません。ベルリンフィルも真っ青、まさに驚愕の出来。オケのトレーニングを恐ろしくしているのではないかとの想像が働きます。このヴァイオリンの燃えたぎる演奏だけでもこのアルバムの存在価値がありますが、全体の構成も生気も見事の一言。1楽章だけでノックアウトです。
2楽章のメヌエット。速めのテンポでかなり攻めを感じるインテンポ。この楽章の魅力を疾風のように表現。相変わらず弦セクションは抜群の出来でフレーズをクッキリ浮かび上がらせ、曲想の面白さを際立たせます。
驚いたのが3楽章のアダージョ。完璧な弛緩。1楽章の素晴らしい力感から想像するにもうすこし角ばった演奏家と思いきや、抑えた表現も秀逸。何と素晴らしい情感。この楽章もノックアウト。シュミット=ゲルテンバッハ、恐ろしい才能の持ち主と見ました。ハイドンの音楽の深遠な魅力を素晴らしいフレージングで再現。神々しいとはこのこと。
そしてフィナーレ。キレまくったヴァイオリンパートがふたたび降臨。このヴァイオリンの素晴らしさは筆舌に尽くし難いですね。1楽章よりもダイナミックさが増してまさに荘厳さすら感じるフィナーレ。
いやいや、参りました。何気なく手に入れた一枚のアルバムですが、ここまでの素晴らしい出来を聴かされたら他の演奏も探してみたくなります。ちなみに2曲目のモーツァルトの交響曲29番も速めのテンポでヴァイオリンキレまくりの素晴らしい演奏。この才能を大手レーベルは見抜けないのでしょうか。もちろん評価は[+++++]以外につける余地なし。圧倒的な名演として広く皆さんにお薦めしたい内容ですが、おそらくこのアルバムを手に入れるのは非常に難しいのではないかと思います。私もハイドンについてはいろいろなお店やネットで探し続けてきましたが、初めて見るアルバムゆえ、数もほとんど出回ってないと思います。広く入手できればもちろん「ハイドン入門者向け」タグも進呈ですが、入手できないアルバムを進める訳には参りません。このアルバムが多くの皆さんに聴いていただけないのは人類の損失です(笑)
昨日紹介したウィスキー評論家のマイケル・ジャクソンに習えば、ハイドンの良い演奏を多くの皆さんに紹介するということを旨とする当ブログ、レーベルが有名かどうかなどに関わりなく、過去にリリースされた素晴らしい演奏については、その質の高さが皆さんに伝える価値さえあれば、きちんと取り上げてレポートしなくてはなりませんね。フォルカー・シュミット=ゲルテンバッハの素晴らしい演奏、私がその素晴らしさを歴史に残します。
今日はいつものように、午後スポーツクラブで泳いだあとは、近くで買い物をしてから家で夕食。昨日美味しい熱燗を呑んだので、伊勢丹で熱燗向きの酒をチョイス。久しぶりに徳利に注ぎ、50度前後の温めの燗にして楽しみました。

お酒は「純米原酒 環日本海 超辛口+15」というもの。伊勢丹酒売り場で入手。島根県浜田市の日本海酒造のもの。つまみはいつものように生ガキ、厚揚げ、漬け物など。

今日は寒かったので湯豆腐。今日行った近所の床屋さんに、家で栽培した水菜をいただいたので、椎茸、春菊などといっしょに湯豆腐に。家ではポン酢と新潟の辛み調味料「かんずり」が湯豆腐や水炊きの定番。独特の辛みが食欲をそそります。床屋さん自家製の水菜はシャキシャキ感があってとっても美味しかったです。このあと銀ダラの幽庵焼きでご飯をいただいて終わり。寒い日の湯豆腐は最高ですね。
いつもコメントいただくyoshimiさんのブログ「気ままな生活」で当ブログを紹介していただきました。yoshimiさんはピアノの演奏について相当の造詣の持ち主。いつもいろいろ参考にさせていただいてます。いつもありがとうございます。
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