作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

シェファード/カンティレーナの交響曲24番、哲学者、アレルヤ

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今日は初期交響曲です。

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エイドリアン・シェファード(Adorian Shepherd)指揮のカンティレーナの演奏でハイドンの交響曲24番、22番「哲学者」、30番「アレルヤ」の3曲を収めたアルバム。イギリスのChandosレーベルのアルバム。録音は1986年5月11日、12日、グラスゴーのSNOセンターでのセッション録音。

エイドリアン・シェファードはイギリスのロンドン東部の街エセックス生まれの指揮者。ロンドンで音楽を学んだ後スコットランド国立管弦楽団やBBCスコットランド管弦楽団の団員となり1966年に主席チェロ奏者としてスコットランド国立管弦楽団に戻り、その後はチェロ奏者として室内楽や協奏曲のソリストとして活躍したようです。1979年にこのアルバムのオケであるカンティレーナを創設し、音楽監督となっています。イギリスでは司会者や指導者としても知られているようですね。

まずは交響曲24番から。このアルバムに含まれる曲はすべて1764年から1765年頃の作曲で、ハイドンがエステルハージ家の副楽長時代のもの。

1楽章はこれ以上晴朗な音楽はないほどの素晴らしく明るく、推進力にあふれた音楽。小編成のオケの鮮明な響きと非常にクッキリとしたリズム感が素晴らしい音楽を作っています。ハイドンの初期交響曲の魅力的な音楽を完璧に表現。フレージングはカッチリ感を非常に意識したもの。Chandosレーベルらしいクッキリしながらも豊かで自然な響きの素晴らしい録音が華を添えています。抑制された部分もリズム感を維持して素晴らしい流れで、圧倒的な推進力。個性的な演奏ではないんですが、何もしないのに音楽が満ちあふれてくるという私の好きなタイプの演奏。音楽的な完成度は非常に高い演奏ですね。
2楽章アダージョは練ったり溜めたりは一切なく、ゆったりとした音楽を抑えた表現で一貫して奏でます。ハイドンの交響曲の魅力に取り付かれた人なら解ると思いますが、音符から音楽が浮き出てくるあの感じです。
3楽章のメヌエットも無為自然ながら素晴らしい音楽性。中間部のフルートやホルンのうまさは絶妙でとろけそう。
フィナーレは落ち着ききったテンポで入り、オケの楽器が次々と重なっていく様を絶妙のフレージングでコントロール。アレグロなのにむしろゆったり気味とも感じられる落ち着いたテンポで曲想の美しさを極限まで磨き込もうとするような演奏。テンポに関わらず推進力は維持して進めます。この演奏は素晴らしいですね。シェファードのアルバムは他にも所有しているんですが、あまり鮮明な印象はありませんでした。目から鱗の素晴らしさ。

つづいて交響曲22番「哲学者」。

哲学者の特徴的な1楽章のアダージョ。中庸なテンポでいきなり素晴らしいオケのフレージング。音の強弱のメリハリはほどほどながらひとつひとつの楽器のフレージングの表情が豊かなため全体のメロディーが非常に精妙に聴こえます。弦の音階による伴奏に乗って管楽器が同じメロディーの変奏を次々と受け継ぎ、音符上は非常にシンプルな曲を素晴らしく豊かな表現で進めていきます。圧巻の1楽章。
2楽章はプレスト。シェファードの特徴は速い楽章のスピードを上げず、音楽上の推進力で聴かせてしまうこと。この楽章も本来はもう少し速いんでしょうが、実際のスピードはそれほど速くないのに推進力に溢れた演奏。そのかわり音符を完璧に弾いていきますので鮮明に楽譜を分解しているような、大判カメラで撮った写真のような鮮明さ。それでいてスタティックではないところが流石。
3楽章のメヌエット。力の抜けたすばらしいコントロール。中間部のホルンと木管によるメロディーは非常に魅力的な響き。ハイドンの交響曲の素晴らしさに打たれる瞬間。
フィナーレは前曲同様、ほどほどのスピードで鮮明な演奏。力感もそこそこなのに不思議と聴き劣りしません。哲学者も一級品です。

最後は交響曲30番「アレルヤ」

意外にこの曲は遅めで入ります。前2曲とは異なりちょっとリズムが重めです。このリズムの重さで曲の印象が大きく変わり、オケの鮮明さや演奏の精度は前曲同様素晴らしいのですが、推進力ががっくり落ちたため、前2曲とは明らかに差がついてしまいます。これは惜しい。ずいぶん静的な印象に。
2楽章のアンダンテも少々おそめに感じます。前楽章の印象を引きずってしまいますね。演奏自体は非常に美しいもの。途中のフルートのメロディーの美しさが際立ちます。
この曲は3楽章構成ゆえ、3楽章がフィナーレ。全般に遅めのテンポを選択したこの曲ですが、前2曲とは明らかに演奏のコンセプトが違います。じっくり聴かせる方に主眼を移し、爽快感や推進力はかなり抑えめになっています。フィナーレの中間部はオペラで不安な心情や誰かを探すような場面でつかわれそうなメロディーを配した面白い構成。最後は爽快に終わるのがハイドン交響曲の定番ですが、この曲はなんとなく終わります。演奏の結果からはわかりませんが、何らかの意図があってやったことだろうと思います。

シェファードのハイドンの初期交響曲を集めたこのアルバム。シェファードの抜群の音楽性を知らしめた素晴らしいアルバムです。評価は交響曲24番、哲学者は文句なしに[+++++]。アレルヤは[++++]としました。アレルヤの演奏がキレていて、このアルバムが現役盤であれば、「ハイドン入門者向け」タグも進呈するところですが、惜しいところですね。ただし、ハイドンの交響曲が好きな方には探してでも手に入れてほしい名演奏でもあります。オークションや中古屋さんを丹念にさがせば手に入るかと思いますので、お好きな方は探してみてください。

Chandosにはシェファードの交響曲集があと2組リリースされており、こちらは現役盤の模様ですので、またの機会にレビューしたいと思います。
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