作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】コープマン3度目のオルガン協奏曲

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昨夜は新年会ゆえ更新をお休みさせていただきました。今日はコープマンの新着アルバムを。

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トン・コープマン(Ton Koopman)の指揮とオルガン、アムステルダム・バロック管弦楽団による、ハイドンのオルガン協奏曲(XVIII:1)、オルガンとヴァイオリンのための協奏曲(XVIII:6)、オルガン協奏曲(XVIII:2)の3曲を収めたアルバム。コンサート・ミストレスとオルガンとヴァイオリンのための協奏曲のヴァイオリンソロはキャサリーン・マンソン(Catherine Manson)。録音は2009年の9月、オランダ、アムステルダム近郊の街ハールレムのルター教会でのセッション録音。

コープマンのオルガン協奏曲は70年代から80年代に録音されたPHILIPSのもの、90年代に録音されたERATOのものに続く3度目の録音。録音が2009年ですのでハイドン没後200年ということで録音されたものかと思いますが、リリースは最近です。レーベルは最近コープマンの録音を出しているChallenge Classics。

以前の録音も非常にいい出来でしたので、今回のアルバムも期待が高まります。

まずはオルガン協奏曲(XVIII:1)から。いつもの中野博詞さんの「ハイドン復活」を紐解くとこの協奏曲は1756年、なんとハイドン24歳の時の作品。70歳近くなったハイドンは若い時に書いたこの曲の自筆譜に1756年と記入したことによって、作曲年代がほぼ確定しているということです。この年の翌年に交響曲1番が作曲されていることを考えると、ハイドンの最初期の作品であることがわかります。

1楽章はオケの序奏の段階から多彩なオルガンの装飾音が入り、以前のコープマンの演奏よりも自由闊達さが増している印象。テンポは比較的ゆっくり目で、オケは以前の色彩感溢れる躍動的な印象からすこし大人しくなり、色彩感はほどほどながら、躍動感というより柔らかな感興を表す感じに変化しています。最新録音らしく、録音は万全の出来。特にコープマンの奏でるリアルなオルガンの音色の美しさはなかなかなもの。オケとオルガンのバランスも悪くなくオルガン協奏曲を存分に楽しむことができます。演奏からはコープマンがオルガンの演奏を存分に楽しんでいることがよく伝わってきます。
2楽章も比較的ゆっくり目。古雅な弦楽器の序奏にのって、コープマンの弾くオルガンがシンプルながら徐々に変化を帯びてくるメロディーを描いていきます。この楽章でもオルガンの装飾音の自在な変化が聴き所。24歳の人間が書いたとはとても思えない、円熟味を感じるシンプルながら深いメロディー。曲の造りの複雑さは求められないにしても、このメロディーの構成は見事という他ないでしょう。
フィナーレはオケの色彩感と躍動感が徐々に上がってきて、オルガンの音色とオケの音色が渾然一体となって魅力的に響きます。オルガンの音色は力が入り、逆にオケのほうは力が巧く抜けてさらっと流すような清涼感を帯びてきます。

2曲目はオルガンとヴァイオリンのための協奏曲(XVIII:6)。この曲は前曲の10年後の1766年の作曲で、本来オルガンのために作曲されたものの、ペダルを使用しないためチェンバロでも演奏可能とのことで、チェンバロで演奏されることも多い曲。

1楽章は前曲同様ゆっくり目に始まります。独奏楽器が2つあるためソロ間の掛け合いもあり、曲想が非常に面白い曲。オルガンとヴァイオリンが合わせたり掛け合ったりする面白さはなかなかのもの。マンソンのヴァイオリンはコープマンの自在なオルガンより個性は弱いですが、うまく寄り添って確実な演奏。コープマンはコープマンならではの愉悦感溢れる演奏。おそらく体を大きく揺らしながらニコニコしていつものコープマンスタイルで弾いているものと想像できます。
2楽章のラルゴ。オケの序奏の後、オルガンの伴奏に乗っていきなりヴァイオリンのソロが始まりますが、そのメロディーラインの美しさが印象的。オルガンに主役をバトンタッチしたり、戻したりしながらソロ主体の構成。協奏曲としてはかなり実験的なスタイルだと思いますが、見事に成功している感じ。
3楽章はソロの美しさが際立ちます。恍惚としたオルガンとヴァイオリンの美しい音色が高次の融合を果たした素晴らしい曲想。楽器の自然体の音色を存分に楽しめる演奏。マンソンのヴァイオリンの音色にうっとり出来る素晴らしい楽章。この曲の美しさを堪能できる素晴らしい演奏。

最後はオルガン協奏曲(XVIII:2)は1767年頃の作曲。だんだん曲想が豊かになり、ハイドンの技法が冴えてくるように感じます。

1楽章はこの曲も、比較的ゆっくり目に入り、古雅な音色の端正なオケに乗ってコープマンのオルガンが遊び回るような自在な演奏。オルガンの音色の美しさは変わらず、オケの中庸を得たサポートも前曲と全く同様。演奏自体の質は非常に高く、コープマン独特のトランス状態に入らんばかりのオルガンの陶酔感がこのアルバムを通した特徴でしょう。
2楽章はアダージョ。このアルバムの中でも一番の聴き所。オルガンが最高の陶酔。コープマンの面目躍如。この曲を同時代で聴いた人はどう思ったでしょうか。オルガンという楽器の音色を生かし尽くした素晴らしいメロディーライン。10分近い長い楽章ですがオルガンの音色に打たれる快感を味わい続けられる楽章。転調の度に訪れる素晴らしい瞬間。
フィナーレはリズムの面白さを際立たせる、これまた聴き応え十分な楽章。この曲は名曲ですね。この楽章のオルガンを聴くだけでハイドンの天才ぶりが際立ちます。激しい感情の突出もなければ、技巧を凝らしたものでもないんですが、音楽としての創意が突き抜けんばかりに溢れかえってます。まさに音を楽しむ快感。昇天です。

先日聴いたコープマンの97番と98番のアルバムが、今ひとつ生気に欠けていたため多少の危惧はあったんですが、得意のオルガン協奏曲だけあって、こちらのアルバムは素晴らしい仕上がり。3度のオルガン協奏曲の録音でコープマンが至った境地は、まさに無為の自然さ、作為を超えた絶対的音楽的快感という素晴らしい高み。まさにコープマンの魅力に溢れた素晴らしいアルバムということができるでしょう。評価はもちろん全曲[+++++]です。最新の録音で楽しめる素晴らしいオルガン協奏曲のアルバムということで、「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。
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