ナカリャコフのフリューゲルホルンによるチェロ協奏曲2番

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セルゲイ・ナカリャコフという天才トランぺッターによるトランペット協奏曲と思って買ったアルバムですが、よく見たら違ってました。トランペットに似たフリューゲルホルンという楽器で弾いたハイドンのチェロ協奏曲2番。音域とテクニックからみてチェロをトランペットで代替するのは至難の技とは思いますが、そこがナカリャコフの技の見せ所なんでしょう。
フリューゲルホルンについてはリンクをご覧ください。
Wikipedia:フリューゲルホルン
アルバムをちゃんと紹介するとセルゲイ・ナカリャコフ(Sergei Nakariakov)のフリューゲルホルンによるハイドンのチェロ協奏曲2番と、トランペットによるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲3番K.216、同じくトランペットによるヨーゼフ・シューベルトのヴィオラ協奏曲の3曲を収めたアルバム。オケはウラディミール・スピヴァコフ指揮のモスクワ・ヴィルトトゥージ室内管弦楽団。2007年8月26日~29日、モスクワのモスフィルムスタジオでのセッション録音。レーベルは日本のavex-classics。編曲はセルゲイ・ナカリャコフの父のミハイル・ナカリャコフ。
セルゲイ・ナカリャコフは1977年生まれのロシアのトランぺッター(フリューゲルホルン奏者)で現在はイスラエル在住。日本でも吹奏楽の専門誌である「バンドジャーナル」でその甘いルックスから「トランペットの貴公子」として取り上げ、若い女性を中心に人気ある存在のようですね。ジャケット写真をみると、それも頷ける感じですね。私はもちろんこのアルバムで初めて聴く人。
2曲目におかれたハイドンのチェロ協奏曲。
オケの響きは現代楽器のによるキレのよい響き。脳内で響くチェロのメロディーラインをナカリャコフが忠実にフリューゲルホルンでトレースしていきます。トランペットより低い音域をトロンボーンに似た音色で表現する楽器ですね。チェロ協奏曲のメロディーは特に高音域のいわゆるチェロの鳴きを音色的にアクセントにして進めますが、音色的には全域共通の響きの柔らかさで表現するため、ちょっとメリハリがついていない印象もあります。オケは透明感がある響きですが、ナカリャコフのフリューゲルホルンをちょっと待つようなところがあり、リズム感のよさが後退する部分があります。もう少しぐいぐい進める推進力が合った方が良いでしょう。1楽章のカデンツァはじっくりとナカリャコフが語るようなカデンツァ。
2楽章はナカリャコフのフリューゲルホルンがまさにチェロのような鳴きを聴かせる展開。朗々としたフリューゲルホルンの奏でるメロディーは魅力的ですね。
3楽章は速いパッセージも多いですが、フリューゲルホルンは正確にメロディーを奏でていきます。自分で吹ける訳ではないのでこれだけのメロディーを吹くだけでも大変なことかもしれません。最後は細かい音階を素晴らしい精度で吹き抜け終了。
ハイドンについては、チェロ協奏曲をフリューゲルホルンで吹くという、奏者のテクニックを見せるという意味では成功したアルバムだと思います。ナカリャコフのテクニックは単一音の金管で弦の複雑なメロディーを吹くという意味では素晴らしいものがあります。一方、ハイドンの書いたチェロ協奏曲2番はやはりチェロで弾かれるべきものであるという印象も濃く残してしまったという面もあります。音階の表現ではなく、音は楽器の音色の特徴を踏まえて書かれており、違う楽器で弾かれてはじめて、オリジナルの楽器で弾かれた時の素晴らしさが浮き彫りになります。音楽とは非常に複雑なものであることを痛感させられると同時に、ハイドンの天才も浮き彫りにしたと言えるかもしれません。
評価は[+++]とします。ナカリャコフのテクニックや演奏の楽譜への忠実度ならばもう少しよい評価としても良いんですが、オケの推進力、曲と演奏のギャップなどを考慮するとこう言った評価となると思います。最近最高評価続きでしたので、ある意味新鮮な評価です。
今日は年末風邪で実家にいけなかったので、実家に親戚が集まって食事をしてきました。親戚一同を前ににぎやかな食事で、両親も楽しんでいたよう。あと何年こういった楽しい正月の笑顔がみられるでしょうか。一年一年貴重な時間という他ありません。何事もなく楽しく食事が出来る幸せをかみ締めています。
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