作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アイオナ・ブラウン/アカデミー室内管の告別、受難

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昨夜途中で記事を終わってしまったものの続きです。

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アイオナ・ブラウン(Iona Brown)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin in the Fields)の演奏でハイドンの交響曲44番「悲しみ」、45番「告別」、49番「受難」の名作3点セット。録音は1998年4月28日、6月25日-26日、ロンドンの名音響のヘンリーウッド・ホールでのセッション録音。レーベルはhänssler CLASSIC。「悲しみ」の素晴らしい演奏は前記事をご覧ください。

ハイドン音盤倉庫:アイオナ・ブラウン/アカデミー室内管の悲しみ

調べていたら、私が入手したアルバムの他に、今回のハイドンの交響曲の演奏を収めたセットものもあることがわかりました。ハイドンの1枚の他にヘンデル、モーツァルト、ヴィヴァルディ他の演奏を集めた10枚組のボックスセット。

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HMV ONLINEicon

詳しい曲目は上記のHMV ONLINEのリンクをご覧ください。HMVのキャッチには「全編美音のかたまり! 名手アイオナ・ブラウンとアカデミー『アイオナ・ブラウン・ザ・コレクション』(10CD)」とあります。他の演奏は聴いていないんですが、ハイドンの演奏を聴くだけでも「全編美音のかたまり」のキャッチに偽りなしです。ブラウンの笑顔が印象的なジャケット。これも手に入れなくてはならないでしょう。ハイドン以外でもブラウンの美音に打たれて見たいものですね。

上のアルバム2曲目の交響曲45番「告別」。シュトルム・ウント・ドラング期のハイドンの交響曲の最高傑作です。

1楽章は快速テンポ。自然さを保ちながらかなり明確なアクセントをつけて畳み掛ける感じを巧く出しています。圧倒的な力感でぐいぐい進めます。中間部も速めのテンポで勢いを保ちながら興奮をしばし鎮め、ふたたび冒頭のメロディーと素晴らしい力感のオケの響きに戻ります。あえてテンポのメリハリつけず、1楽章の一体感を保つという狙いでしょう。最後はオケが振り切れて終了。
2楽章のアダージョは、1楽章の興奮をさますかのような抑制をきかせた展開。抑えたなかにも千変万化するデリケートな響きの魅力は失いません。金管や木管楽器の控えめながら美しい音色を効果的に配したハイドンの天才を痛感するが楽章。後半の大きな波のような盛り上がりに身を任せ、響きの余韻が消えるのを楽しみます。
3楽章はメヌエット。うら悲しい叙情をたたえたメヌエットのメロディー。弦楽器のメロディーの表現の緻密さに圧倒されます。なんという弦のキレ。ホルンの遠吠え。ヘンリーウッド・ホールの極上の響き。素晴らしいひととき。
そしてフィナーレ。出だしのプレストは素晴らしい覇気でぐいぐい進めます。圧倒的に緻密なコントロールながら素晴らしい自然さ。ブラウンのコントロールの素晴らしさにノックアウトです。そして、奏者がひとりずつ立ち去る最後の有名な場面。奏者が立ち去る前から感極まる美しさ。ひとつひとつ楽器が減って、最後のメロディーが終わる瞬間。消え入る響き。何度聴いても最高の音楽です。ブラウンの最高の演出で聴く告別は、もちろん最高です。

当時ニコラウス侯の命により、妻と離れて2ヶ月もよけいにエステルハーザにとどまらなくてはならなかった楽団員の不満をニコラウス候につたえるため、ハイドンが最高の機知を込めて書いた、終楽章中にひとりずつ楽団員が立ち去るという演出。ハイドン没後200年の2009年のウィーンフィルのニューイヤー・コンサートでバレンボイムがこの終楽章をとりあげ、一躍メジャーになったのがなつかしいですね。

このアルバム最後の曲、49番「受難」。

なんという美しいメロディー。1楽章の導入から釘付けです。この曲は1楽章がアダージョ。ブラウンのコントロールするアカデミー室内管の極上の弦セクションの奏でる暗く沈みきった曲想を素晴らしいデリカシーで表現。一音一音に魂が入っています。ハープシコードの響きが典雅さをくわえて、まさに極上の響き、典雅の極み。自らヴァイオリン奏者であるブラウンの弦のデュナーミクのコントロールは本当にほれぼれする素晴らしさ。腰抜けそうです。
2楽章はアダージョではなくアレグロ・ディ・モルト。凄まじい勢いながら美しさをたもってハイドンの天才的な音楽を弾き抜いていきます。速いテンポにも関わらずフレーズごとにきっちり表情に変化をつけて非常に濃密な音楽。弦のキレも最高。
3楽章は通常どおりメヌエット。テンポよくメヌエットと言っていいでしょう。
フィナーレはアカデミー室内管の弦楽セクションの面目躍如。漲る生気。迸る情感。疾風怒濤とはこのことでしょう。

このアルバムで聴けるハイドンの交響曲には、ハイドンのシュトルム・ウント・ドラング期の交響曲の神髄が宿っています。昨日取り上げた1曲目の「悲しみ」同様、「告別」も「受難」も飛び切りの演奏。現代楽器の小編成オケによる演奏の一押しという評価で、もちろん今日の2曲も[+++++]です。まさに美音のかたまり。ブラウンのコントロールするアカデミー室内管の素晴らしい響きが、名ホールとして知られるヘンリーウッド・ホールに響き渡る素晴らしい音響も楽しめ、まさに決定盤という位置づけでしょう。いままでこの演奏を知らなかったのは痛恨事ですね。

先日から「ハイドン入門者向け」というユーザータグをつけ始めましたが、まさにハイドンの入門に好適な1枚。素晴らしいハイドンの交響曲の魅力をたっぷり堪能できます。おすすめです。
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2 Comments

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小鳥遊

BOXの方を入手して聴いてみました

最近、過去の記事にばかりコメントしておりすね、すみません。

アイオナ・ブラウン、ハイドンのアルバムを持っているというか、既にダブリで購入してしまっていたのですが、BOXを見付けたら我慢できなくて、また散財してしまいました(笑)

ヘンデルがマイブームなので、ヘンデル目当てでしたが、ハイドンに劣らぬ名演奏のオンパレードです!

ヘンデルもモーツァルトもヴィヴァルディも、私にとってどれもが決定盤と言いたくなる程に嵌まってます。

美音の塊というのは、何だか綺麗なだけの様にも取れるので、あのキャッチフレーズはいけませんね。

勿論、美しい響きの演奏ですが、切れ味の鋭さ、細やかで丁寧な歌い回し、全体の調和と各人の独立性のバランスの妙、兎に角、驚きました。

正直、マリナーが余り好みではないので、アカデミー室内管弦楽団には美音以上のものを期待していなかったのですが、アイオナ・ブラウン恐るべしです。



Daisy

Daisy

Re: BOXの方を入手して聴いてみました

小鳥遊さんコメントありがとうございます。

ずいぶん昔に聴いたアルバムなので、タイムマシンから呼び出されたような気分です(^_^)。ボックスセットの方は未入手ですので、ヘンデルなどは未聴ですが、おっしゃるようにマリナーの時は適度にまとまった演奏をするこのオケが、ブラウンが振ると素晴らしいキレを聴かせますね。
ボックスにも食指が伸びますが、ハイドンのLPも気になって探したくなりました!

  • 2018/03/05 (Mon) 07:46
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