作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ファイン・アーツ四重奏団のOp.77(ハイドン)

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最近めっきり室内楽からはなれていますので、今日は最近手に入れたものを紹介しましょう。

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ファイン・アーツ四重奏団(Fine Arts Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.77のNo.1とNo.2の2曲を収めたアルバム。レーベルはLYRINXでジャケット裏面にはharmonia mundi DISTRIBUTIONとの表記があるので傘下の小レーベルでしょうか。手元には何枚かのアルバムがあります。録音は No.1が1998年11月19日、No.2が1999年3月25日、フランスのマルセイユでのセッション録音。かれこれ10年以上前の録音になります。

このアルバムを紹介するのは、純粋に素直な演奏によって曲を楽しめるので。

ファイン・アーツ四重奏団はこのアルバムではじめて聴きます。ライナーノーツを読んでみると1946年シカゴで創設された弦楽四重奏団。半世紀以上も第一線で活躍する数少ない弦楽四重奏団とのこと。1982年以来現在のメンバーで固定。ネットにホームページがありましたのでリンクを張っておきましょう。

Fine Arts Qusartetオフィシャル・ウェブサイト(英文)

ウェブサイトをみるとヴィオラ奏者が2009年に代わっているようですね。この演奏時のメンバーはラルフ・エヴァンス(vl)、エフィム・ボイコ(vl)、ジェリー・オーナー(vla)、ウォルフガング・ラウファー(vc)の4名。

収められた弦楽四重奏曲のOp.77はハイドン67歳の1799年の作曲で、ベートーヴェンのパトロンとしても有名なロプコヴィッツ侯爵の注文に応じて作曲された曲。ハイドンの弦楽四重奏曲はそれまで6曲1セットとして作曲されてきたのに、この曲に至って、2曲のみで中断してまったとのこと。着手時には6曲を作曲中と報じられながら2曲で終わってしまった理由として、いつも紐解く中野博詞さんの「ハイドン復活」には、ロプコヴィッツ侯爵が同時期に注文したベートーヴェンの弦楽四重奏曲も同時期に作曲され、ウィーンの貴族サロンで演奏され、それをハイドン自身も聴いている可能性があるはずで、その出来を知り筆をおいたのではないかとの推論が示されています。

モーツァルトのクラヴィーア協奏曲を聴いたのちに自身のクラヴィーア協奏曲を作曲しなったことを考えるとあながち推論と軽んじることはできないのではないでしょうか。素晴らしい作曲の才能をもつハイドンには、自身を上回る才能を聴き取る鋭敏な感覚と、その才能を認める謙虚さや、大きさをもっていたに違いないと思い込んでしまいます。

この4年後にはハイドン最後の弦楽四重奏曲Op.103を作曲しますが、すでに作曲意欲は衰え2つの中間楽章のみを完成させるのみで、「私のすべての力は去り、私は年老い、おとろえた」という歌詞を添えて出版されるというハイドン創作の終焉を迎えますので、まさに創作の最後の時期の代表作。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の衝撃はハイドンにとっていかばかりのインパクトだったでしょう。長い歴史を経ていまの私たちはそのインパクトをその歴史のパースペクティヴ上で理解することができますが、おそらくハイドンの時代にそのインパクトの大きさを知ることができたのはハイドンを含めて少数の人だけだったのではないかと想像してます。

前置きが長くなりましたので、曲のレビューを。

Hob.III:81 String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
出だしは落ち着いたテンポで、各楽器が独自にヴィブラートをかけながら、弦の胴鳴りを巧く鳴らしてアンサンブルを組み立てている感じ。やはり第1ヴァイオリンのエヴァンスの高音の美しいヴァイオリンのフレーズの存在感とインパクトで聴かせる感じ。型にはまったというか、表現を統一していこうという感じはあまりせず、各パートが良い意味で自由に弾いている感じが特徴でしょう。各パートともフレージングのメリハリは結構はっきりつける方なので、曲想は結構濃い印象を残します。録音はリアリティが高く、残響は少なめゆえ、部屋の中にクァルテットがやってきたようなリアルな音質で抜群のリアリティを楽しめます。
2楽章のアダージョの冒頭の緊密なアンサンブルは見事。1楽章を終え精度が高まった感じですね。ゆったり目のテンポで各奏者の呼吸が聴こえてくるような息づかい。クァルテットのアダージョは精度の高い豪腕の演奏もいいんですが、このように各奏者の息づかいが聴こえてくるような素朴な表現も聴く楽しみの一つですね。最後の一音の余韻が消えるところの美しさもなかなか。
3楽章のメヌエット。自在なヴァイオリン。このエヴァンスの楽器の高音の伸びは素晴らしい存在感。長年一緒にやってきたクァルテットらしい阿吽の呼吸を感じるアンサンブル。結構フレーズごとにテンポを変えてくるんですがみんなぴたりと入ってくるのが流石ですね。
フィナーレは速いテンポで各パートが徐々に畳み掛けるように火花を散らし始めます。デュナーミクの幅も非常に大きくなり、また高音部の音階のキレも最高潮に。全員乗りに乗っているようすがよくわかります。この四重奏団の最良の演奏の記録といってもいい素晴らしい緊密なアンサンブル。

Hob.III:82 String Quartet Op.77 No.2 [F] (1799)
別の日の録音のため、前曲最後の火傷をしそうな火照りの余韻は感じられません。音質もすこしオフ気味になったせいか、前曲よりも落ち着いた感じの1楽章の入り。もちろんアンサンブルの構成は基本的に同様ですし、各パートが濃いめながら自由に弾く感じも同様。曲調のせいか、各パートのフレーズを次々と引き継いでいく様子をが浮き彫りに。各楽器それぞれの独立したフレージングの面白さを感じます。
この曲は2楽章がメヌエット。前曲より抑え気味なところが功を奏して曲の良さを素直に楽しめます。
この曲の白眉のアンダンテ。やはりハイドンは天才ですね。天国のゆりかごに揺られている時のBGMのようなシンプルながらすばらしく落ち着くメロディー。癒されます。いや、癒しが必要なんですねサラリーマンも(笑)。旋律はヴィオラのものでしょうか。全奏者がうっすら笑顔で弾いているような余裕溢れるフレージング。
フィナーレは正攻法で緊密なアンサンブルが炸裂。前曲とは異なり高音域よりも中音域の曲の充実ぶりを表現しているようで、相変わらずきっちりした各楽器のアクセントによってフレーズの面白さが強調されています。徐々にヴァイオリンが主役に躍り出て曲を引っ張るようになり、複雑なメロディーを徐々に陶酔感まで高めます。この弦どうしの緊密なアンサンブルこそファイン・アーツ四重奏団の真骨頂でしょう。

評価は聴いているうちに両曲とも[+++++]としたくなりました。アンサンブルの精度や知名度などを考えると[++++]という評価もあり得るかとは思いますが、弦楽四重奏を聴く楽しみは私は十分満喫できましたので、最高評価としたいと思います。

いや、室内楽はいいですね。昔はあんまり面白いと思わなかったんですが、この等身大の楽しみは捨て難い。しかもハイドンの素晴らしい音楽と、長年演奏してきたベテランの手による円熟の音楽。贅沢ですね。ほんとはウィスキーでもやりたいところですが、正月風邪にもかかわらず結構アルコール消毒しましたので、今日は控えます(笑)。

さて、明日は何をとりあげましょうか、、、
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