作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

セル/クリーヴランド管の99番(1966年2月ライヴ)

0
0
昨日フリッツ・ブッシュの爆演の良さにヒクヒク。つられて今日もヒストリカルものを物色。ありました、良いアルバムが。

IMG_1123.jpg

年末にディスクユニオンで手に入れたCD-R盤。ジョージ・セル(George Szell)指揮のクリーヴランド管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲99番の他、モーツァルトの交響曲40番、ピアノ協奏曲24番(独奏:カサドシュ)、ベートーヴェンのピアノ協奏曲3番(独奏:エミール・ギレリス)と夢のような組み合わせ。ハイドンの演奏は1966年2月16日のライヴ。その他の演奏も1966年でモーツァルトの24番のみ1969年。レーベルはILLUMINATIONというアメリカのCD-Rレーベルで制作は1999年。2枚組です。

冒頭に置かれたハイドンの99番。ちなみにSONY CLASSICALからリリースされているセルのハイドン交響曲集などにふくまれている99番は1957年10月25日、26日のセッション録音ですので、このアルバムの録音はその9年後のコンサートの模様を収めたもの。これまでセルのハイドンは2回取り上げていますので記事のリンクを張っておきましょう。(すいません4回でしたので追記しました)

ハイドン音盤倉庫:セルの1959年ザルツブルク音楽祭ライヴ
ハイドン音盤倉庫:セル/クリーヴランド管のロンドン他
ハイドン音盤倉庫:セル1954年の93番ライヴ録音2種
ハイドン音盤倉庫:セル/クリーヴランド管の93番、驚愕

これまで聴く限り、セルの演奏は録音が古い年代の方に覇気を感じることが多かったので、今回の演奏の前にSONY CLASSICALの1957年のセッション録音の演奏を聴いてみました。

まずは1957年のセッション録音。

1楽章からセッション録音らしいバランスの良い音響。セルらしい均整のとれた健全な響き。叙情に溺れないキリッとしまった展開です。99番という穏やかな曲のせいか、セルも明確にアクセントをつけたり、演出に凝るところもなくさっと終了。
2楽章はご存知のとおり非常に美しいメロディーの宝庫。少し速めのテンポで入り、ハーモニーの美しさを楽しみながら少しずつテンポを上げていきます。クライマックスの部分では結構速いテンポになっています。
3楽章はセルの本領発揮。非常に折り目正しいメヌエット。リズムを強調して音を短めに刻むことで背筋がピンと伸びたようなメヌエットを演出。これは完成度の高い演奏。
フィナーレは入りは穏やかなものの、途中からインテンポで畳み掛けます。セッション録音にもかかわらずオケが浮き足立つほどセルが煽っているのがわります。途中の一息入れるところでは静寂を長くとり対比を強調。最後はセルらしくタイトなオケをこれまた激しく煽ってフィニッシュ。

セルらしさを感じられる演奏ですが、今一歩の踏み込みと炸裂感を求めたいのが正直なところ。そして今日の本命、1966年のライヴ盤。

1楽章は非常に伸びやかなフレージングで始まります。ライヴとわかる会場ノイズとざわめき。冒頭から迫力が違います。間をたっぷりとってフレーズの彫りを深めます。主題に入ってからはテンポは中庸のままながら推進力溢れる展開に。均整の取れたメロディーと低音弦のザクザク刻むリズムが古典的均整の範囲で程よくバランスする絶妙の1楽章。
2楽章のアダージョは1楽章同様、伸びやかフレージングがいいですね。表現の幅はずっと大きくなり、途中の盛り上がりの山の迫力もだいぶ大きくなります。
3楽章はセッション録音とはことなり、すこし溜の利いた展開。3拍子の後2泊が練る感じです。セッション録音の折り目正しいメヌエットも良いですが、やはりメリハリの利いたライヴの迫力はその魅力を上回ります。弦の滑らかな旋律の美しさもこちらが一枚上でしょうか。
フィナーレの入りは穏やかながらフレーズのクッキリ感があり、いい流れ。主題に入りオケのテンションが上がりますが、フレーズごとの性格付けが巧く、メロディーのみで十分聴き応えのする展開。徐々に楽器がくわわりオケの音量も上がってきますが、冷静なセルのコントロールが効いて混濁することはありません。最後の場面はオケのキレの良さを見せて終了。割れんばかりの拍手が迎えます。

この2つの演奏を比べると、1957年のセッション録音はやはりセッション録音だけあって、バランスの良い音響とセルの覇気が聴こえますが、いまひとつ踏み込みが足りない印象も否めません。一方1966年のライヴの方は伸びやかなフレージングと、キレるところはキレてライヴならではの感興があり、演奏の生気もこちらが上と聴こえます。評価はセッション録音の方が[++++]、ライヴは[+++++]としています。

セルのハイドンは愛好者の多いいわば売れ筋ものでしょう。まだ発掘されていないライヴもあるのかもしれませんが、これだけいいライヴを聴かされてしまうと、やはりライヴ盤探しに熱が入るというものです。セッション録音も一般的には非常に良い演奏ゆえ、セルが好きな方は探してみる価値のあるアルバムだと思います。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.