作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

フリッツ・ブッシュの時計、軍隊、トランペット協奏曲

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今日はヒストリカルものを。

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フリッツ・ブッシュ(Fritz Busch)指揮のウィーン交響楽団とウィーン・トンキュンストラー管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲101番「時計」、序曲(Ia:4)、トランペット協奏曲、交響曲100番「軍隊」の4曲を収めたも。時計のみウィーン・トンキュンストラー管弦楽団で、その他はウィーン交響楽団の演奏。トランペット協奏曲のソロはアドルフ・ホラー(Adolf Holler)という人。録音はすべて1950年ウィーンで。会場名などの記載はありません。レーベルはヒストリカル復刻専門のArchipel Records。

しばらく古めのものを取り上げていなかったので、今日はヒストリカルなものでもだいぶ古いものを紹介しましょう。そういえば当ブログではフルトヴェングラーもワルターもクナッパーツブッシュもちゃんと取り上げてませんね。それぞれハイドンの素晴らしい録音が残されているので、そのうち、きちんとした形でレビューに取り上げたいと思います。

今日はフリッツ・ブッシュ。今ひとつ日本では目立たない存在ながら演奏の迫力は抜群で私は好きな指揮者。1890年生まれのドイツの指揮者で、1951年9月には61歳の若さで亡くなられています。このアルバムの演奏は亡くなる前年の演奏。

まずは時計から。テープの関係か若干音程が落ち着かないところがありますが、1950年として水準レベルの録音。穏やかな序奏から主題に入るところで振り切れます。独特のオケの乾いた音が響き渡ります。それほど大時代的でもなく、録音の古さを脳内補正して聴くと、インテンポで畳み掛けるような演奏。1楽章を聴くだけで度肝を抜かれるような迫力と古典のバランス感覚が同居する素晴らしいコントロール。テープの劣化に伴う音程の不安定さが惜しいですが、解像度や迫力はこの年代の録音としては申し分なし。
2楽章は少し速めに時計のリズムを刻みます。オーボエの正弦波実験音のような特徴的な持続音を効果的に加え個性を際立たせます。途中から1楽章同様素晴らしい迫力のオケの熱演。吹き上がるオケの響きの快感。キリッとした時計のリズムに支えられ、安定したテンポ感で演奏も破綻せず、2楽章も素晴らしい盛り上がり。特にヴァイオリンのキレが抜群ですね。
3楽章のメヌエットは絶妙の力加減。強すぎもせず抑え過ぎでもない9分の力で堂々したメヌエットを奏でます。弦楽器の張りのある音色が素晴らしいですね。途中のフルートのソロ部分では音量をかなり絞った静寂を巧く使ってフルートを浮き立たせるなどの効果的な演出もあり、力ばかりでなく抑えた部分の表現も秀逸。このメヌエットは素晴らしいですね。
フィナーレはこれまでの演奏からの期待を裏切らない素晴らしい演奏。最初の序奏からフォルテッシモに至るまでの部分は十分を抑制を利かせて対比を明確化。フォルテッシモからは文字通り畳み掛けるような素晴らしい迫力と高揚感。ブッシュがオケをあおってちょっと前のめりになる部分も散見されるほど。すべての楽器が振り切れるまで弾ききっている感じがよく伝わります。ハイドンの巧みなフィナーレの楽譜をザクザクに弾きまくるような素晴らしい迫力で曲を閉じます。
時計は導入部のテープの問題による音程が落ち着かないと言う録音の傷など何も気にならないような、快演。時計の楽譜の神髄に迫る素晴らしい演奏ですね。

つづいて序曲(Ia:4)。この曲は1784年頃の作曲。この曲からオケはウィーン交響楽団。4分弱の曲ですが、この曲も度肝を抜くような演奏。冒頭から滑稽なリズムで始まりますが、途中から鋼のようなヴァイオリンのメロディーが圧倒的な存在感。間の取り方がうまく、曲のおもしろさも十分表現されていますね。このヴァイオリンのフレージングの迫力は素晴らしいですね。

次はトランペット協奏曲。トランペットが入る前にオケだけで観客をなぎ倒さんばかりの、素晴らしい迫力。聴き慣れたメロディーですが、魂入ってます。トランペットはふつうの入り、というか1950年の演奏とは思えない素晴らしいコントロールです。アドルフ・ホラーというトランペット奏者は初めて聴く人ですが、非常に巧いです。ただし、冒頭からブッシュの指揮するオケの、これまた度肝を抜く迫力に終始圧倒されている感じ。ブッシュのオケのアクセントの影響からかホラーも割と明確なアクセントをつけていき、オケと張り合う展開に。火花散る感じも出てきてなかなかスリリングな演奏。1楽章のカデンツァでは仕返しとばかりに突き抜けるような美音を大迫力で奏でやり返します。良い勝負。
2楽章のアダージョはオケが少々控えめになり、トランペットに主役を譲ります。音色からか多少古風に聴こえる部分もありますが、トランペットの奏でる旋律の朗々とした響きは見事。腕利き同士のがっぷり四つのアンダンテ。
3楽章は意外に柔らかいオケの入り。トランペットも最初は軽々と吹き、オケの出方をうかがうような展開。途中までおたがいに様子見で不気味な静けさ。途中でトランペットがテンポを極端に落としたりしてあおります。結局最後に爆発して終了。
この曲も見事!

最後は軍隊。大爆発にかなり期待が高まります。
序曲以降の音質はほぼ一定ですのでまとめてされた録音なんでしょうか。1楽章の序奏から最初の盛り上がりまでの流れは手に汗握る緊張感。最初の主題からもぞくぞくするような緊張感が持続します。途中弦楽器のレガートを強調するようなフレーズがあったり、音量を落とす部分の静寂感を強調したり、演出上手は時計の時と同様。すっかりブッシュの術中にハマっている感じ。1楽章は迫力で聴かせるのではなく演出の巧みさにやられた感じです。終盤ヴァイオリンのキレが押し寄せ、迫力のうちに終了。ちょっと音飛びのような録音の傷があります。
2楽章はサカサカ速めに入ります。期待とはうらはらに大爆発とはなりません。不思議と速めのテンポによる旋律の美しさが印象に残る演奏。ファンファーレから太鼓に連なる部分もある意味あっさりこなしていき、最後のフィニッシュの部分の音階を強調するなど、意図的なコントロールでしょう。
3楽章のメヌエットもやや速めの入り。こちらもアクセントのつけ方が巧いのか、旋律の美しさが非常に印象に残ります。軍隊の楽譜から爆発ではなく旋律の美しさを浮き彫りにするとは素晴らしい視点。
フィナーレに至ってブッシュの読みが見えました。ここに至ってフルスロットルになります。素晴らしいフィナーレの展開を楽しむようなブッシュのコントロールが冴え渡り、フレーズ単位の演出の変化が痛快。軍隊のフナーレのこれほど豊かな楽想を表現した演奏は今まで聴いたことがありません。感服です。最後素晴らしい盛り上がりも聴け大満足です。

評価はもちろん全曲[+++++]です。録音の傷など、何も問題ありません。ハイドンの楽譜からこれだけの音楽を引き出せる魔法のような指揮。いやいや久しぶりに取り出して聴いたフリッツ・ブッシュは爆演でした。ヒストリカルものが好きな方は必聴のアルバムです。モノラルだったり音が悪いアルバムが苦手な方も、この録音の奥から聴こえる素晴らしい音楽に是非打たれてみてください。やめられなくなります。(悪魔の誘いです、笑)
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