作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン・フィルの軍隊、時計ライヴ

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連日交響曲ですが、今日はハイドンの名手、ヨッフムのライヴ盤を紹介しましょう。

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オイゲン・ヨッフム(Eugen Jochum)指揮のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲100番「軍隊」と101番「時計」、そしてヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」の3曲を収めたアルバム。ハイドンの演奏は1973年1月30日、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのコンサートのライヴ録音。レーベルはご覧のとおりBBC LEGENDS。このレーベルのジャケットはシンプルながら音楽を感じる良いデザイン。集めたくなる魅力をもっていますね。

ヨッフムには現代楽器によるザロモン・セットの代表的演奏ともいえるアルバムが、同じくロンドン・フィルとのセッション録音がDeutsche Grammophoneからリリースされており、その録音も1971年~73年とほぼ同時期のもの。セッション録音中のハイドンをコンサートでも取り上げたということでしょう。ザロモン・セットの方の演奏はまだ取り上げてはおりませんので、そのうち取り上げなくてはと思っています。とりあえずセッション録音ものよりも個人的にライヴ盤の方が好きなので、どうしてもライヴ盤から手に取ってしまいます。コンサート会場の興奮が味わえるのは貴重な体験ですね。

ヨッフムについては以前モーツァルトを取り上げていますので、そちらの記事もリンクを張っておきましょう。

ハイドン音盤倉庫:ヨッフム/バンベルク響のモーツァルト後期交響曲

さて、本題のハイドンのライヴですが、軍隊の方からレビューに入りましょう。今日は風邪でちょっと耳が詰まり気味故レビューの切れが悪いかもしれません(笑)

1楽章は少し速めのテンポながら落ち着いた入り。冒頭の序奏からの盛り上がりは大迫力。主題に入ると快速ピッチにギアチェンジ。ロンドン・フィルの演奏と言うとちょっとピントが甘い演奏が多い中、ヨッフムのコントロールは緻密で、いつもの欠点を全く感じさせません。テンポが速い分弦のキレは非常に良いんですが、昨日のクレンペラーのようにキレを聴かせるというよりはバランスよいオケの響きに溶け込んだキレという風情。ライヴならでは感興。オケが非常にノっているのがよくわかる演奏。終盤は各楽器が良く鳴って最後の一音にむけて盛り上がり、大音響で終了。
2楽章のアレグレットの入りは弦楽器のヴィブラート美しい、流石ヨッフムのコントロール。テンポは中庸よりちょい速めといったところでしょうか。途中からのティンパニとトライアングルの炸裂が寄せては返すように繰り返す流れはライヴだけに演出効果満点。ヨッフム全盛期の覇気が爆発です。素晴らしい2楽章。
3楽章のメヌエットは結構速めのテンポで颯爽とした流れを重視した演出でしょう。昨日のクレンペラーがどちらかというとずっしりと遅めのテンポで聴かせたのに対し、ヨッフムは速めのテンポで曲の流れの一貫性の演出重視と言ったところでしょう。メヌエットは比較的あっさりと流しますが、最後は溜を効かせて終わります。
軍隊のフィナーレ。静かな序奏からはいり徐々にテンションを上げていきます。ヨッフムがオケにムチを入れ始めるところがよくわかります。途中のティンパニの号砲のキレは見事。不安な曲調にかわるところの演出も対比が効いていて効果的。最後の打楽器炸裂の部分の盛り上がりは眼前で弾いているようなリアリティがあって聴き応え十分。ライヴだけあってやはり最後の一音の爆発感が痛快です。余韻が消える間もなく日本のコンサートのような拍手の渦とブラヴォーの渦に迎えられます。見事。会場にいたかったですね(笑)

続く時計。一転ゆったりとした荘重な序奏を経て、中庸なテンポに戻り1楽章の主題をじっくりと描いていきます。同日のコンサートらしく、前曲の軍隊と音響的にはほぼ同一。73年のライヴ音源としてはふつうの出来なんだと思いますが、ノイズも気にならず、かといって生気が犠牲になるような音響処理の弊害もなく、音楽を楽しむという意味では十分な質の録音です。途中からヨッフムらしからぬ畳み掛けるド迫力の展開になってきます。緊密な構成で知られる時計の1楽章。なにやら神がかってきました。オケに宿る鬼気迫る迫力。きましたきました! 1楽章のフィニッシュのころには観客も手に汗握る素晴らしい緊張感が伝わります。
2楽章の有名な時計のリズム。1楽章で会場を煽った興奮をさますように、リラックスしたリズムを刻み、ヨッフムらしい音楽性豊かなゆったりとした時間。やはり展開部からは大迫力のオケが再び観客を襲います。何と言う興奮。巨大津波のような破壊力。そして静かな時計のリズムに戻ります。秒針の孤高の進行のような静けさと間。興奮と間を回想するような展開を再度経て2楽章を閉じます。最高ですね。
3楽章のメヌエットは、前曲同様比較的あっさりとした展開で進めます。メヌエットをあっさりこなすのがヨッフム流なんでしょうね。ただしこの曲ではヴァイオリンのエッジが立って痛快なキレを聴かせます。中間部のフルートとソロの部分、遠くでそっとフルートを奏でるような非常にデリケートな設計。この対比がメヌエットの立体感を見事に浮き彫りにしているんでしょう。
フィナーレはこれまでの演奏の総決算。速めのテンポ、優しいタッチでで入りますが、すぐにオケが大爆発。俊敏さが加わりすぐに弦のキレと大音響の迫力で素晴らしい陶酔感。オケの勢いが素晴らしいです。最後はテンポも上がり弓の範囲を超えて弦を奏でているような振り切れた表現。オケのテンポが少々乱れますが、ご愛嬌。最後の一音めがけて突進。またも大拍手が迎えてくれます。時計も素晴らしい演奏。

コンサートのつもりで余韻を楽しんでいたら、次曲のヒンデミットの音響に襲われてしまいました(笑)

このアルバムをCDプレーヤーにかけるだけで、1973年のロイヤル・フェスティヴァル・ホールにタイムスリップできます。一夜限りのコンサートの興奮を脳内に完全に再現できる素晴らしい演奏です。これだからライヴ盤はやめられません。シナプスからアドレナリンが噴射されるところをハイスピードカメラでとらえたような感動。いやいや、風邪薬て多少ラリっているせいか、今日は効きます。

もちろん評価は両曲ともに[+++++]です。以前は[++++]にしていたんですが、修正ですね。ライヴが好きな方には絶対のおすすめ盤です。

仕事は無事おさまったんですが、やはり風邪を本格的にひいてしまいましたね。風呂入ってゆっくり休むことにしましょう。暮れと正月は普段取り上げにくい大物も取り上げようかと思ってます。それではまた明日。くれぐれも皆様もご自愛ください。
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