作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【年末企画】サイモン・プレストンの大オルガンミサ

0
0
プレストンのチェチーリアミサがあまりに良かったので、つづいて大オルガンミサを取り上げましょう。

PrestonGOM.jpg

このアルバムは、前記事で取り上げたサイモン・プレストンと古楽アカデミー(AAM)、オックスフォードキリスト教会合唱団の演奏によるハイドンの初期のミサ曲などを集めたアルバムで、チェチーリアミサの2年後の1768年~69年に作曲された「聖母マリアを讃えるミサ曲(通称:大オルガンミサ)」と、その4年後である1772年に作曲された「聖ニコライミサ」、そしてハイドンの最も初期のミサ曲とされる1748年~49年作曲とされる「ロラーテミサ」の3曲を収めたアルバム。収録は大オルガンミサが1977年7月、ニコライミサが1978年7月、ロラーテミサが1979年6月、ロケーションは何れもチェチーリアミサと同様ロンドン近郊ハンプステッドの聖ユダ教会。

ハイドンがエステルハージ家の楽長に昇進して最初に書いたミサ曲が、前記事で取り上げたチェチーリアミサ。それまで楽長ウェルナーが担当してきた宗教曲を初めて自ら作曲することとなった記念すべき曲ですが、その素晴しい充実ぶりは前記事のとおりです。そのチェチーリアミサに続く、大オルガンミサとニコライミサ。時期的には今回年末企画で集中して取り上げているシュトルム・ウント・ドラング期にあたり、ハイドンの宗教曲に対するエネルギーが集中している時期の作品。

大オルガンミサはオルガンが活躍することから名付けられたもの。純粋な祈りの心境を感じる佳曲。この曲のソロはソプラノがユディス・ネルソン、コントラアルトがキャロリン・ワトキンソン、テノールがマーティン・ヒル、
バスがデヴィッド・トーマス。

出だしのキリエ。最初からオルガンが加わります。このアルバムににはメンバー表がついていないのとオルガン奏者の名前がありません。プレストン自身なのかチェチーリアミサ同様ホグウッドが担当しているのかはわかりません。オルガンの響きが加わることでミサ曲の雰囲気が敬虔なものになりますね。音響的にはチェチーリアミサとほぼ同様ですが、合唱の存在感はチェチーリアミサの方が上という感じですね。実際のことはわかりませんが、合唱の人数はチェチーリアミサの方が多いのではないでしょうか。プレストンのコントロールは、チェチーリアミサ同様、自然で個性的な部分はないものの、よく聴くとデュナーミクの変化が豊かで、フレージングも有機的。オルガンとオケとコーラスの織りなす軽やかでかつ爽やかな荘重さを感じる素晴しいメロディーライン。

続くグローリア。暖かな気持ちになる導入部。古楽器オケの弦楽セクションの雅な響きとコーラスの実在感がもららすハーモニー。ソロはチェチーリアミサほどクローズアップされず、アンサンブルの一部といった位置づけですね。聴けば聴くほど味わい深い情感豊かな旋律。コーラスのバスセクションの純度の高い歌声が心にしみます。教会内に響きわたるバスの朗々としたソロも印象的。オルガン、コーラス、ソロ、オケがかわるがわるメロディーを引き継ぎ、天上に迫る上昇感。

クレドはグローリアの余韻をそのまま引き継ぎ、教会内に満ちる恍惚の響き。テノールのソロが静謐な響きを演出。チェチーリアミサもそうでしたがソロの響きの質まで完全に一体感溢れる響きに制御されているのはプレストンのコントロールによるものでしょう。敬虔な祈りを音楽で表現する素晴しいコントロール。クレドの中間部からは一気に曲の集中力が増しテンポを落とし荘厳な流れに。この部分の音楽的な密度は素晴しいですね。ミサ曲の神髄を感じる部分でしょう。後半はまたテンポを上げ曲の起伏が激しいものに変わります。大オルガンミサは後期の有名な6曲のミサに比べると目立たない曲ではありますが、この曲のクレドを聴くかぎり素晴しい音楽の充実ぶりです。今更ながらそのすばらしさに打たれてます。

続いてサンクトゥス。コーラスの見事な重なりぶりと素晴しいハーモニー。2分少々の短い曲。

そしてベネディクトス。オルガンとコーラス、ソロの静かな掛け合い。この曲のメロディーの美しさは筆舌に尽くし難いもの。至福の時。抑えた部分の表現は絶品の仕上がり。教会のオルガニスト歴が長いプレストンの面目躍如の素晴らしさ。

終曲のアニュス・デイ。これ以上清らかな旋律は誰にも書けないだろう、すばらしく清透なメロディーをコーラスが歌います。コーラスの神髄を感じる素晴しいハーモニー。静寂と声の競演のごとき余韻の美しさ。曲を結ぶ方向にハイドンが徐々に筆をとっているようすが手に取るようにわかる曲の展開。オルガンの響きがこの曲のキャラクターを担っていることがよくわかります。最後はアーメン。

大オルガンミサもプレストンにやられました。もちろん[+++++]。同じアルバムに収められたニコライミサは次の記事にしましょう。連日のシュトルム・ウント・ドラング期の傑作ミサに打たれ続けて良い年の瀬です(笑)
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.