作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【年末企画】サイモン・プレストンのチェチーリアミサ

0
0
シュトルム・ウント・ドラング期の名曲を集中して取り上げている年末企画。今日はチェチーリアミサです。

PrestonCaeciliae.jpg

チェチーリアミサはハイドンがエステルハージ家の楽長に昇進した1766年の作曲。いつものように中野博詞さんの「ハイドン復活」を紐解いてみると、この年になるまでは、前楽長ヴェルナーがエステルハージ家の教会音楽の作曲と演奏を担当していたため、ハイドンには教会音楽を作曲する機会にはほとんど恵まれず、実際に副楽長時代にはミサ曲は全く作曲していなかったとのこと。長年にわたって押さえつけられてきたハイドンのミサ曲に対する創作意欲、教会音楽をも担当するようになる楽長昇進を機に、一気に爆発したのかもしれないと指摘されています。

チェチーリアミサについては、以前コルボ盤を取り上げていますので、そちらの記事もご覧ください。

ハイドン音盤倉庫:ミシェル・コルボのチェチーリアミサ

今日取り上げたアルバムは、この曲の定番ともいえるアルバム。サイモン・プレストン(Simon Preston)指揮の古楽アカデミー(The Academy of Ancient Music)とオックスフォードキリスト教会合唱団。ソロがソプラノがユディス・ネルソン、コントラアルトがマーガレット・ケーブル、テノールがマーティン・ヒル、バスがデヴィッド・トーマスという布陣。オーケストラのメンバー表を見ると、第一ヴァイオリンにサイモン・スタンディジ、オルガンにはクリストファー・ホグウッドの名前が見られます。録音は手元のL'OISEAU-LYLEレーベルのアルバムには表記がなく、LONDONレーベルのミサ曲集の方には1977年~79年との表記があります。ロンドン近郊のハンプステッドの聖ユダ教会でのセッション録音。

コルボ盤が曲の魅力を透明感溢れるコルボ独特の音響で聴かせるのとは少しベクトルが変わって、純粋にミサ曲の古楽器による折り目正しい演奏の逸品という演奏。いつもメールをいただく横浜のYさんも激賞の演奏ゆえ、年末企画に取り上げました。

サイモン・プレストンは1938年生まれのイギリスのオルガニスト、指揮者で作曲もするようです。お元気ならば72歳。クリストファーホグウッドよりも3歳年上ということになります。ウェストミンスター寺院の副オルガニストなどからキャリアを積み、有名教会のオルガニストとして活躍していたのでミサ曲などは仕事として多くの演奏に加わったのではないでしょうか。

プレストンの指揮はホグウッドが指揮したときの古楽アカデミーの独特の推進感とアクセントというか節回しの個性的な部分がなくなり、非常にオーソドックスな節回し。若干音を切り気味にしてキビキビ感を明確にするのが特徴と言えば特徴でしょう。オケの響きはホグウッドの指揮したときと同様、繊細なヴァイオリンの音と厚みは感じないんですが豊かな響きで、ミサ曲の魅力を十分につたえる音響。プレストンのほうが曲に素直なコントロール故曲の魅力がより明確になるようですね。

出だしのキリエ。この演奏の特徴となっている精妙な合唱がいきなり素晴しいハーモニーを歌い上げます。ヴァイオリンなどの弦楽器より遥かに存在感のある素晴しいコーラスがミサ曲の雰囲気を盛り上げます。一方弦楽器も古楽アカデミー独特の雅な響き。専門的なことはわかりませんが、古楽器にも弦の種類があってこのような音色になるんでしょうか。非常に繊細な音色で、響きに変化を加えます。テノールのマーティン・ヒルは非常に柔らかく流麗なほれぼれする歌唱。テンポは中庸、フレージングも個性的なところはないんですが、隙のない緊張感あふれる演奏です。キリエの最後は音階が複雑にからみあいながら上昇していく祈りのような瞬間が絶品です。

続くグローリア。テンポを上げ、ティンパニを鳴らすところでのアクセントを少し強調することで、推進感がいっそう高まります。キレのある弦と分厚いコーラスの対比で聴かせます。トラック5でソプラノ、ユディス・ネルソンのソロ。さきほどのテノールと同様、やわらかく流麗な歌唱。声質が完全にそろってます。トラック7はコントラアルト、テノール、バスなどのソロの掛け合い。トラック8のクイ・トリスは心に楔を打ち込むような印象的なはじまりでコーラスが天上にに届きそうな上昇感。心に残る素晴しい旋律。静寂と上昇するコーラスの対比。シュトルム・ウント・ドラング期特有のほの暗い旋律。この曲は名曲ですね。トラック9は一転晴朗な弾むリズムの曲。ソプラノのソロが美しさに華を添えます。グローリアの最後、トラック10。ハイドンの宗教曲に対するエネルギーの爆発のような迸りを感じる曲。壮麗な音響が教会内に満ちていくのがわかります。

続いてクレド。コーラスの嵐のような圧倒的なコーラスの存在感とオケの鳴動による感興。トラック12はテノールの、そしてトラック13はコントラアルトとバスによる静かなソロ。神秘的な雰囲気すら感じさせる静謐な時間。クレドの最後、トラック14はふたたびハイドンの筆が爆発。壮麗な音響に耳をゆだねます。

サンクトゥスは1分少々の小曲ですが、心が洗われるような印象的な響き。またも合唱の響きが天上に届きそうな上昇感。

続いてベネディクトゥス。前曲で良い気分になっていたら、こちらの方がもっと心が洗われるような曲でした。情感溢れるゆったりした旋律をオケとコーラスが刻んでいきますが、最後に明るく転調して結びます。

最後のアニュス・デイ。バスの穏やかなソロに続き終曲。最後までコーラスの素晴らしさは圧倒的。コーラス魅力で聴かせきってしまうような演奏。

評価はもちろん[+++++]です。以前は[++++]にしていたので、今回聴き直して、その素晴しさを再発見したというところです。プレストン指揮のアルバムは多くはありませんが、この演奏を聴くと素晴しいものがあります。ハイドンの誠実な曲想とプレストンのこれまた誠実なコントロールが絶妙の相性を見せているというこでしょう。

昨夜は忘年会ではなかったんですが、連日帰りが遅く疲れ気味だったんで、記事はお休みさせていただきました。今日の記事は昨日の書きかけを補ってアップしたもの。今朝はお休みゆえ、昨夜の残りの鍋をあっためて、朝から塩竈、佐浦酒造の名酒「浦霞禅」を一杯。朝から良い気分です(笑)

もうすこし年末企画続けますので、お楽しみに。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.