作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

SWF交響楽団の39番、「悲しみ」、71番

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今日は珍しい、1つのオケを3人の指揮者が振った演奏を1枚に収めたアルバムです。

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オケはSWF交響楽団。収録曲目、指揮者と録音年がそれぞれ次のようになってます。
交響曲39番:ハンス=マルティン・シュナイト(Hanns-Martin Schneidt)1993年2月26日
交響曲44番「悲しみ」:アーノルド・エストマン(Arnold Östman)1994年3月23日
交響曲71番:若杉弘、1987年1月27日

レーベルはARTE NOVA CLASSICS。廉価盤レーベルですがリリースするアルバムは侮れません。どういった経緯かわかりませんが、面白い企画に違いありません。同じオケを異なる指揮者がどのように料理するかということを1枚で味わえるアルバム。

まずは、オケ。SWF交響楽団はドイツのバーデン・バーデンに本拠をおく1946年設立のオケ。現代音楽を主なレパートリーとして、シェーンベルクやストラヴィンスキーなどもコンサートに登場した名門。多くの有名指揮者が振ったようですが、近年はミヒャエル・ギーレンが1986年から、そして現在読売日本交響楽団の常任指揮者であるカンブルランが1999年から音楽監督をつとめています。録音は80年代後半から90年代前半にかけてのものゆえ、ギーレンの時代の録音ということになりますね。

まずはシュナイトの39番。疾風怒濤期の畳み掛ける情感。瑞々しい現代楽器のキビキビしたオケがテンポよく陰影の深いメロディーを奏でます。弦の旋律がクッキリと浮かび上がり、非常に端正な仕上がり。2楽章のアンダンテもテンポよく美しい弦楽器の音色を生かして爽やかに進めます。3楽章のメヌエットもテンポ、表情はそのまま、楽章間の対比をつけるというよりはキビキビ感で一貫した演奏。フィナーレまで一気に到達。
シュナイトのコントロールは、ハイドンの楽譜の背景を読んで表情をつけていくというより、一貫した音響によってハイドンのメロディーを浮かび上がらせるという姿勢。楽章間の対比をもうすこしつけても良いように感じますが、これがシュナイトの持ち味なんでしょう。

つづくエストマンの悲しみ。音響はほとんど同じようなオケながら、少しゆったりして、オケの自由度が上がったというかコントロールが緩くなった感じ。曲自体は疾風怒濤期の傑作故、情感溢れる曲なんですが、表現の密度はシュナイトの前曲の方が聴き応えがあるというのが正直なところでしょう。この曲は3楽章にアダージョがくる変則的なもの。特徴的なのが、最後のフィナーレをかなりじっくり描いているところ。若干重さが気になってしまうくらいに遅いテンポで描きます。

そして若杉弘の71番。時代はだいぶ後の曲故、前2曲のほの暗い、深い情感とはことなり、晴朗な曲調に変わります。1楽章は日本人らしい明解なフレージングで、曲の構造を図面で見るような明晰さ。メロディを流麗に奏でようというよりは、楽譜に忠実なことを狙ったような演奏に聴こえます。秀逸なのは、弱音器つきの弦のメロディーが美しい2楽章のアダージョ。基本的に1楽章の延長のスタイルなんですが、慈しみ深い雰囲気がよく出ていて癒されます。メヌエットは徐々にオケが慣れたのか、だいぶ表現が深くなり、なかなか味のあるフレージングに変化しています。フィナーレは絶品。響き自体は厚いものではないんですが知らぬ間にオケが非常に流麗に変わっています。1楽章の最初が固かったということでしょうか。弱音の使い方がうまく、非常に珍しい静けさを感じるフィナーレ。いいですね。

評価は、シュナイトの39番が[++++]、エストマンの悲しみが[+++]、若杉の71番が[++++]としました。若杉弘さんは昨年亡くなられてしまいましたが、私も20年くらい前にベートーヴェンの4番、7番だったかのコンサートにいって、細身の体から渾身の力を振り絞ってオケをタイトにドライブする姿に感銘を受けたものです。

若杉さんの清々しい演奏に久しぶりにふれて、昔のことを思い出しましたね。
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