【ブログ開設1周年記念】ニコラス・ウォードのラメンタチオーネ
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遅く帰ってもレビューする気になるのは、やはり読んでくださる方がいるからこそ。
ハイドンのレビュー以外にも温泉記事や飲み食い情報などこちらの興味のままに書き散らしてきましたので、あまり皆さんのお役に立てているとも思いませんが、今後ともお立ち寄りいただきたく、よろしくお願い致します。
今日は、1周年に相応しい祝祭感のある曲でも選ぼうかと思いましたが、あまり気が利いた曲も思いつかず、逡巡することしばらく。ふと、今の気持ちを表すというか、私が最初にハイドンの素晴しさに打たれた曲を取り上げようと1枚のアルバムに手が伸びました。

HMV ONLINE
その曲は交響曲26番「ラメンタチオーネ」。今日のアルバムはニコラス・ウォード(Nicholas Ward)指揮のノーザン室内管弦楽団。他に交響曲35番と49番「受難」の計3曲が含まれるアルバム。録音は1992年10月27~28日でマンチェスターのBBCスタジオ7でのセッション録音。
最初に聴いて驚いたのは、前にも書いたピノック盤の「ラメンタチオーネ」。こちらはつい先日「朝」「昼」「晩」の3曲を取り上げましたので、もう一つのお気に入りであるウォード盤を選んだ次第。
ピノック盤のキビキビした展開とはことなり、このウォード盤は曲の魅力をたっぷり味わえる絶品の演奏なんですね。レーベルは見てのとおりクラシック廉価盤隆盛の祖、NAXOS。NAXOSは複数の指揮者とオケによるハイドンの交響曲全集を完成させていますが、なかでもウォードは私の一番のお気に入りの指揮者です。
今回記事にするために英文ライナーノーツを読むと、ウォードは1952年イギリスのマンチェスター生まれ。両親はハレ管弦楽団の団員だったとのことで、幼い頃から音楽に親しんでいたものの、ピアノがうまく弾けず、ヴァイオリンに転向して、12歳には自身で弦楽四重奏団を作るほどに。1977年からはメロス・アンサンブルやロイヤルフィルで首席指揮者として、かのアンタル・ドラティとともに仕事をしたとのこと。どうりでハイドンに対する深い洞察力に満ちた演奏をする訳です。その後このアルバムのオケであるノーザン室内管弦楽団の音楽監督となったという流れです。普段あまり熱心にライナーノーツを読まないんですが、いろいろわかりますね。
ウォードの演奏があまりにも素晴しいので、写真へのリンクも貼っておきましょう。
City of London Sinfonia : Nicholas Ward
さて、演奏です。
冒頭の交響曲26番「ラメンタチオーネ」。疾風怒濤期の交響曲の傑作交響曲。作曲は先日デニス=ラッセル・デイヴィスの演奏で取り上げた交響曲38番とほぼ同時期。中野博詞さんの「ハイドン交響曲」によれば、この「ラメンタチオーネ」と「受難」、交響曲64番の3曲はこの時期の交響曲ながら、明らかに宗教的目的のために作曲されたものとのこと。
1楽章の冒頭から一聴して感じるうら悲しい雰囲気につつまれた疾走する短調のメロディ。ウォードの演奏は現代楽器の非常にオーソドックスな演奏なんですが、すべてのフレーズと音量は完全に自然な状態にコントロールされた、完璧な演奏。この人の音楽には音符に対する深い畏敬に裏付けられた信仰心の様なオーラを感じます。私利私欲とも、指揮者として表現意欲とも離れて、純粋無垢な心境でひたすら音符を演奏するような、それでいてものすごく張りつめた天才的な感覚を持ち合わせているよう。圧巻の1楽章。
2楽章のメロディの美しさはこの世のものとは思えません。ゆったりと刻む木管とヴァイオリン主体のシンプルな旋律ながら、幸福感につつまれる至福の一時。昇天ですね。ハイドンの底抜けの凄さにはじめて打ちひしがれた時のことを思い出します。
3楽章はうら悲しさを残したままのメヌエット。朱色の印象的な古い宗教フレスコ画を見るような、人を敬虔な気持ちにさせる曲。この曲は3楽章構成のため、メヌエットの静かな終わりで曲を閉じます。これも非常に印象的なもの。
久々に聴いたウォードの「ラメンタチオーネ」。音楽を聴く悦び、ハイドンの素晴らしさに打たれる演奏です。NAXOSレーベルのハイドン交響曲の最高の演奏だと思います。
続く35番と49番「受難」ももちろん同レベルの素晴しい演奏。多くの人に聴いていただきたい至宝という評価です。もちろん全曲[+++++]としています。録音も非常に聴きやすく、プロダクションとしても完璧。NAXOSレーベルの良心の結晶のような素晴しいアルバムです。
最近、ブログを続けていくには良い演奏を多くの人に紹介していくに尽きるのではと感じています。今日のウォード盤は私の宝物のひとつですね。
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コメントの投稿
祝1周年
昨日がそうだったんですね。「1周年を前にして」というタイトルで
油断していました。
天地創造のテンシュテット盤、ショルティ盤等当方でも取り上げる
つもりが、発作的に他の作品に集中してしまって棚上げになって
います。
こちらのブログで初めて見る演奏家の名も少なからずあり、ついて
いけてませんが楽しみにしています。
Re: 祝1周年
こちらもライムンドさんのブログ、いつも楽しみにしております。
あっという間の一年でもあり、ようやく一年でもあります。ただ、漫然と音楽をきいているより、遥かに充実している心境になります。今のところ、文章を書く練習をしているというような位置づけで、日々精進しているというニュアンスでしょうか。
こちらもライムンドさんの縄張りのクレンペラーや宗教曲やカンタータなどついていけないものも沢山あります。知らない演奏や奏者でも、記事を見て手に入れてみたくなるものも多いので、情報はありがたいものです。
最近は出張があまりないのですが、以前は関西にもよく出張してました。今度行く機会があれば、是非一献よろしくお願い致します。