作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

デニス=ラッセル・デイヴィス/ライプツィヒゲヴァントハウスの2009年ライヴ

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今週はきびしい一週間でした。金曜、土曜と更新をお休みしてしまいましたが、金曜は忘年会、土曜も残り仕事を片付けに昼間会社に出かけ、夜はご近所さんと忘年会。やはり記事を書く余裕がありませんでした。

さて、今日は最近ディスクユニオンで手に入れた1枚。

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デニス=ラッセル・デイヴィス(Dennis Russell Davies)の指揮、ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲38番とチェロ協奏曲1番で、チェロはジャン=ギアン・ケラス。録音は昨年、2009年5月8日、ライプツィヒでのコンサートのようですね。DIRIGENTというCD-Rのレーベルですね。

デニス=ラッセル・デイヴィスといえば、最近突然ハイドンの交響曲全集をシュトゥットガルト室内管とのライヴでSONYからリリースして話題になりました。こちらの全集は小編成のオケによる鮮明な響きとキビキビ感をを特徴とした演奏ですが、楽譜どおりほとんど個性的な解釈がないあっさりとした演奏。所有盤リストに記載する際にほとんどの曲を時間をかけて聴きましたが、ムラのない一貫した解釈ゆえ、これがディヴィスのハイドンに対する姿勢でしょう。

デイヴィスと言えばもう一枚。以前ブログで取り上げた、ピアノ連弾による四季と天地創造のアルバム。こちらも演奏の気質は交響曲と同様かっちりとしたもの。

ハイドン音盤倉庫:ピアノ連弾による四季と天地創造
ハイドン音盤倉庫:ピアノ連弾による四季と天地創造2

今回取り上げたアルバムは、オケがライプツィヒゲヴァントハウス管ということでデイヴィスの全集のクリアながらちょっと迫力不足の響きを補ってくれるとの期待もあります。

まずは交響曲38番。作曲は1766年から68年の間ころ。エステルハージ家の副楽長だったハイドンが楽長ヴェルナーの死により楽長に昇進したのが、ちょうど1766年。久しぶりに取り出した中野博詞さんの「ハイドン交響曲」によれば、この38番を含む、この年以降1773年頃までに作曲された一連の交響曲を、第二期交響曲という創作区分として分類し、バロックのポリフォニックな書法を導入したひときわ注目すべき重要さをもっているとのこと。一般にシュトゥルム・ウント・ドラング時代呼ばれ、意欲的な表現と感情表出で知られています。

38番はこのような充実した時期の曲ながらハイドンの交響曲の中でおそらく最も変わった曲でしょう。意味不明な行進曲風に始まるので、おそらく誰かを驚かせようとハイドンが仕組んだものではないかと想像してます。

1楽章はデイヴィスらしく几帳面な入り。この曲の不思議な祝祭感を逆に押さえて、純音楽的な構造をしっかり描いているところが逆に良い効果を生んでいます。オケの響きは分厚い燻し銀の響き。低音が厚めなのが落ち着いた印象につながっています。全集の録音もライヴなんですが、こちらのアルバムの方がライヴ感は強く、開始前のホールのざわめきがあっていい感じ。1楽章はデイヴィスの良さがよく出た、非常に立派な良い演奏。
2楽章はメロディーがやまびこののように繰り返すことからこの曲が「エコー」とも呼ばれる元となったもの。1楽章のきわめて印象的な開始によってちょっと下手物扱いされるこの曲ですが、2楽章のメロディーラインの美しさは筆舌に尽くし難いもの。静寂の本質を見抜いたハイドンの天才。短い曲ですが素晴しい音楽です。デイヴィスのコントロールも抑制がよく効いて素晴しい静寂感。
3楽章のメヌエットはキリッとしたリズムに乗ってオーケストラのパースペクティブがよくわかる明朗かつ見通しの素晴しく良い演奏。ここまで作為なく晴朗な演奏はないほど。曲自体の魅力を十分に楽しめます。強奏部分の迫力も素晴しいの一言。デイヴィスにはこのようなオーソドックスなオケの方が合うように思います。
フィナーレもオーソドックスなテンポで素晴しく見通しの良い演奏。チリ一つない快晴の青空のもと、雄大な山脈を眺めるような趣。よく溶け合ったオケの音色も美しく、一貫したテンポでデリケートなデュナーミクのコントロールも決まり、最後まで緊張感溢れる演奏。最後は盛大な拍手に迎えられます。
この曲は全集の演奏より遥かにいいですね。

つづいてチェロ協奏曲1番。演奏の特徴は交響曲と同様ですが。チェロのジャン=ギアン・ケラスはデイヴィスのかちっとしたサポートの上で、比較的自由な弓使い。音を比較的短めにならしながら、ささっとメロディーをまとめていく感じ。harmonia mundiに別途スタジオ録音盤があるんですが、出来が今一で、以前ブログで取り上げようとしたのを断念した覚えがあります。こちらのアルバムの演奏の方が伸びやかさがあって良い演奏。火花散るという感じはなく、デイヴィスのサポートの上で、わりと気楽に弾いている感じがいいですね。1楽章のカデンツァは非常に長くじっくりチェロを聴かせるもの。鳴きを聴かせるというより詩的なカデンツァ。
2楽章はこれもデイヴィス流か、比較的あっさりしたフレージングで入ります。ケラスのチェロは1楽章よりすこしノリが良くなってきます。装飾音でフレーズを縁取りながら、過度に没入せず、音の伸びは良くなる感じ。オケもメリハリをかなり鮮明につける部分もあり、オケとチェロの掛け合い的なやり取りも感じさせるようになってきます。この2楽章もデイヴィスの良さが出ています。
3楽章はオケもケラスも十分に暖まって、冒頭から快速に入り、掛け合いもスリリング、ノリノリです。この曲も拍手喝采で迎えられます。

評価は交響曲38番は[+++++]、チェロ協奏曲も[+++++]つけちゃいます。デイヴィスの演奏はおそらく生で聴いたら素晴しいものでしょう。SONYの全集はライヴのキズをとる音響処理のし過ぎで響きの生気が失われてしまったものと想像してます。交響曲全集の方の38番も今回あらためて聴き直してみましたが、こちらの演奏のほうがずっと楽しめます。会場ノイズなどを消したいというのはわかりますが、肝心の演奏の生気まで消えてしまっては台無し。CD-Rレーベルのように音源をそのまま出したほうの評価が高ければ、レーベルの存在意義にも関わります。

私はライヴのリアリティが好きなので、咳やノイズは過度でなければまったく問題ないどころか、開演前のざわめきも大好きです。そういえばLP時代には最初の音が鳴る前の針の音がきこえてドキドキしたものですね。
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