作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マリナー/ドレスデン・シュターツカペレの戦時のミサ

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今日は久々のミサ曲。お気に入りの「戦時のミサ」のマリナー盤です。

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手元のアルバムはこちら。1枚ものとして昔リリースされていたもの。

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HMV ONLINEicon

こちらはミサ曲をまとめた2枚組の現行盤。

ネヴィル・マリナー(Sir Neville Marriner)指揮のドレスデン・シュターツカペレ、ライプツィヒ放送合唱団の演奏で、ハイドンのミサ曲「戦時のミサ」(Hob.XXII:9)。ソロはソプラノがマーガレット・マーシャル、アルトがキャロリン・ワトキンソン、テノールがキース・ルイス、バスがロバート・ホルと言うメンバー。録音年の表記はありませんが(P)マークが1986年ということで初出は1986年の演奏。

「戦時のミサ」はハイドンのミサ曲の最後の6曲のミサの最初を飾る大作。ハイドンがイギリス旅行を終えた1796年の作曲。マリア・ヘルメネギルト・エステルハージ公爵夫人の命名祝日にアイゼンシュタットのベルク教会で初演されたもの。とここまでは、いつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」に掲載された曲の項目の紹介なんですが、同書の伝記の部分を読むとハイドンのこの曲以降のミサ曲と天地創造、四季に至る作品の作曲の背景がよくわかります。

1794年にアントン・エステルハージ侯が亡くなり、後を継いだニコラウスII世侯は、ハイドンに副楽長の職と作曲の機会を与え芸術を愛したニコラウスI世とは異なり、音楽の趣味がかなり偏っており、宗教音楽、とくに古びた様式の曲を好んだとのことで、当時器楽の分野では第一人者とみなされていたハイドンの曲よりも、弟のミヒャエル・ハイドンの教会音楽への偏愛を隠さなかったと記されています。
ハイドンはそれでもエステルハージ家へのこれまでの恩義に応え、若いニコラウスII世侯の好みに応えようということで、この曲以降の一連のミサとオラトリオが作曲されたとのこと。イギリスで大きな評判を呼び、経済的にも充実していたハイドンですが、若い頃から世話になっているエステルハージ家への忠誠心は涙ぐましいものがあります。

古いスタイルの教会音楽と言うジャンルですが、ハイドンが作曲したのはそのジャンルの当時の最高峰の音楽であることは、以降の歴史が証明しているでしょう。天地創造などに至っては、当時のという但し書きすら不要なのは周知のとおりですね。

さて、この演奏ですが、まずはドレスデン・シュターツカペレの燻し銀の分厚い音色と、先入観では室内オケを得意としているイメージが強いマリナーの意外な(といっては失礼ですが、、、)迫力あるオーケストラコントロールが聴き所。

冒頭のキリエ、原始の雲のような混沌とした序奏から、分厚いオケと合唱の響きが突き抜けます。マリナーのコントロールはフレーズをわかりやすく整理して旋律をクッキリ浮かび上がらせるところ。これがドレスデン・シュターツカペレの薫製のような響きと相俟って素晴しい響きを生み出しています。ソプラノのマーシャルは素晴らしい美声。クーベリックの天地創造を紹介した記事でも取り上げましたので、そちらもご参照ください。

ハイドン音盤倉庫:クーベリックの天地創造

トラック3のグローリアでは、ロバート・ホルの素晴しいバスと何重にも重なり合うコーラスの美しさが際立ちます。このアルバムのコーラスを担当するライプツィヒ放送合唱団のハーモニーは絶品。ロバート・ホルはアーノンクールの天地創造旧盤でも聴いています。

トラック5からのクレド、リズミカルに弾むオケの中でもヴァイオリンのクッキリとしたリズムの刻みはマリナー好みの演奏なんでしょう。この曲全体にヴァイオリンの刻む美しい速いパッセージの音階は、分厚いオケの立体感をクッキリさせるのに非常に効果的です。この音響がこのアルバム、というかマリナーとドレスデン・シュターツカペレとのミサ曲の聴き所です。

トラック9のサンクトゥスの静かに始まる美しい旋律、絶品ですね。そしてベネディクトゥスを経て、「太鼓ミサ」の別名のもととなった最後のアニュス・デイのティンパニのソロも決まって、最後は荘重な響きからトランペットが活躍する明るい曲調になり、曲を閉じます。

評価は[+++++]のままです。わたしのハイドンのミサ曲の刷り込みはほぼマリナー故、脳内に音響が焼き付いてしまっています。一般の人のイメージするマリナーとはだいぶ異なるイメージのマリナーの演奏かもしれませんが、これはこれで素晴しい演奏であることに変わりありません。
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