シャーンドル・ヴェーグの太鼓連打、ロンドンライヴ

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ORFEOレーベルからリリースされている、シャーンドル・ヴェーグ(Sándor Végh)の指揮するカメラータ・アカデミカ・ザルツブルクの演奏でハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、104番「ロンドン」の2曲を収めたアルバム。ザルツブルク音楽祭のライヴ録音で、いつものようにザルツブルク音楽祭のサイトで調べてみると「太鼓連打」が1996年8月11日、「ロンドン」が1994年の8月18日のコンサートを収録したものですね。
ヴェーグは1912年生まれのハンガリー生まれのヴァイオリニスト、指揮者、そして教育者。1997年に84歳で亡くなっていますので、このライヴは最晩年に近い録音。80歳を過ぎた音楽家の指揮するハイドンということですね。ヴェーグのハイドンのライヴはこの他にも3枚、計4枚がORFEOからリリースされていますが、現代楽器の小規模オケのハイドンとしては骨のある演奏です。今日はその中から代表的な一枚を選んだ次第。
まずは、「太鼓連打」から。ティンパニの一撃からただならぬ緊張感。規模の小さなオケゆえ響きの厚みはないんですが、劇的なデュナーミクにより迫力は十分。デッド気味な録音が迫力をさらに増し、主題は素晴しい風格。弦楽器の弓さばきの鋭さが伝わるよう。松ヤニが飛び散りまくりのような弦の迫力。ストイックな魅力炸裂ですね。80歳をすぎてこのような音楽を奏でるとは。自分が同じ年になったときにこのような音楽を奏でる心境になれるかどうか、教育者としての強靭な信念のなせるところでしょうか。最後のドラム・ロールも気合い十分。1楽章の充実はすばらしいですね。会場が凍り付くような緊張感につつまれているようです。
2楽章はいきなり超低速運転でビックリ。1楽章とのコントラストつきすぎです(笑) 表情付けも適度な範囲で音量をぐっと絞る部分で聴かせる以外はわりと単調に進めます。終盤に音量を上げ充実した響きを取り戻しますが、ちょっと重さを感じるところもあり、少々無理なテンポという印象も残してしまいますね。
3楽章は普通のテンポに戻って、オケキレキレ。素晴しい迫力のメヌエット。
フィナーレはメヌエットからの流れを受けて、いいテンポで入ります。ティンパニ大活躍でアクセントの鋭い表現が素晴しい迫力。クライマックスに向けての盛り上がりも素晴しいですね。最後はエクスタシーの坩堝。会場の拍手が演奏の素晴しさを物語ってますね。生で聴いたらさぞかし素晴しいことでしょう。
つづいて「ロンドン」。「太鼓連打」の2年前のザルツブルク音楽祭でのライヴ。こちらは太鼓連打に比べると比較的オーソドックスな入り。「太鼓連打」より落ち着いた演奏に感じますが、弦の純度がちょっと落ちた感じというか、録音の鮮明度が若干落ちることの影響かもしれません。ただ、演奏は冒頭から溜めはたっぷりととり、ヴェーグ特有のタイトな進行。「ロンドン」らしく堂々としたというより、筋肉質のボディービルダーのような演奏。やはり弦楽器のボウイングのキレはなかなかいいですね。
2楽章は「太鼓連打」と同様の、、、と身構えましたが、至って普通のテンポで安心しました。「太鼓連打」より2年前の演奏ですが、演奏を聴く限り、こちらの方が老成した感じ。コンディションというか体調というか、雰囲気なんでしょうか。
3楽章のメヌエット。ここまではオーソドックスな演奏の範疇。もしかしたら曲に応じて演奏スタイルを変えているのではとの想像も働きます。多くのこれまでのロンドンの演奏がこのような演奏をする型枠のような存在になっているのかもしれませんね。
「ロンドン」のフィナーレはハイドンにしては長い曲。ここにきて演奏のテンションがぐっと高まってきました。弦楽器のはじけ度合いもあがり、指揮もクライマックスに向けてムチが入ってます。最後は少人数オケがはじけきってフィニッシュ。こちらも盛大な拍手とブラヴォーが会場の興奮をつたえます。
評価は両曲とも[++++]としました。「太鼓連打」は2楽章を除けば[+++++]ですが、惜しいですね。「ロンドン」は「太鼓連打」ほどキレてないため[++++]という評価でしょうか。小編成オケのタイトな音響を楽しむべき、玄人向けの演奏といえるでしょう。
久しぶりに聴いたヴェーグのタイトな交響曲の演奏、もう一枚ぐらいそのうちレビューで取り上げる必要がありそうですね。
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