作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

リヒテルの1993年のソナタ録音

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今日はリヒテルのピアノソナタを。

Richter24_52.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)の演奏するハイドンのピアノソナタXVI:24とXVI:52の2曲。DECCAの録音で録音は1993年とされており、XVI:24の方は拍手入りなのでライヴ、XVI:52の方は拍手は入っていません。

リヒテルのソナタについては以前記事にしていますので、リンクを張っておきましょう。

ハイドン音盤倉庫:リヒテルのソナタ録音

まさに、この記事で紹介しているDECCAからリリースされているリヒテルのハイドンは持っているんですが、売り場で自身の所有盤リストをしげしげとチェックしながら物色していると、同じDECCAでも録音年が異なります。いままでDECCAのリヒテルは持っていると言う先入観で気にしてきませんでしたが、もしかするとこれは未入手の演奏ということで手に入れました。

帰って調べると、この”RICHTER THE MASTER”というシリーズは以前PHILIPSレーベルからリリースされていた、「スヴャトスラフ・リヒテル・エディション」という22枚組などの録音から再編したもの。ということで、同じDECCAレーベルでも違う演奏ということなんですね。

まずXVi:24の方ですが、直前のDECCAのアルバムの演奏と非常に良く似た演奏です。ただ、86年録音とされるDECCAの方が派手なというか、音量が大きく高音の残響が多めでかつちょっと混濁感のある録音で、今回のPHILIPS原盤の方は音量は控えめながらピアノがホールの少し遠目に響く、透明感のある感じで、音質的には結構異なり、今回のアルバムの方に軍配が上がります。タイミングや拍手のようすから違う演奏であるのははっきりしています。
ライヴらしく会場ノイズがありますが雰囲気を盛り上げるという範疇で鑑賞には全く差し支えありません。ピアノの実体感が素晴しい録音。特に2楽章に入るとピアノから醸し出される音楽性にホール内が釘付けになるような緊張感がすばらしいですね。この2楽章はハイドンの神髄の表現としてすばらしいもの。途中に転調して和音を響かせる部分があるんですが、その前の静寂と和音の余韻はリヒテルならではの力感と詩情というべきでしょう。他の誰もこの深みを表現できないレベル。それまでの訥々とした表現と、その後のさっぱりした表現の間に心の楔を打ち込むような静かな感動ですね。
3楽章は2楽章の余韻からそのまま浮かび上がる感じで入ります。眼前でリヒテルが弾いているようなライヴ感溢れる音響。右手の高音だけ追いかけていても素晴しい演出。音符が生きているようなメロディーの連続に卒倒寸前。XVI:24の素晴しさを満喫ですね。最後は拍手で。

続いてXVI:52。音響がだいぶ変わり最初は鼻をつまんだような高音の閉塞感を感じますが、リアリティは悪くなく、すぐに慣れてしまいます。XVI:52の特徴である1楽章の分厚い和音の出だしが心地よい演奏ですが、前曲とはかわりスタジオでの収録なのかちょっとデッドな音響。鍵盤へのタッチを虫眼鏡でみるようなミクロ的な雰囲気もある録音に変わります。こちらはリヒテルの雄大さというよりはちょっとせせこましい感じもあり、万全ではありません。右手のフレージングがところどころグールドに近いと言うか、グールドが愛したチッカリングピアノに近い音がするというか、そうゆう雰囲気が特徴の演奏。
2楽章は詩情が迸ると思いきや、ちょっと慌てたような雰囲気があり、十分な状態とはいえません。リラックスしきれていない感じ。全般にXVI:52の方は録音がちょっとオンマイクすぎというか深みに欠けるきらいがあるせいでちょっと損をしていますね。
3楽章は巨匠の一筆書きのように一気に聴かせる演奏。さきほど触れたように録音の印象でちょっと損をしていますが、ピアノを縦横無尽に弾くような感じはリヒテルならでは。高音を中心に完全にリヒテルペースの演奏。素晴しい支配力ですね。こちらは拍手なしの録音。

評価はXVI:24の方が[+++++]、XVI:52は[++++]としました。XVI:24の2楽章の深遠なる音楽だけでもこのアルバムの存在意義は大きいと思います。
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